1話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ひとつ、悪事ダメ絶対
ひとつ、知的好奇心を満たすのはジョーシキの範囲内で
ひとつ、判断に困ったらホウレンソウで指示に従うこと
ひとつ、普通の子になれるよう努力すること
「相澤さーん。これって本当に皆やってるんですか?」
「ああ、ヒーローを目指すならそれくらいやっておけ」
「ヒーローになるのって普通です?」
「最近の子供なら一度はヒーローになりたいとフツー思うものだ」
なるほど。若干棒読みなのが気になるけど、これが普通なら仕方ない。最近の子供ってのは皆ストイックなんですねぇ。そんなことを考えながら、優に1000回を超した片手腕立て伏せの続きを再開する。
「入学式前日だから程々にしておけよ」
「はい、了解です。ちなみに入学式ってどんなですか?」
「お前だけに教えるのは贔屓になる」
「それもそうか。では今の発言はナシでお願いします」
この相澤さんことプロヒーローのイレイザーヘッドは現在私の保護者的なポジの人だ。
父が敵でマッドサイエンティストという人生ハードモードから始まったのだけれど、ある日突然父がこの世のすべてに飽きたから死んでみることにした、なんて言ったと思ったらマジで死んじゃって、母親は実験の材料にしちゃった☆とか言ってたから暫定死亡。
我が父ながら世間を騒がせるだけ騒がせといて何とも勝手な終わり方だった。
そしてヒーローに保護されたのは良いものの、父親はめちゃくちゃ凶悪な敵認定されてたらしく、私を野放しには出来ないからと要監視対象になる始末。
なんか喋るネズミが公安と揉めた上で私の管理権をゲットしたみたいで、うーん…じゃあ相澤くんヨロシク!、と相澤さんに丸投げしてから早五年。
保護されるまでは家から出ることを禁止されてて、あの父親からまともなことが学べる訳もなく、世間一般の常識は相澤さんが殆ど教えてくれた。
生活していく上でネズミが定めた4項を守るように言われ、普通の子になる為ヒーローを目指す毎日。
引き取られた当初はゲロ吐くほどキツかったトレーニングも今では雑談しながら出来て、両手足に各5kgの重りを常に付けていても気にならないレベルまでになった。普通の子供はこれくらい当然のようにやってると言うのだから恐ろしい限りである。
もしや相澤さんが嘘をついているのでは?なんて思った時期もあったが、時々この家に来る山田さんにも聞いてみたところ、マジでそんなんやってんの?うっわ…。あ、今のナシで。フツーフツー。皆やってんぜ、ウン。とお墨付きを貰えたので、それ以降疑うのはやめた。
「…おい、そろそろ切り上げてシャワー浴びてから寝ろ」
ちょうど3000を数え終わった時にそう忠言される。確かに明日は寝坊出来ないですしね。
「イエッサー」
つまりは諸々の決定権は何故かネズミにあるものの、相澤さんの言うことは原則絶対なのである。
─────
結局入学式に参加することはなかった。何故か体力テストをする流れになったからだ。本当になんでだろう。
そして私はその体力テストで思った。なんか皆、個性使ってない場合の結果悪くないか?と。別に馬鹿にしてるわけではなく純粋な疑問として。普通の人がこなすトレーニング量から考えると、この程度の記録なわけがない。もしかして集団食中毒か何かだろうか。
全ての種目が終了し、個性の使用はなしで8位。ずっとクラスメイトを観察していたけど不調には見えなかったので、最近の子は本番に弱いということですね、理解。
体力テストで一日が終わってしまい家へと帰った。最下位の生徒は除籍という話だったが、嘘ということにしたらしい。除籍にするほどではなかったという判断だろう。
なんか色々揉めてた人達もいたけど、大して興味がないからその辺は割愛。
日課のトレーニングが終わった頃に相澤さんが帰宅。聞こえてくる声から察するに今日は山田さんもやって来たみたいだ。
「おかえりなさい。山田さんもこんばんは」
「ああ、ただいま」
「なんだ今日も日課か?」
「はい。ちょうどさっき終わったところで。汗だくで出迎えて申し訳ないです。今から流してくるのでごゆっくり」
相澤さんはヒーロー活動した日以外のお風呂は寝る前派なので遠慮なく浴場へ向かう。山田さんとの付き合いも長いから客人がいる時に風呂云々と気にする必要もない。
もしかしたら今日は飲むかもなぁ。上がったらお客様用の布団の準備だけでもしておこう。
「前から思ってたんだけど名前のトレーニング量、普通ではないよな。同年代と比べてフィジカル面がずば抜けてんぜ」
「…押し付けられたばかりの頃は極力相手にしなくていいよう絶対にこなせない量をやらせたんだが、寝食削ってでも必ず達成する上に余裕を持ち始めるのを見るとつい増やしたものだからああなった。今更言えないだろ」
「そーなんだよなあ。俺も悪ノリしちまったしなあ。まあヒーロー科の奴らと一緒にいる内に自分で気付くんじゃねえか?」
「そうだといいがな」
残念ながらその会話が私の耳に届くことはなかった。
1/1ページ