22話
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「宮先輩いますかー?」
練習試合前日の放課後、部活が始まる前に宮先輩(金)に渡したい物があり部室のドアを開くと、タイミング悪く二年の先輩方が着替え中だった。なんか前も教室で似たようなことしたなぁ、と思いつつ、気にせずズカズカと中に入る。
「着替え中なんやけど!?」
「パンイチじゃないならいいんじゃないですか?」
「嘘やろ!?女子としての恥じらい持って…!?」
別に気にしやしないって。下着だったら出直すけど、皆脱いでるのは上くらいじゃん。試合の時には嫌でも目に入るんだから騒ぐほどのことじゃないだろ。
「そんなことより」
「そんなこと!?」
「どうぞ」
宮先輩の動揺は放置の方向で、英語の問題集を差し出す。
「なんやの、これ」
「練習試合の日の補習をなくす代わりに課題をもらってきました。来週中に出すようにとのことで」
「!!」
「あれ、でも侑が頼みに行った時は門前払いじゃなかった?」
「二年の英語の先生は環境委員の担当で、以前肥料を運ぶのを手伝ったことがあったので、他の生徒には公言しないのを条件にお願いを聞いてもらいました。監督も一緒に頼んでくれましたし」
稲荷崎が部活に力を入れてる高校だからというのと、了承してもらうまでに何度もその先生を訪ねた上に、毎日雑用をこなしてギリギリの前日になってやっとOKがもらえた、ってのは態々言う必要はないかな。私の努力というか今日は監督も一緒にいてくれたのが大きかったかもだし。
「これが人望の差か…」
「入学して二月ちょっとのみょうじに人望で負ける侑はどうかと思うけどね」
「俺の人望はどうでもええねん!なまえちゃん女神か…!」
「せやけど
「予定を聞くと数学は午前中で終わるらしいんで、午後の練習試合には問題なさそうです」
「エッ…バレーの前に勉強?」
「そうですけど?」
「悪魔か自分…!」
言ってることがコロコロ変わるなぁ。まあ試合に出れるようになって何よりだ。
─────
そして試合当日。朝からミッチリ数学の補習を受けてきた宮先輩がベンチで死んでいる。
「宮先輩。早くお昼食べて、相手校の人が来る前にアップしとかないと北さんに叱られますよ」
動く気配のない先輩に声を掛けるがもぞりと動いただけでご飯を食べようとはしない。これが片割れの方なら何よりまずご飯、ってふうになるだろうに。
「あんな、今日小テストやってん…」
「? はあ」
「合格点行かんかったらまた来週の昼休みも補習やて…」
「あーあ。でも受かればいいじゃないですか」
「簡単に受かるなら困らんわ」
放課後って言われなかっただけマシでしょう。どうせバレーやり始めたらその心配も消え去ると思うけど、もしもいつまでも受からなかったら来週からの予選が問題だな。
でも取り敢えず今は気分を切り替えてもらわないと。
「先輩」
呼び掛けてポイとボールを投げると、仰向けになった状態でも器用にオーバーでボールが返ってくる。それをこちらもオーバーで上げれば、ボールをキャッチしてがばりと起き上がり楽しそうな目で私の顔を見てくる。あー…オーバーで戻さず投げればよかったかも。
「なまえちゃん、今度自主練ん時一緒にやらへん?」
「宮先輩の相手は務まらないかと」
「冗談やろ。球技大会でバッチリ試合見てたからな。何より使い古したボールに、庭には簡易なネットまであったのにやれんとは言わせんで」
おい。ボールは自室に置いてたはずなんだが?一体どこまでうちの探索しやがったんだよ。
「…中学のこと聞きませんか?」
「聞かへん聞かへん」
「…………それなら、先輩が小テスト受かったら付き合います」
「!!! 次は絶対受かるからな!やっぱナシはダメやで!」
「はい」
今回は落ちたの前提なのかと思いつつ、中学の時のことを聞かれないならいいかと了承する。
本音を言えば、稲荷崎のバレー部はレベルが高くて見てるだけでうずうずしてたから、楽しみだったりする。絶対に言わないけど。
ちなみに練習試合はストレート勝ちだった。来週にはIH予選が控えてることだし良い空気だと思う。
一応去年の録画を見させてもらい他校の情報は頭に入れている。ただ今年の新入生に関する情報はないから友子に聞いとかないと。アイツ他校にも知り合い多いみたいだし。
まあそれ以前に宮先輩の補習が予選までに終わることを祈っておこう。
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