21話
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さん、にー、いち
──キーンコーンカーンコーン──
4限終了を告げるチャイムと共に教室の外へと走り出す。
「おいコラみょうじ!俺はまだ授業終わりて言うてへんやろ!」
扉から慌てて顔を覗かせた教師が叫ぶがこっちも死活問題なんだ。
「チャイム後も授業終わらない教師は嫌われますよ!」
「喧しいわ!!」
大丈夫、許してくれる相手にしかやってないから。厳しい先生だとちゃんと終わるまで教室に残ってるし。
でも少しでも早く逃げないと。じゃないと奴が来る。
こんな逃げ出すような真似をしているのには訳がある。
勉強会の際に宮先輩(銀)を静かに机に向かわす為に毎日おにぎりを用意していた。しかしそれがダメだったんだ。テスト後から昼食時になると食べ物をねだりに来るようになった。
毎日、今日の具は?ってキラキラした目で聞いてくるものだから、つい日に日に気合いを入れてしまった。そして勉強会は終わったにも関わらず、今や昼休みに逃げ出せばハンターのごとく追ってくる始末。完全に餌付けしすぎたわ…。
ここ数日で詳しくなってしまった人気のない場所で今日の弁当を開く。もう6月ともなると少し蒸し暑い。にも関わらず非常階段で食べないといけないなんて。つか私悪いことしてないのになんで追われないといけないんだよ。
「はー…昼休みに無駄に走るから腹減るわ…」
「同感やな。あ、ハンバーグ食べたい」
「あーはいはい。……!?」
背後から聞こえてきた声にバッと振り返れば、まず目に入る銀色の髪。…くっそ、今日は見つかった。
「なまえちゃん日に日に隠れるんが上手くなるから困るんやけど」
「困ってるのはこっちですよ。毎日弁当を狙ってくる奴とか勘弁して…。自分のあるだろ」
「自分のも食うけどなまえちゃんのも欲しい」
「我儘か」
ハンバーグに降り注がれる視線がさすがに鬱陶しくて一つだけ宮先輩の弁当箱に移す。再び逃げるのは面倒だから動く気はないので、捕まるか見つかってしまった場合は仕方なく一緒にご飯を食べている。そしてその場合は十中八九何かおかずを渡すはめになっている。
「ほら、俺まだまだ成長期やから。沢山食べなあかんやろ?」
「こっちも成長期まだ終わってねーわ」
「え、なまえちゃんまだ伸びとんの?」
「まあさすがに急成長とまではいかないですけど、先日測った時は177いってましたよ」
ちょっとずつ伸びてんだよなぁ…。クラスメイトの男子で私より高い人の方が少ないし。いつになったらストップするんだか。
私の身長を聞いた宮先輩がワナワナと震え、有り得ないというような顔をしている。
「ま、負けんからな」
「何がだよ」
「俺180あるし、まだ伸びてるし、さすがになまえちゃんに抜かされることはないはず…」
ブツブツと呟きながらもご飯を食べる手は止まらない。喋ってる時に口に物をいれるなよ。
あとさすがに180はいらないかな。バレーするのには悪くないけど、女子としてはそろそろ止まって欲しい。
いつの間にか横に座っていた宮先輩がおかずを狙ってくるのを阻止しつつ、昼食を食べ終わる。毎日捕まるわけじゃないけど、この一週間の内3日くらいおかずを奪われてる。いい加減宮さんに息子さんの弁当が足りてないみたいです、って言ってみるべきだろうか。…いややっぱさすがに宮さんには言えないわ。まだ続くようなら少し多めに作ってきた方がいいかな…宮先輩(銀)のご飯への執着はヤバいから逃げるのも困難になってきたし。
「なまえちゃん、チョコパイかグミ食べる?」
「…両方もらいます」
これがなあ…。私の甘党を知っているせいか食後におやつを差し出してくるから、毎度逃げてはいるけど見つかってしまった後はどうも邪険にしづらい。しかも毎回チョイスを変えてくるあたり優秀なんだよ…。どんだけの種類のお菓子常備してんだって話だけど。
いや、ここはハッキリとお菓子はいらないから、弁当を狙って毎日やって来るのをやめろと言ってやらないと。
「宮先輩、あの、」
「そういやコンビニにトッポのカスタードも売ってたから買ったんやったわ。いる?」
………まあ、うん。そんな迷惑じゃないし、逃げた先で見つかった場合なら少しくらいいっかな!
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