あなた色で指先までも彩って
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※平和な世界線if
「あのさ、虎杖。少し前から思ってたんだけど最近宿儺出すぎじゃね?毎日ほっぺに目と口がある気がする」
「いや俺もそう思って聞いてみたんだけど…」
「俺の勝手だろう。何か問題でもあるのか、小娘」
「…だって」
「なんか毎日見てるとこれが呪いの王って実感薄れるなぁ…。有難みが減るというか…いや有難くはないけど」
「分かる」
だよね。特に凶悪なことをするわけでもなし、この前なんか好きなケーキ屋談義したしな。生きてた時代が違うから、食べたことない物を色々と食べてるみたいで洋菓子が最近のブームらしい。
「で、みょうじはロビーで何やってんの?」
「え?やり方の雑誌見ながらマニキュア塗ってるだけだけど」
「部屋でやんないの?」
「シンナー臭くなるじゃん」
「ここ一応共有スペースな?」
「大丈夫。今日は1年だけだから」
「うん…そっか…。でも意外だったかも。みょうじってそういうのやらないタイプだと思ってた」
「普段はやらないよ。むしろこれが初。野薔薇がくれたから使ってみようとしたんだけど、さっきから失敗しまくっていい加減爪がガッサガサになってるとこ」
マジでネイルって難しい。これを当然のようにやってる女子ってすごいなぁ…。
物珍しいのか宿儺の目が虎杖の頬から手の甲に移りジロジロと私の手元や雑誌を眺めている。
「ふむ、小僧変われ」
「なんだよ、いきなり。つか嫌なんだけど」
「すぐ終わる」
「えぇ…」
何かを食べたり体験したりする時に少し宿儺と交代することが増えているからか、虎杖は小さな反抗だけ示したが宿儺の要望を受け入れた。
「小娘。手を貸せ」
「今失敗作を落としたばっかだから、まだ塗れてないよ?」
「好都合だ」
「?」
不思議に思いながら片手を差し出すと、その手を取った宿儺が驚くことに私の爪にマニキュアを塗り出した。しかも丁寧で上手い。
「嘘でしょ!?ハイスペックかよ…余裕で私より上手いんだが…」
「爪紅のようなものだろう」
「平安時代にもマニキュアっぽいものあったんだ。男の人も塗ってた感じ?」
「そんなわけがあるか。女の化粧だ」
「…じゃあなんで出来んの?」
「…見れば出来るだろう」
「うわ、これは女遊び激しかったタイプだ。女の人にやってたやつだ。全く尽くすようには見えないのに!」
「姦しい」
本当に女の人にやってあげてたかは分からないけど、宿儺が器用なのは確かだ。私よりも格段に上手いのは女として負けたような気分になるけど。
「もう片方」
「はーい」
喋りながらもはみ出すことなく完璧に五枚の爪を塗って逆の手に取り掛かる。おぉー!と綺麗に塗られた爪に感動していると、乾くまで不用意に動かすなと注意された。さてはこの短時間で私よりネイルに詳しいな?
野薔薇にはいくつも色の種類を貰っていて、自分では多少はみ出してもあまり目立たない薄ピンクを塗っていたけど、宿儺が塗っているのは臙脂色だ。なんというか宿儺っぽい色。自己主張激しいな。どうせなら自分の手ですればよかったのに。まあ虎杖の手になっちゃうけどさ。
「なまえどう?出来た?」
ひょこりと野薔薇が様子を見に来たのか廊下から顔を覗かせた。
「なんで虎杖?いや…げ、宿儺」
「煩いのが増えたな」
「なんでアンタがなまえの爪塗ってんのよ」
「見るに堪えない結果だったからだ」
「うぐっ…」
「ああ、なるほど」
納得された…!悪かったな下手くそで!利き手でやってても上手くいかなかったんだから仕方ないだろ!
「…完璧すぎて逆に腹立つわね」
ほんとそれな。トップコートまでムラもはみ出すこともなく仕上げやがったよ。
「でもなまえには臙脂色より普通の赤色の方がよかったんじゃない?」
「そう?僕は青がオススメ」
「「!?!?」」
突然現れた五条先生が数ある中から青いマニキュアを選んで候補に上げる。てか五条先生いつからいた!?
「恵は?」
五条先生の隣にはうんざりしたような顔で襟を掴まれ、無理やり連れて来られましたとでも言わんばかりの伏黒がいた。
「別に何色でもいいんじゃないですか」
「どれか一つ上げるならだよ」
「はぁ…めんどくせぇ…。ならその青緑みたいなやつで」
本音本音。モロに出てるんだが。せめてちょっとは隠す努力をしろ。
「んー、じゃあ俺はオレンジで!」
あ、いつの間にか虎杖に戻ってる。にしても見事に全員意見が割れたな。宿儺も消えたし塗り直したりはしないけど。
今の色で満足してる私に対して、野薔薇と五条先生から少し不満気な視線を感じながら、綺麗に彩られた爪を眺めて微笑んだ。
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