6話
夢小説設定
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体育祭が終わったと思ったら職場体験。雄英って行事が忙しないな。
が、その前に授業でヒーローネームを考えることになった。まず相澤さんに言われて普通の子らしくヒーローを目指しただけであって特別なりたい訳じゃないから、スタート地点から他の人とは違うんだよね。そのせいかヒーローになった自分が想像出来ないからどうしたものか。
「苗字さんはどう?どんな名前でもまず言ってもらえたらアドバイスがあげられるんだけど」
「…テレフォンは使えますか?」
「クイズじゃないわよ」
ダメか。困ったので相澤さんにヘルプを出そうと思ったんだけど。
「個性に紐付けて決めるのはどうかしら」
「個性に?」
個性って言われても今後も使わない可能性が高いから、紐付けてもなんでそんな名前なの?ってなりそう。
「…うーん……うーーん…」
「今後ヒーロー活動をしてたらピンと来ることもあるだろうし、絶対今決めないといけない訳じゃないから焦らなくていいのよ」
「はい、すみません」
爆破の人以外は決まってるみたいだし、しかもここまで欠片も出てこないのは私だけっぽい。普通の子ってのは程遠いなぁ。
職場体験の前にコスチュームを少し変更したくてサポート会社に先日連絡した。そして返ってきた返信をリビングで確認する。
コートの袖口が大きいのやボタンを留めればスカートのようになって武器を隠し持てる所、露出の少ない詰襟にズボンはいいとして、太腿まであるブーツには無駄にベルトが付いてるし、ショールみたいなのは使い道がなさすぎてまず着用していない。ヒーロー活動に絶対に要らない帽子に至ってはロッカーの肥やしになってる。
そうして不要なものはなくしてもらおうと連絡を入れたのだが、帰ってきたメールが『担当社員が黒執事の葬儀屋推しなので変更は出来かねます』という内容だった。
いや思いっきり100%私情なんだけど。ちょっと長さが足りませんが腰まである銀髪と聞いてビビッと来ました、とか知らないよ。まずヒーローのコスチュームに葬儀屋ってどうなの。
確かにはじめにコスチュームの希望を聞かれた時はよく分からないのでお任せします、とは言ったよ?そしてあげられた案がメイド服、修道服、今の。もうそれ一択しかなかった。選択肢の意味ね。他の人のように体のラインがわかるほどとまでは言わないけど、もう少し動きやすさを重視しようよ。
しかもその後の軽微な変更すら受け付けて貰えないとは思ってなかった。よくその我が道をゆくで会社倒産しないな。
代わりに夏用だと全く同じデザインが送られてきた。いや、うん。手触りから涼しそうな感じだけども、これもうヒーローコスチュームというか、ただのコスプレじゃないか?
元になった作品やキャラクターの名前は知りたくなかったよ。知らずにいた方が幸せだった気がする。
当社のコスチュームは防刃に特化した素材を使っており云々と言い訳のように書かれていても結局はコスプレでしょうが。
なんかこれ着るの恥ずかしくなってきた。私、恥じらいとか他の人より鈍いと思ってたんだけどな。
「コスチュームの変更は出来たのか?」
「相澤さん…私が自分でも知らぬ間に毎日のようにコスプレしてたとしても普通の子の範囲内にいますかね」
「は?」
「そしてサポート会社を他のとこに変えるのはありですか!?」
「一旦落ち着け」
相澤さんに宥められ、とりあえず興奮を抑えた。事の経緯を説明して別のサポート会社を紹介して欲しいと訴える。
「コスチュームを今と全く違うものにすると戦闘面で違和感が出るだろ」
「それでもコスプレよりマシじゃないですか…。私、嫌ですよ。陰でコスプレヒーローとか言われるの」
「まず俺は元の作品から知らん」
「私も知りませんけど。漫画読まないし」
「じゃあどれだけ似てるのか確かめてからでもいいと思うが?」
…それもそうか。相澤さんに言われてメールに書かれていた黒執事の葬儀屋を検索してみるが、何も出てこない。あれ?
「?? 何も、検索結果に出てこないです…」
「なら今のままでいいだろ」
この話は終了といったふうに相澤さんがリビングから自室へと帰っていく。
んんん?顧客のコスチュームに取り入れるほど好きなものが検索で一切出てこないってどういうこと?サポート会社の社員の人は一体何が見えてるの?
本当ならもう一度抗議文を送るつもりだったが、なんか相手の精神面がヤバい気がしてならないから辞めておこう。正直関わりたくない。
別に無駄な装飾品以外は着心地良いんだし、ブーツのベルトは外せないけどショールと帽子は着けなければいいだけだ。
ただサポート会社の担当社員の人は今後も任せても大丈夫なんだろうかと大きな不安が残ったのは仕方ないと思う。そして担当社員の個性が“携帯の画面越しに別世界が見える”というものだったのは私が知る由もないことだ。
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