11話
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4:30起床。朝のロードワークを済ませ、シャワーを浴びる。今日の弁当と朝食の準備、諸々の支度を済ませ、普段より随分早めに家を出る。始発のバスに揺られ、学校に到着したのが6:15。朝練が7:00からなので時間の余裕は十分だ。
昨日、帰宅する前に監督にお願いして体育館の鍵のスペアを預かった。無断欠席に何も無しだったのが今後気になったら嫌で、せめて朝練の準備だけでもと監督に申し出た。
館内に籠る少し冷えた朝の空気が酷く懐かしい。あの時は誰よりも早く体育館に来て、誰よりも多く練習がしたい、その一心だった。…やめよ。思い返したところで今は関係の無いことだ。
誰もいないのをいいことに体育館の端で制服から学校指定のジャージに着替える。明日からはジャージで登校した方がいいかな。
体育倉庫を開けて準備を開始する。
昨日の部活後にも清掃はしてあるだろうがもう一度体育館全体にモップをかける。
それが終わったら支柱を立てていく。支柱がカーボン製だったおかげで一人で準備出来るものだからよかった。公式試合を考えるならスチール製の方がいいかもしれないけど、重量があるから二人以上で運ばないといけないし、準備をしていて怪我をしたなんて笑えないしね。お高いはずだがさすがバレー強豪校ってとこかな。
ネットは無理に一人で張ってたるむようなら意味が無いので、部員が来てからお願いしよう。
朝練のドリンクは各自持参らしく、洗濯物もない。ボールの手入れもどうせなら使用後の方がいい。ボールカゴを押しながら次にやることを考えるが、残念ながら出てこない。うーん、手持ち無沙汰って一番困るんだよなぁ…。
ちらりと時計を見れば針は6:40を指している。まだ誰も来ない、よね。
カゴの中に幾つも入ったボールに手を伸ばす。大丈夫、1回だけ。1回だけならきっと、バレない。
恐る恐るボールを一つ手に取り、エンドラインから7歩離れた場所に立つ。どんなサーブもいつだって私は決まってこの距離だった。心臓がいつもより早く脈打って、ああ…柄にもなく緊張してる。
少しだけ高めのトス、大きく踏み込み、前方へ高く跳躍。インパクトの瞬間、ボールにドライブ回転をかける。強い衝撃音を響かせ相手コート側にボールが叩きつけられた。
惜しくもボールが落ちたのはコートの外。長く離れていたせいで鈍ってる。以前ならクソサーブと自己嫌悪に陥っていたくらいだろう。
でも──わすれて、ない。この手の痺れも、サーブが決まった瞬間も。何一つ、忘れられるわけがないんだ。
「みょうじ…?」
背後から苗字を呼ばれ、サッと血の気が引いた。不味い、集中しててとびらの音を全然気にしてなかった。
「…きた、せん、輩…。今のは、その」
「来るの早いんやな。朝練の時間間違えたん?」
「えっ?」
俯いていた顔を上げたら、何も気にしていないような表情の先輩がいた。この人、昨日も思ったけど表情の違いがわからなすぎて感情が全然読めない。見られたの?見られてないの?
「…昨日、朝練サボってしまったので監督に頼んで鍵を借りて早めに来たんです」
結局どちらなのかわからないので、先程のサーブはなかったものとして話を進める。
「気にせんで良かったんやで」
「そういう訳には…私が嫌だっただけなので。
北先輩はいつもこの時間ですか?」
「せやな。バスの時間は他の奴らも一緒やけど、俺は鍵開けなあかんから少し早く着替えて来とる。今日は鍵が開いとったから少し驚いたけどな」
「え"、あ、すいません…」
「? 別に怒ってへんよ」
いやわかりづらい…!せめてもうちょっと感情を顔に出してくれ…!
「準備してくれたんは有難いけど、重いもんを一人で持って怪我したら困るから、次からは部員が居る時にしいや」
「…うぃっす」
ド正論パンチが痛い。だけど、ごもっともです…。支柱も一人で運べるとは言っても、安全性を考えるなら複数人で運ぶべきだ。欠席したことへの反省の意を込めたものでも、一人で勝手に準備して、勝手に怪我してる方が迷惑だった。
まだバレー部の部員のことは知らないことばかりで、不安も多い。ただ、この北先輩は歯に衣着せぬけど、言うことはとても正しい。主将がこの人なら多分これからもバレー部でやっていけそうだ。
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