10話
夢小説設定
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なんで自宅謹慎を言い付けられたのかわからずじまいで、相澤さんは帰ってこない上に筋トレ以外にすることもなく時間が過ぎる。
…暇だしヒーローネームでも考えてようかな。確かミッドナイトは個性に紐付けで考えてはどうかと言っていた。非常時であれば使用が許されるし、改めて考えてみればそれも悪くはないんだろうな。しかし個性、個性かぁ…。
私が個性の使用を禁じられたのが中学1年の夏休みだから今からちょうど3年前。
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私の個性は錬金術だ。いやまあ金以外も錬成出来るので現実の錬金術ともまた違うのかもしれないけど、どっちかと言うとファンタジー的な方の錬金術に近い。
私の錬金術では理解・分解・再構築が基本となる。
まずその元物質そのものの性質をきちんと「理解」し、それを新たに作り変えるためにもその元物質を「分解」し、そして、そのバラバラのものを再び新物質へと「再構築」している。
個性は手で触れることが前提条件に使用出来る。しかし自分でも父親と住んでいたラボを離れるまで知らなかったのだが、色々試してるうちに予め物体を構築するための術式を図式化したものを描いておけば触れずとも使用することが可能みたいだ。空気中など触れたという概念があやふやなものに関しても図式さえあれば錬金術に使用できる。
父親はこの個性を大いに喜んだ。自分の上位互換だと。
だから私を母親のようにうっかり殺してしまうことなく育てていたにすぎない。
父親の考えや喜びはどうだっていい。ただこの個性を使えるようになる為に与えられる知識は嬉しかった。知りたいという知識欲が満たされる感覚は心地良い。
だからそれを父親なしでも満たせるのであれば正直必要ないんだ。父が死んで、相澤さんに引き取られてからも知識欲は自身で満たすことが出来ている。むしろ世間のことは知らないことばかりで日々が新鮮だ。
だから今日もいつもと変わらず己が知的好奇心に従い欲を満たす。
夏休みに入りずっと家で過ごしているけど、相澤さんは仕事が忙しいとあまり帰ってこないので部屋では好きに出来る。最近は人体について知りたくなって専門書を読み漁った。
そうして思った。私の個性で欠損した箇所を錬成出来ないかと。
思ってしまった以上ぜひ試したい。大きな部位を試すのは成功してからにしようと考え、まずは腕を切り落としてみることにした。
水、炭素、アンモニア、石灰、リン、etc…。近隣の店で手に入らない物は通販で購入する。ああ、心が踊るな。
数日後に材料が全て揃い、大きさや形状、重さなどから分量をきっちり量る。腕を切り落とすのは何でも構わなかったので台所から適当に包丁を取ってきた。
予め鎮痛剤と増血剤は飲んでいる。麻酔ではないので完全に痛みを遮断は出来ないけど、気持ち程度には効くだろう。
切り落とす方の腕を固定して、口には布を含む。腕に描いた線に沿いゆっくり刃を下ろす。皮膚を裂き、肉を切る。もちろん痛い。痛みで手の力が鈍る程には。
これじゃいつまで経っても切り落とせないという考えに至り、多少のズレは出るだろうが包丁の刃を上から叩き付けることにした。痛い。痛い。でもこの後に待つ錬成が楽しみで仕方ない。
子供の力では中々肉を切ることが出来ず、やっと骨までいったと思って気付いた。包丁の振り下ろしやすさを優先したけど骨を切るのは一苦労だから肘の部分にすれば良かったのではと。
今更過ぎる。今からでは追加の材料を量ってるうちに血が流れ過ぎてしまう。
これは反省点だ。次やる時は切りやすさを優先しよう。
仕方ないので頑張って骨を断とうとダンダンと何度も振り下ろす。部屋での作業音がうるさかったので、外の音を全然聞いていなかった。
「おい、さっきからうる、さ……何してんだ!!!」
気付かぬ間に相澤さんが家に帰って来ていて、騒音のする私の部屋の扉を開いたことで作業を見られてしまった。
すぐさま包丁は取り上げられ、腕に応急処置が施された。暫くすると小柄な高齢の女性がやってきて、私の傷を見て何故か自分が傷付いたような表情をしながら治してくれた。
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