10話
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部室へ着替えに行った理石と別れ、体育館の扉を開くとまだ数人だがチラホラと部員が集まっている。女子が入ってきたものだから当然視線が集まる。…理石を待って一緒に来ればよかったかな。
居心地の悪い思いをしつつも、鞄を床に置き館内に一礼。お願いします、と小さい声ではあるが挨拶もする。目立ってるから早めに責任者の元へ行きたいが、まあマナーだから仕方ない。体験入部や部員に用事がある時とは違って、不本意ながら今は正式な部員らしいし。
館内にいる人達はよく知らない相手ばかりで困惑していると、少し息切れをした理石がやって来た。もしかして急いで来てくれたんだろうか。
「みょうじ!すまん、一緒に来ればよかっ、」
「挨拶」
「え?」
「館内に入る時は挨拶をしろ。やり直してこい」
「アッ、ハイ」
言われた通り律儀に入館からやり直し、お願いします!と大きめの声が響いた。
再度近付いて来た理石が今ので大丈夫かと言いたげにこちらを窺う。別に挨拶の仕方とか細かいとこまでケチつけたりしないよ。
「急いで来てくれたのはありがとう」
「お、おう。
監督とコーチはもう少し後に来るんやけど、主将は今さっき部室で一緒やったからすぐに来るで」
「了解」
理石の言葉通り間もなく部員数人が現れる。
「あ、ほら、あの銀髪で落ち着いた雰囲気の人が主将の北さんや」
そう言った理石が視線をやった相手は、特別丁寧に挨拶をしている。あの人か。昨日主将っぽいなと思ったけど、本当に主将だったとは。
「あの…北、先輩」
「? なんや」
「私、今日からマネージャーとして入部した一年のみょうじと言います」
自分の意思での入部ではないが、即退部というのもきまりが悪いし、この先輩には嫌な印象を持ってないので今後のためにきちんとしておきたい。
「今朝は無断で朝練を休んでしまいすみませんでした」
「ああ、侑が言うとった子か。
気にせんでええよ。俺も侑に言われるまで知らんかったし、朝練には監督もコーチも来おへんから」
叱責はなしか…。自分から怒られたい訳ではないけど、体育会系の部活ならそういうのは厳しいかと思ってた。ただ罰則もないってのは、なんというか、モヤモヤするんだよねぇ…。
その後、監督やコーチ、部員にも挨拶を済ませ、部活が開始された。あの金髪野郎はこちらを見ながらニヤニヤしてやがったが、絶対に反応なんてしてやるものか。
部活が始まれば正式なマネージャーとして、体験入部にしていた全ての仕事をこなさなければならない。慣れるまでは一年が時々サポートをしてくれるとのことだ。今日は初日ということもあり、よく知った理石が補助役を買って出た。
「あれ。今日は洗濯しなくていいの?」
「タオルは個々で持ってきとるし、ビブスの洗濯をする機会はミニゲームした時くらいやな」
へえ、じゃあ体験入部の時はわざと洗濯させてたのか。まあキツイ仕事を初めから教えとくって意味ではいい判断だと思うけどね。
「次はスポドリ作りやな。一応紙に配合書いとるからこれ見て作って貰えたら大丈夫やから」
「わかった。……で、理石はいつ部活に戻るの?」
「? 今日はみょうじのサポートやん」
「体験入部だってしてたんだから別に最初から最後までいなくて大丈夫だけど」
「でも困った時に聞ける相手が近くにおった方がええやろ」
……真面目通り越して過保護か!それで自分の練習時間削ってどうすんの。
「理石はさ、レギュラーなりたいの?」
「そりゃなりたい、けど…先輩らのが何倍も上手いんやし、正直今年は無理やと思って、」
言葉の途中でゲシッと理石の尻を蹴りつける。急に蹴られた意味が分からず困惑気味にこちらを見てくる顔をひっぱたきたくて仕方ない。
「馬鹿かお前は。レギュラーは奪い取るもんだろうが。学年なんか関係なしに同じポジションの奴は蹴落とせ。なりたいってなら相応の行動をしろ。
今年は無理?その考えじゃ来年や再来年すら無理だわ。
一日の練習で飛躍的に技術が上がったりなんてしない。でもたった一日くらい、って軽んじて貪欲になれない奴が調子に乗んな。その考えは普段の練習にも出るぞ。
わかったらサポートなんてしてないでさっさと行、け!」
オマケとばかりにもう一度、さっきより強めに蹴りつける。その衝撃によろけながらも、おおきに!と告げて体育館に向かって走っていく。礼を言うくらいなら初めからこっちばかりに気を回すなよ。理石が悪い訳じゃないんだから。
さて、自分から補助役を追い返したんだし、これで失態なんて出来なくなった。私も気合い入れて頑張るか。
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