14話
夢小説設定
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必殺技を練り始めて早4日。そろそろクラスメイト達も各々の必殺技が出来始めている。
コスチュームを改良した人も多々いる中、私はまたサポート会社から一蹴された。いやいいけどさ。どうせ付けないし。
ただあのサポート会社の担当の人がコスチュームの性能に関してのアンケートだとかを名目に、顔とか体に傷が残ったりしてませんか、って何度も聞いてくるのはなんなんだろうか。怪我して欲しいってこと?社員がそんなんでいいのかサポート会社。いい加減苦情を入れてもいいレベルだと思うわ。
トレーニング終了の10分前くらいに午後から交代するB組がもうやって来た。入口付近で騒いでるけどまだ時間はあるから続けていいんだよね?
終了の合図はないから気にせず技の精度を上げていると、一部脆くなっていた部分が壊れ、B組の模倣の人のすぐ傍へと落下した。
あちゃーと思いながら、そこから飛び降りて彼のもとに謝罪しながら近付けば高笑いしていた表情のまま固まっている。
「大丈夫ですか?」
「………ハッ!危ないだろ!いやもちろん僕は余裕で避けたけどね!」
「避けたって言うより偶然当たらなかっただけじゃね?」
「うん、そう見えた」
「避けるまでもないと判断したまでさ!アハハハハ!」
再び笑い出した模倣の人の額に手を当てて熱を確認する。熱は、ない。ってことは素でこれか。ちょっと精神面が危ないと思うんだけど、ホントに熱じゃないの?
「なっ、は!?え!?」
「急に触れて失礼しました。熱があるわけではないんですね。
ご迷惑おかけして申し訳ありません。以後気を付けます」
再度謝罪を告げてあと数分になってしまったトレーニングに戻る。
「苗字、集中力を切らすなよ」
「すみません」
小言言われちゃった。集中してなかったわけじゃないんだけど、錬成した材質の強度を念頭に置いとくのが今後の課題かな。
苗字ナイス、と誰かが呟いていたのは聞かなかったことにしよう。
─────
ここ数日、夜のトレーニングでモサっとした人とよく会う。なんでも今まで拳メインだったのをシュートスタイルに変更したのでその特訓だそうだ。
「…良ければ相手に付き合いましょうか?」
結局中々進んでないクラスメイトとの交流を深めるという難題をクリアする為に、意を決して話しかけてみる。
「へ!?苗字さんが!?」
「ご迷惑なら先程の発言は気にしないで欲しいです」
「全然迷惑なんかじゃないよ!けどその、苗字さんは皆から二、三歩引いた所にいるイメージだったから意外というか…」
まあ率先して関わることをしてこなかったのだから、その見解は妥当だ。むしろこれからも変わらずいたかったけれど、オールマイトからの課題となっては行動しないわけにもいかないだろう。
「多少心変わりがありまして…」
「えっと、じゃあお願いしてもいい?苗字さんは身体能力や体術が飛び抜けて良かったからすごく参考になるよ!」
そうして始まった彼との組手。シュートスタイルを極めているとのことだったから私も足技メインで相手をする。
開始したばかりはこちらを気遣い個性を使わず私とやり合っていた彼だが、何度も倒されているうちに本人も気付かず個性の使用もしている。だけどまだ少々拙い。
「軸足の警戒が少ないですね。一撃で相手を沈められるならまだしも、避けられた後に軸足を攻撃されると簡単に倒れてしまいますよ」
「っ、もう一回!」
蹴りを避け、指摘した軸足に足払いをかけると簡単に地面に倒れたが、めげることなくすぐさま立ち上がる。
「攻撃時の体重移動は重要です。かと言ってそればかりに意識をしないようにしてください。結局のところ慣れです。慣れるまで頑張ってください」
「りょう、かい!」
「折角なので機動力を活かしませんか。一点からの攻撃ではなく、翻弄しながらも試してみてはいかがでしょうか」
「わかった…!」
「足を振り切った後の戻しが遅いですよ。パワーがあるからといって必ずしも一撃必殺ではありません。攻撃後は次の手に繋げてください」
「はい…っ」
何度も地面に転がされ、同年代に指摘をされているにも関わらず、素直にそれを受け入れ力へと変えている。きっと純粋な人なんだろう。
そうして休むことなく組手を続けて、一発。後ろに跳んで衝撃を和らげたけど、確かに一発いいのを貰ってしまった。
「だっ、大丈夫!?僕いつの間にか個性使っちゃってて…!怪我とかは!?」
「んー…問題ありません。さすが増強型なだけあって多少痺れはありますがすぐに治ります」
「本っ当にごめん!」
「私が貴方を地面に叩きつけた回数が多すぎるので、そんなにも謝罪されると私の方こそ申し訳なくなるのですが?」
「えっ、あっ、ごめんっ。ああ!また謝っちゃった!」
ボロボロな格好で慌てている姿が面白くて、小さな笑いがこぼれた。
「苗字さんが笑った…!?」
「そりゃ機械じゃないので笑いはしますよ」
「いや初めて見た気がするな、と」
「そうですか?…そうかも?まあ今後は私も多少は笑うとでも思っていてください」
「う、うん」
そろそろシャワーを浴びて寝ないとまずい時間になってきたので今日は解散することになった。
「今日は本当にありがとう!」
「いえ。私もいい訓練になりました。またお時間があればぜひお願いします」
「こちらこそまたお願いします…!それじゃ、おやすみ苗字さん」
「はい、おやすみなさい。──モサっとした人」
「………ん!?」
「何か?」
「いや耳おかしくなったかな…。苗字さんさっきなんて言った?」
「おやすみなさい」
「その後」
「…モサっとした人」
「……。聞いてみるんだけど、苗字さん僕の名前知ってる?というか考えてみれば苗字さんがクラスメイトの名前を呼んだのを聞いたことがないような…」
訝しげな目で見られ暫くの沈黙の後、不自然に視線を逸らす。ひ、ヒーロー名なら覚えてますよ…。
「苗字さん…今もう二学期始まる直前だよね…」
「あーあー、聞こえませんー」
「さすがにまずいかと思うよ…?」
「はぁ…知らないものは仕方ないでしょう」
「開き直った!?」
他人の名前とか研究意欲の欠片も沸かないものを覚える気になれなかったんだよ。
大丈夫、今日から覚える。きっと覚える。
「…お名前伺ってもよろしいですか」
「あ、うん。緑谷出久です」
観念して名前を聞けば彼はあっさりと教えてくれた。
「緑谷出久…覚えました。お手数お掛けしました、出久くん」
「距離の詰め方…!」
試しに名前を呼ぶと一瞬で沸騰したかのように顔を真っ赤にしてツッコミを入れる。
「? 緑谷くんの方がよろしいですか?」
「僕の精神的にそっちの方が助かるかな…」
よくわからないが彼がそう言うならそうなのだろう。同級生は名前でなく苗字で呼ばなければ精神的危機を感じる、と。よし、OK。
緑谷くんの真っ赤になった顔が冷めやらぬまま別れたけれど、仮免の試験が近いのに体調管理は大丈夫なんだろうか。昼の模倣の人のこともあるし、もしかしたら風邪が流行る前かもしれないので風邪薬常備しとくか、と考えつつバスルームへと向かった。
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