バンシーは涙を忘れたい
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
2017年12月24日
「ああ、ひどいなぁ、本当に。ちゃんと伝えたのに。どうしても君は私に優しくしてくれないねぇ」
眼前に蔓延る呪いを祓う。キリがないほど大量の呪い。彼はこのすべてを嚥下したのだろうか。それは辛くはなかっただろうか。
大事にしたかった。助けてあげたかった。望みを叶えてあげたかった。
でも何もかもがもう遅い。
呪いを祓いたくないのに、夏油くんは巧妙なまでに私に呪いをぶつける作戦みたいだ。
携帯で補助監督の人に電話をかける。彼がその気なら仕方ない。
「事前に言ってたようにお願いします。私の射程圏内に誰も近づけないでください。───死にたくなければ」
わかってた。彼が私の弱点を突いてくることくらい。だから私は自分の弱点をなくすことにした。
祓えないのではなく祓わない、祓いたくない。ただの我儘だ。その我儘を今まで突き通してきた。だけど今もそれを続けようものなら、もう彼に会うことが出来なくなるかもしれないから。だから、仕方ないんだ。
叫びが聞こえる。涙は出ない。
可哀想に、逃げることすら出来ないんだね。人の心から生まれ、人のために祓われる呪い達に無情なまでに死をあげよう。
「ねえ、夏油くんがどこか知ってる?」
串刺しにした呪霊に問いかける。知能があまり高くないのか、大きな口から漏れるのは痛みに苦しむ言葉ばかりだ。結構強かったから意思疎通が出来ると思ったんだけどなぁ。
「もしかして夏油くんがわからない?君を使役してる術者だよ」
「あ、あ"あ"ぁ、あ」
ぶすり、ぶすりと槍をもう二本突き刺す。
「ねえってば。教えてくれたらもう何もしないであげるよ」
「ぎ、ぁぁァ…」
更に三本。
「困ったなぁ、これでもまだダメ?」
「…ぃ…ぁ…」
また二本。
「あれ、動かなくなっちゃった。仕方ないか、他のを探そ」
ピクリとも反応しなくなった呪いの体を蹴飛ばし別の場所に向かう。夏油くん、どこにいるんだろ?
─────
「なまえは泣くかな」
「泣くだろ」
「だが彼女は灰原が死んだときは一滴たりとも流さなかったから案外ケロリとしていそうだ」
「…伝言聞いてやろうか」
「遠慮しておこう。人伝いに言うような用件はない」
「………」
─────
「わ、わ、ごめん!避けてぇ!!」
ダァン!と建物の壁に激突し落下。もーあの式神意味わかんない!私を取り囲んでいた大量の呪いが消えたので式神に空から最短距離で私は運ぶよう命令しただけなのに、目的地近くなったら主人を空から落とすとか有り得なくないかなぁ!?ちゃんと調伏したはずなんだけどぉ…。
「いたたた…」
あの式神は落ち着いたら壊す。一旦破壊して他の子と交ぜてやる。無傷で戦闘が終わったのに、その後にボロボロになるっておかしいでしょ。
ぶつけた額を擦りながら顔を上げると、五条くんと夏油くんがきょとんとした顔でこちらを見ていた。あ、着くのは無事着いたんだ。うーん、まあ破壊は勘弁してあげよう。
「ふぅ。なんとか間に合ったみたいでよかったぁ」
「何で来てんだよなまえ」
「頑張って来た先輩に向かってそれはなくない!?こんなボロボロになってまで急いたのに!いやボロボロになったのは今さっきだけど」
パッパッと服についた砂埃を払い立ち上がる。まさか駆け付けて二人からそんな嫌そうな顔されるなんて思ってもなかったよ…?君ら本当に揃いも揃っていつまで経っても先輩への敬意が皆無だよね。
「いいから戻れよ。邪魔」
「五条くん、最近丸くなってたのにまた口悪くなってない…?」
「なまえ」
「そうピリピリしないでよぉ。ちょっと夏油くんに会いに来ただけだから」
「それが一番問題なんだろうが」
機嫌が悪そうに大きく舌打ちをされる。ひぇっ、こわぁ…。
「私も何故貴方が来たのか理解出来ないよ」
君まで!?
ここ10年で一番ってくらい働いた私に労いの言葉くらいくれたっていいじゃんか…。
「ね、五条くん。少し夏油くんと話す時間をくれない?」
「なまえが傑に肩入れしない保障がない」
「ええ…そこは信じてよぅ。私、硝子ちゃんは贔屓するけど、君らには変わらず接してきたはずなんだけど」
「裏切ったら殺す」
「怖っ!」
この子、目が本気だ…。誰か味方から脅されてる私を慰めて欲しいよぅ…。
1/3ページ