バンシーは踏み出さない
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後輩たちは二年に進級し、私も無事三年になった。今年の一年は二人。私の時は一人だけだったからクラスメイトがいるっていうのは羨ましいなぁ。
その年、ある出来事をきっかけに関係は変化してった。
詳しい話は聞けなかったけど星奬体に関しての任務で五条くん、夏油くんが失敗したと信じ難い報告を受けてからだ。その後から五条くんが誰も否定出来ないほどの最強になってしまい、任務に引っ張りだこで、二年トリオが集まってるのを見ることが減っていった。
そして翌年、私は四年に進級し、結局呪いは祓えないまま一級呪術師として昇格した。昇格なんて面倒な仕事が増えるだけなのに…。誰なの、私を推薦したのぉ。
任務では呪霊ではなく人の血を浴びる。高専という後ろ盾がなければ私は呪詛師と一体何が違うって言うんだろうねぇ…。
歯車が噛み合わないまま日々が過ぎる。
あの時
「なまえ先輩は、呪術師でいるの辛くないかい?」
梅雨のある日。たまたま高専の校舎裏の木陰で涼んでいたら夏油くんが現れた。夏油くんと会ったのは二月ぶりだ。だって最近彼が私を避けるんだもん。
久々に正面から対面してくれたと思ったら急にそんなことを聞かれた。
「急にどうしたの、夏油くん。そんなセンシティブなこと聞いてくるなんて。おセンチな気分なの?
というかあの夏油くんが私にそんなこと聞くとか天変地異の前触れ…?今のうちから災害グッズの在庫確認しとくべきかなぁ」
「聞く相手を間違えたようだ。今の話は聞かなかったことにしてくれ」
「待って待って!ストップ!ごめんて!ちょっと空気を和ませようと、ね?」
「和ませるより先に空気を読むスキルを身に付けて欲しいね」
「ごめんなさい…」
これガチなやつだぁ…。夏油くんが悩んでるなんてレアすぎて対応に困る。
この子、相談する相手を間違えてるっていつ気付くかなぁ…。三人の中では一番仲が良い硝子ちゃんですら私に相談事なんてめったに持ってこないよ。自他ともに認めるほどに相談相手には向いてないよ、私。
でも私は彼の先輩だし、頼ってくれたことは純粋に嬉しい。だから話し終えた時に、少しでも夏油くんの悩みが軽くなればいいとは思う。
「夏油くんはどうしてそう思ったの?」
「………」
「話したくないかぁ。じゃあ私が君の質問に答えるね。
呪術師ね、めっっっちゃキツイ。辛いし辞めたい。だって呪い怖いもん。単独任務とか絶対に行きたくないよ。私が呪詛師を相手してる間、蠅頭とかから私を守ってくれる人が一緒がいい。私が毎度ピーピー泣いてるの見てるでしょう?」
「…なまえ先輩はピーピーなんて可愛らしいものじゃなく、ギャアギャア泣いてるだろう」
「そこ訂正入れてくるぅ!?」
嫌味は健在だなぁ…。夏油くん、思ったより元気なんじゃない?うーん、でも表情は固いなぁ。
目が続けろと訴えてくるからまた言葉を紡ぐ。
「辛いし、逃げたいし、怖いの。家が禪院なんかじゃなかったらとっくに呪術師辞めてるからねぇ。これは自信ある。
むしろ今年は呪霊がうじゃうじゃ沸いて呪術師が皆そっちの任務を優先してるから呪詛師案件がほとんど私に回ってきてマジしんどい…。
そうだ、聞いてぇ!最近じゃ単独任務が増やされてきてるんだよぉ!?パッと呪詛師は終わらせてダーッて呪いから即逃げてる!この前なんか二時間迎えが来なくてずっと呪霊と追いかけっこだよぉ…!うぅぅぅ…思い出したら泣きそう…。もう今すぐ辞めたい…」
私の恥話でも聞けばまた彼がいつもみたいに嫌味を言ってくるかと思って、前みたいに呆れた顔でもするかと思って、先日の任務について話してみたのだけど、夏油くんの顔は強ばったままだ。
「ならどうして貴方は呪術師を続けてる。辞めたいならいくらだって雲隠れすることは可能だろう。何故、貴方は今も揺らぐことがないんだ」
私みたいなのに答えを求めるほど彼は追い詰められていたのだろうか。なかなか会えないと思うだけでなく、もっと行動に移してあげればよかった。
それに私より遥かに頭が良い君がわからないなら、私がその答えを持ってる可能性は低いと思うんだけどなぁ。君の求める答えは一体なんなんだろうねぇ…。
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