今日もバンシーは泣き腫らす
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路地裏で出会った女は泣いていた。
高専の制服を身にまとい、こちらを視認しボロボロと涙をこぼす。ブツブツと何かを呟いており、攻撃に転じた際に偶然その言葉が謝罪だと聞き取れた。
そしてその瞬間、私の世界は終わりを告げた。
─────
「うぇぇ…ごめなさい。ごめなさいぃ…」
今日の今日とてグズグズと泣き喚きながら、人気のない路地裏の隅で腰を下ろし、立てた膝に顔を埋める。
三級にも満たない呪いが隣でずっと遊ぼう遊ぼうって呼び掛けてくる。遊ばないよ。どっか行ってよぉ。
「あらら、なまえセンパイもう任務終わってたんですか?」
私の周囲を彷徨いてた低級の呪いを現れた硝子ちゃんが難無くパッと祓う。
「硝子ちゃん…!わぁぁん、怖かったよぉ!」
ヒシッと硝子ちゃんの腰に情けなく抱き着く。硝子ちゃんは気にする素振りも見せずスパスパ煙草を吸っている。健康に悪いからって何度か注意したことはあるけど、一向に辞める気配はないので私の方が諦めた。煙草を吸ってる硝子ちゃんも可愛いことに変わりはない。
「また派手に散らかしちゃってますねー。なまえセンパイの任務の遺体処理ってほぼ掃除みたいなものですよね」
路地裏の端から端までと言ってもいいほど盛大に飛び散った肉塊と血痕を眺めながら硝子ちゃんがそう言葉にする。
「ごっ、ごめんね!?次から気を付けるから…!」
「いいですよー、気にしなくて。センパイのその台詞聞くの毎度ですから」
五条くんや夏油くんと違って硝子ちゃんは嫌味で言ってるわけじゃないのをわかってるから余計に申し訳ない。でもどんなに反省しても多分次もまた同じ失敗をしてしまうんだろうなって自分自身で思ってしまっているから言い訳も出来ない。
「うーわ、相変わらずのスプラッタ。肉食う気失せるわ、オエ」
「そう言って悟、今日はなまえ先輩の奢りで焼肉だって言ってなかったか?」
「そりゃもちろん行くだろ。それとこれとは話が別。今日はモツの気分だから」
出たな、性悪コンビ。あと焼肉奢るなんて一言も言ってないよ?初耳だよ?硝子ちゃんになら喜んで奢るけどさぁ。
臓物散らばってるのを見ながらモツの気分だなんて神経図太過ぎるよぉ…。私、君とは絶対相容れない気がする。せめてタン…ひぃッ、舌の残骸見ちゃった…タン無理だ。
「なまえも可笑しな性格してるよな。呪いは雑魚すら一切祓えないのに呪詛師は幾らでも殺せるとか。どんな手使って準一級になったんだか」
「その辺は実力で多目に見て貰えてるんじゃないか?さすが女性の身でありながら御三家の一角を担う家に特別視されてるだけはある。
呪いを祓えずとも、呪詛師を殺し力を見せつけることで家から優遇されてる自覚はあるんだろう───禪院先輩」
「ぅ、ヴェェェー!硝子ちゃーん!二人がまた虐めるぅ!」
酷いこと言わないでよぉ…。それじゃまるで私が呪いを祓わない代わりに呪詛師を殺しまくってるみたいじゃんかぁ…!任務と正当防衛以外じゃこんなことしないもん!快楽殺人鬼とか戦闘狂みたいに言わないでよぉ…!わぁぁあん!!
「ハイハイ。じゃあその二人は放っといてここ片付けたらさっさと焼肉行きましょーよ」
結局硝子ちゃんも焼肉食べたいのね…。いいけど、いやいいけどさ。
「そういえばセンパイ。私もちょっとは気になってたんだけど、なまえセンパイはなんで呪いはダメで人はOKなんですかー?」
硝子ちゃんが片付けの片手間に聞いてくる。そんな大した理由はない。
ただ、呪いより人の方がよっぽど───業が深くてどこまでも悪辣だから。だから、間引かないといつまでも増えてしまうじゃないか。
「センパイ?」
「ううん。なんでもない。
だって呪いって見た目が怖いんだもん…!!」
「センパイらし過ぎて逆につまんない」
「逆につまんない!?え、嘘だよね…?硝子ちゃん?硝子ちゃぁん!?」
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