世間知らずとは時に罪となる
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「なまえ、この服似合うんじゃない?」
「そう?じゃあ買おっかな」
野薔薇に勧められるままグレーのカーディガンの会計を済ませる。高専入ってから本当に私服が増えたな。施設にいた時は制服と部屋着を数着しか持ってなかったし。友達に選んでもらったってだけで着るのが楽しくなるのは今でも不思議な感覚だ。
「前から思ってたんだけど、なまえってお金にいつも余裕あるわよね。確かに給料は貰ってるけど買い物で値段見て迷ったりとかしないし」
「お金?それなら五条先生が管理して、お金使った後は追加してくれてるよ」
「………はあ?」
「私の給料から渡してるから好きに使えって。金額がヤバくなったら教えてくれるらしい。そういえば今まで一回も使いすぎって言われたことないな。高専ってすごい給料良いね」
「………」
「高専来るまで自分のお金を扱うことってほぼなかったから管理してもらえて助かってるんだよね。
あ、でも最初は給料から直で引かれるからってカードを渡されてたんだけど、カードで支払ってるとどの程度使ったのか分かりづらくてさ。給料がどれだけ貰えてるのか知らないし使いすぎると怖かったから今は現金で管理してもらってる」
「………」
それにしても本当に五条先生にはお世話になりっぱなしだ。いつか何らかの形で恩返ししないとなって思ってる。
そういえば聞くってことは野薔薇は違うんだろうか。まあ管理出来ないのは私くらいか。
「なまえちょっと財布見せて」
「? はい」
言われるまま野薔薇に財布を手渡せば中身を軽く見て眉を顰める。すぐに財布は帰ってきて、真剣な顔をした野薔薇に両肩を掴まれた。
「いいこと?
「いや何事?」
ついさっき恩返ししないとって思ったばかりなんだが。野薔薇の中で一体どんな結論がついたんだ。
「逆にむしろ貰ってばっかなんだけどな…。クローゼットとかそろそろ入らなくなってきたし」
「なんでクローゼットが関係すんのよ」
「ん?ああ。中学まで貰った古着を着てて野薔薇との買い物で初めて女物の服買ったの報告してから、五条先生がまあまあな頻度で服とか靴とか鞄とか渡してくれてるんだよね。まあまあというか結構?拒否して返品させるのもどうかと思って受け取ってるけど、さすがに貰いすぎな気がしてて」
その言葉に顔色を悪くした野薔薇が掴んだ肩をガクガクと揺らしてくる。酔う、酔うからやめろ。
「ヤバい状況なら虎杖か伏黒を召喚しろ!虎杖の身体能力なら大声で呼べばすぐ来るはず。いやもう対面して傍に他の人がいなかったら目を離さずゆっくり後退りして逃げなさいよ!?」
「五条先生をなんだと思ってるんだ。猛獣じゃないんだぞ」
「猛獣のがまだ何倍もマシなんだよ!」
野薔薇の中の五条先生のカテゴリが分からん。
「よく分かんないけど困ったら取り敢えず五条先生が何とかしてくれるよ」
「ソイツ!元凶!」
うんうん、野薔薇は元気だなぁ。でもここ街中だからもうちょい声のトーン落としてくれると助かるかな。
「……なまえが態度を変える気ないのは分かった。じゃあもっと散財してやりましょ。あれがどのくらいまで出すか気になるわ」
「散財って…私の給料なんだが?」
「大丈夫よ。その給料は尽きることないから」
「えぇ?本人全く理解出来てないんだけど…」
「いいからいいから」
そういう野薔薇に乗せられていつも以上に買い物をしてしまった。だが高専に帰ってから偶然出会った五条先生にまたお金を追加分だと渡される。
入り用になった時に困らないようと言いながら前回の倍額くらい。これはだいぶ多くない?と思いつつ、受け取り拒否は難しそうな雰囲気を醸し出していたので、私の給料本当に大丈夫なんだろうかと考えながら渡されたお金を財布にしまった。
なんでそんな視線で五条先生を見ていたのかは不明だが、その時の野薔薇がしていた腐りきった汚物を見るような目は当分忘れないと思う。
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