バンシーは出会う
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「ごめ、なさ…っ…。ごめん、な、さい。ごめんなさい。うぅ…っぅ」
飛び散る脳漿。真っ赤な血が地面を汚す。鼻から上がなくなり地面に倒れていく死体に更に一撃。
私はとっても臆病者なんだ。術師なんてもの、そう簡単に死なないかもしれない。だから念入りに確実に殺しておかないと、もし相手が仕返しに来たらなんて考えちゃうと夜も眠れないもの。
それにしてもまた制服にべっとりと血がついてしまった。夜蛾先生に私だけ制服の発注頻度が高いって注意されてるんだけどなぁ…。
「なんだよ、もう終わってんじゃん。結構ヤバい呪詛師って言ってたけど応援とかいらなかっただろ、これ」
「まあ無事任務が遂行出来てたならそれでいいじゃないか」
背後から聞こえた知らない声に涙は止まり、咄嗟に振り返る。見覚えのない青年が二人。敵かと一瞬身構えたけど制服は高専のものだ。クラスメイトも上級生もいないから今年入った一年の子かな?それにしても玉犬に索敵させてたのにどうやって…て、寝てる!?私の式神自由過ぎない!?
一年とはまだ面識がないから顔を知らない。私は応援が来るなんて聞いてないし、呪詛師が高専の生徒のフリをしている可能性も捨てきれないから武器からは手を離さないでおこう。
「えっと、はじめましてだよね?二年の禪院なまえです」
「禪院?」
「へえ、あの御三家の」
「二人は一年の子?」
出来るだけ穏やかに、でも警戒は緩めず彼らに問い掛ける。二人を観察していると白髪の方の子がしているサングラスの向こうの青い瞳がちらりと覗いた。
その瞬間、警戒を強め距離を取る。あれ、六眼だ…。一つ歳下の五条家の子息が入学したことだけは知ってた。あの眼は真似なんて出来るものではないから味方なのは確かだけど、五条家と禪院家って仲悪いんだよね。私は禪院家の事情なんてどうでもいいけど、彼もそうだとは限らない。せっかく出来た後輩と険悪になるのはヤダなぁ…。
「悟、君警戒されてないかい?」
「俺ぇ?傑じゃねーの?」
「いやどう考えても君と目が合ってから警戒が強まっただろう」
「あー…多分禪院と五条ってクソ仲悪いからか。なまえって結構家に従順なタイプ?」
特に許可してないのに初対面から名前呼び。苗字で呼ばれるのは嫌だから構わないんだけど、距離の詰め方ちょっとおかしくないかなぁ。
「私は禪院家の事情とか興味ないけど…」
「なら気にしなくていいだろ」
「う、うん…。じゃあよろしく…?五条くんに、君は、」
「夏油傑だ。よろしく、なまえ先輩」
「傑が先輩呼びって似合ってねーな」
「うるさいよ、悟」
まだ入学してそんな経ってないはずなのに仲良いなぁ。やっぱ同い年がいるってのは羨ましい。人員不足は知ってるけど私も頼れる先輩とか気軽に接せる同級生とか欲しかった…。京都校の方なら二つ上に歌姫さんがいたけど、東京校はいなかったんだよねぇ…。
「五条、夏油。先輩いたの?」
壁の角からひょこりと顔を覗かせた女の子が一人。おそらく三人いる一年生の最後の子だろう。
「!!! び、びじんさん…!」
彼女を見た瞬間、ビビビッと電気が走った気がした。艶やかな黒髪に色気のある泣きボクロ、咥えた煙草は気だるげな雰囲気にも似合っていて……煙草?思わず二度見した。高校生なのに煙草吸ってる!?すごく可愛い子なのに不良!?
「あれ、なんだよ。終わってんじゃん。血の匂い酷いし帰っていい?」
「補助監督の人が来るまでは待機しておいた方がいいんじゃないか?ここの処理を引き継がないといけないからね」
なんかごめん…。汚しまくったのは私です…。
「先輩ですよね?私、家入硝子っていうんですけど好きに呼んでください」
美人さんに自己紹介されちゃった…!禪院家も美形は多いけどキツめな印象の人が多いんだよな。性格も高圧的なのが多くいるし。
系統の違う美人さんから話しかけられてちょっとテンション上がる。煙草は吸ってるけど怖い子じゃないのかも知れない。
「じゃあ硝子ちゃんって呼ばせてもらうね。私は禪院なまえです。禪院って呼ばれるの苦手だから名前で呼んでくれると嬉しいなぁ」
「なまえセンパイって強いんですね」
早速名前で呼んでくれた硝子ちゃんにそう言われたけど、今年の一年はすごい人材が揃ってるって噂だし、あまりハードルを上げられると後が怖いかも。
「たまたまだよぉ。今回の呪詛師が弱かっただけだからね」
「厄介な相手って聞いてましたけど」
「エッ…う、うーん?そんな強かったっけ?初撃で死んじゃったから覚えてない…。あ、もしかして伝達ミスじゃないかなぁ」
「……思ってたんだけど、なまえの喋り方うざくね?」
脈絡完全に無視だね!?というか私と君って初対面のはずなんだけどなぁ!
驚いて止まっていた涙がまたじわりと滲み出す。
「悟、その辺にした方がいいと思うよ。夜蛾先生からなまえ先輩はすぐ泣く上に中々泣き止まないから、面倒事を避けたいならあまり刺激するなと言われただろう」
「う、うわぁぁぁぁん…!頑張って任務こなしたのに何でこんな仕打ち…!夜蛾先生のばかぁ!」
むしろ夏油くんの言葉が決定打だった。我慢していた涙が溢れて、びーびーと泣き声を上げる。夜蛾先生に関しては完全に八つ当たりだ。
一年の子達は泣き始めた私を面倒臭そうに見て、放って帰るかなどと相談してる。もうやだぁ!この子達やっぱ全員こわい!!絶っっ対に仲良くなんてなれない!!!びぇぇえん!
この三人がこれから何よりも大事な子達になることを、この時の私はまだ知らない。
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