16話
夢小説設定
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──b2231。
はい。
──言い忘れていたけど、お前には検体番号以外に呼び名があるんだよ。
?
──一応私の娘ではあるからね。苗字名前。仮に私がお前を外に出した時にはその名前を使うことになる。
苗字、名前…。
──覚える必要はない。私がその名でお前を呼ぶことはないから。
はい。…あの。
──なんだ。
書庫の本で読んだのですが私が娘だというのであれば、その場合私達は親子関係ということでしょうか?
──血縁上はね。だが私とお前の間に親子の情など存在しないし、私は自分の遺伝子を継いだ人間を研究してみたくなったから作ったにすぎない。出産までの期間が長く非効率的だから早々に辞めたけど。
まあ私が創造主で、お前は被造物。そういった意味でなら父とも言えるだろう。
それと余計な知識は覚えなくていい。容量の無駄だよ。
…はい。
──うん。敬語も様になってきたね。そうやって耳触りのいい言葉で本心を隠すことだ。お前が私にどんな感情を持っていたとしても晒さないうちは私も気にかけない。むしろ貴重なサンプルだから大事にしてあげるよ。
はい。
──ほらこちらにおいで。いつものやつを見せてあげよう。
最近新しいものがスポンサーから送られてきたんだ。所望したものとは違ったけどね。まあ、そろそろ共同で研究をしている他の者に譲るつもりだったから構わないか。
譲る、ですか?
──ああ。今までのものも新しいものも近いうちに全部まるっと。渡すまではこの研究を続ける予定だけれど。元々共同、というのが合わなかったし、私はやりたいことをやりたい時にしかしない派だから正直飽きちゃったんだよねぇ。
「………あぁ、そうか。ここは寮だった」
父と過ごしていた頃の夢を見た気がする。確かよくあの人の研究成果を見ていた。
飽き性な人だったからコロコロとやることが変わってたなぁ。そう考えると私は随分長くあの人の
そういえば結構長い期間やっていた研究が他にもあったな。あれは何だったか…。ずらりと並んだ悍ましいものを無感情に見ていたはずなのに。───あの時私は何を見たんだっけ?
コトリと音を立ててベッドの下へ落ちた携帯の待ち受けには当たり障りのない猫の写真が表示されている。別に猫が好きなわけじゃない。相澤さんが猫を好きだから腹を裂いてパーツごとに並べたら可愛いなんて思わないですよとは言わないけど、自分の認識では正直そんな感じだ。
どちらかといえばこの写真は戒めに近い意味合いのものだと思う。これ以上知識欲の為に暴走しないよう、そういう時に相澤さんを思い出せるものにした。本人が写真を撮らせてくれなかったし。まあ効果あるのかは微妙なとこだけど。
父の死に感慨はない。だけどずっともどかしかった。ずっと思ってた。
どうして誰も理解してくれないんだろう。どうして誰も共感してくれないんだろう。どうして誰も私と同じになってくれないんだろう。
私は知りたかっただけなのに。この知識欲を満たしたかっただけなのに。
ただひたすらに知りたいんだ。──猫をも殺す、好奇心のその先を。
だから結局、私はどう足掻いてもあの父と同類のままなんだよ。
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