4話
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体育祭かぁ。面倒臭いなぁ…。
ただでさえやる気が出ないのに放課後に教室の入口に他クラスの生徒が集まっている。敵情視察は構わないけど、こんなジロジロとましてやスマホまで構えられたら珍獣にもなった気分だ。
それと入口で話すのやめてくれない?せめて人が通れるだけの間は空けといて欲しい。
「あの、色々言われるのはお好きにされて構わないんですが、少しいいでしょうか」
「え、苗字さん…?」
頭がモサっとした人がコイツ一体何を言う気だ、という顔で見てくる。いや別に爆破の人と違って挑発的なことを言うつもりはないので。
「帰るのに邪魔なので端に避けていただいてもいいですか?話すなら教室に入ればいいですし。入口でいつまでも陣取られては本当に邪魔なんです」
「邪魔って二回も言った!?」
だって本当のことだし。
「入試の内容と個性の相性が良かっただけでよくそこまで天狗になれるね」
宣戦布告がどうとか言ってた男子がそんなことを言ってくる。だけど、うーん、個性の相性?
「私、入試で個性は使ってませんけど」
は!?と前からだけでなく後ろのクラスメイトからも困惑の声が聞こえた。
「そもそも私、個性に関して──」
ピリリと簡素な着信音が響く。あ、電話だ。
「はい、苗字です」
「出るんかい!!」
出ちゃダメなの?
電話はスポーツ用品店からで予約していたウェイトが届いたという知らせだった。通話を終了して次こそ帰ろうとしたのだが、何故か周囲の視線が私に集まっている。
「あの帰りたいのですが」
「続きは!?」
続きと言われても、何の話してたっけ。途中で電話に出たせいか話してた内容が完全にぶっ飛んだ。まあいいか、態々思い出して教えるような仲の相手じゃないし。
「ご想像にお任せします」
用事が出来たので失礼します、と人の間を縫って教室から脱出する。明日の放課後にはこの人集りも収まってるといいなぁ。
そんな出来事から二週間が経過し、体育祭当日。結局やる気は一切沸いてこなかったのだが、一応頑張れば相澤さんが山田さんのお金で回らない寿司に連れてってくれるそうなのでちゃんと頑張ろうと思う。
第一種目は障害物競走。
開始直後から氷の人の妨害があったけど、近くの人を踏み台にさせてもらって回避する。
足の速さは氷の人より私の方が速いらしく、途中氷塊が迫ったりもしたけど問題なく避けて抜かした。
開けた場所に辿り着くと入試の時のロボットが大量に配置されていた。あの時は倒すのが目的だったけど通過するだけなら態々壊す必要はない。大して速い訳でもないから、繰り出される攻撃は走ってれば余裕で当たらない。
後ろの方で破壊音聞こえてるけど皆ちゃんと倒してるんだ。真っ直ぐ走れば良くない?別に個人の自由だけどさ。
『1-A苗字、今んとこダントツトップ!一切の戦闘はせずただ避けて前に進むのに専念してた上に足の速さも相まって2位との差が大きいな!つか追尾ロボより速いってサポート科泣くぞ!』
山田さんうるさい。
次は幾つもロープを渡って向こう側へ行く障害物。これも特に問題ナシ。少しスピードは落ちるもののまるでランニングのように不安定なロープの上を走る。
あと2、3本渡ったら終わりってくらいで足が何かに引っかかった。あー、靴紐解けてら。マジックテープのにするべきだったかな、なんて考えながらぐらりとロープの上から体勢が崩れた。
そのまま真っ逆さま、となる前にロープに片足だけ引っかけ逆さで宙ぶらりんになって、靴紐を結び直す。もう解けないようしっかりキツめに結び、ロープに引っかけてた足を手に変えて、逆上がりの要領で上に戻った。
呑気に靴紐結んでたものだから最後の関門に着いた時には先頭はとっくに地雷原の中盤辺りに差し掛かってた。うーん、まあこの地雷原とゴールまでの距離を全力で走れば追い越せるかな。何故か皆のんびり走ってるみたいだし。
私の少し後に地雷原に着いてたモサっとしたクラスメイトの男子が地雷を掘り出し、態と爆発させて色んな人を追い抜かし前方へと飛んで行った。わあ、イカれてる。さすがにあれはしたくない。
地雷の位置はよく見ればわかるんだから集中して見ればいい。というか別によく見なくとも見える。それと同時に全力疾走もするだけだ。実にシンプルな作戦だけど、私が取れる方法でそれが一番速く行ける。横にある杭の上を跳ぶのも考えたがコースアウトと判断されたくないので止めた。
どんどん前方走者を追い抜く。爆破の人と氷の人に追いつく直前、先頭に爆風で飛んでった男子が再び地雷を爆発させてその勢いを利用する。いや目の前で爆破はやめてくれ。
その爆風で少し後ろに押されたせいで最後は追い越すことが出来ず、残念ながら結果は4位。まあでも悪くはないか。
ただ靴紐の件は運が悪かったと言いたいところだけど、それを思慮が足りなかった自己責任なので、お小言は免れそうにない。
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