バンシーとムカつくあの子は思春期盛り
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女だから。相伝の術式を継いでいるくせに。何故呪いを祓わない。分家の分際で。禪院家に従え。この恥晒し。
家の集まりに参加するといつもこうだ。口だけの雑魚のクセしてグチグチと。どうせ実力じゃ私に敵わないのに。
「あーあー、なまえちゃんまた虐められとる」
「…直哉くん」
「言い返さへんの?」
「言い返して何になるの?誰一人として私の話なんて聞く気ないよぉ」
「それもそうやね」
楽しそうにしてるなぁ。そんなに私が虐められてるのが面白いってか。はー、やっぱ家はストレス溜まる。面倒くささなら生家も本家もどっこいどっこいだ。
「いい加減、呪霊を祓ってみればええやん。そうすれば馬鹿みたいに誰もなんも言えんくなる」
「無理だよぉ」
「呪詛師殺すんと何が違うん。せっかく継いだ力は使わんと勿体ないやろ」
「じゃあ直哉くんは呪霊と人間、何が違うと思う?」
「はあ?」
「どうせ呪霊も元は人間の感情だけどさ」
祓っても祓っても、虫のように湧いてくるのに呪霊を祓うことに何の意味があるの。
呪詛師は簡単だよ。本人を殺せばもう脅威はなくなる。でも呪霊は祓ったところで人間に負の感情がある限りまた生まれる。なんで私が堂々巡りな他人の尻拭いなんてする必要があるのか分からない。
高専に入学しても、その疑問は解消されなかった。自分達から生まれた感情の成れの果てなら自分達で何とかすればいい。出来ないなら死ぬだけだ。
同年代の子がいれば考え方も感化されたりしたのかなぁ。禪院家から離れようとして東京に行ったけど、今更ながら京都校にしとけば良かったかも。
「でも私は叩くなら手っ取り早く大元を叩きたいんだよねぇ」
誰も彼もそんなに呪霊が嫌なら、呪霊が湧く原因になる人間全部殺してなよ。それが単純明快な答えじゃん。
私は呪霊がいようがいまいがどっちだって構わないから、そんな面倒なことする気ないけど。
「今の言葉、深掘りしたら呪詛師やて思われてもおかしないやろ」
「そうかなぁ?あ、もしかして誰かに言う?ま、いいよぉ、それならそれで。その場合はやっと本気出すかもだしねぇ」
「やめとくわ。俺はなまえちゃんのこと禪院家の面汚しとして下に見とるけど、正直本来の実力自体なら見縊ってはない。禪院家の人間でさえなければ少しは仲良うなれたかもな」
「えー、ないと思うけどなぁ。だって直哉くん、社交性ない上に性格悪いもん。親戚じゃなかったら話すことすらしないんじゃない?」
「…やっぱ、前言撤回や。女の分際で男を立てれんとこは心底腹立つわ」
「禪院家の人って皆揃って生まれる時代間違えちゃってるよねぇ。女は男の3歩後ろを歩いてこそ、みたいなカビの生えたような考え、本当にダサいなぁ」
「ダサいと言えばなまえちゃんが呪具頼りなんもどうかと思うで。それないと勝たれへんの?」
「やだなぁ、そんなわけないじゃん。呪詛師と言えども人なんだから、素手で殺すのはちょっと気持ち悪いでしょ?得物があった方が確実だしね。
どうせなら楽にしたいと思わない?戦いにまでダサい云々を考えてるなんて、直哉くんってばカッコつけすぎぃ」
「なまえちゃんは俺の神経逆撫でするんが上手いなぁ」
「そう?光栄だよぉ」
バチバチとお互いの間に見えない火花のようなものが散る。周囲の人は巻き込まれるのはごめんだと言わんばかりに、早々に雰囲気を察して話の内容が聞こえないほどまで距離を置いていた。
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