8話
夢小説設定
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汽車の乗客は意識が戻らない人が多い。だが鬼は倒したから問題はないはず。そして怪我も命に別状がある人はいない。
だが救急道具には限りがあるから、怪我の度合いを見て手当する人を考えないと。
後方より前方の人の方が怪我が多い。やはりお師様と全く同じようには出来なかった。彼らの怪我は私の失態だ。
一人一人丁寧に手当をして外に出るよう誘導していると、ドンと大きな衝撃音と共に凄まじい鬼の気配が外からする。
新手の鬼…!だけどまだ手当は終わっていない。外にはお師様がいる。なら私は自分の仕事をしよう。お師様を信じればいいんだから。
お師様の声が聞こえる。戦闘の音が聞こえる。でも私はまだ行けない。手当が終わってない。
乗客の手当はお師様の指示だ。私が勝手に判断してあちらの加勢に行くことで邪魔になる可能性だってある。
ここは血の匂いが蔓延している。食欲を刺激する匂いは私の理性をドロドロと溶かす。
そして醜い本能が顔を出す。食べたい。お腹が減った。
でも、私が
そう、お師様の血。お師様の血の匂いがする。こんなたくさん!…たく、さん?どうしてこんなにお師様の血の匂いがするの?お師様に何かあったの?
気付けば走り出していた。お師様の指示も無視して、ただ匂いの元に走って。
なに、あれ。
お師様の鳩尾に鬼の腕が刺さっている。炭治郎と伊之助が鬼に斬りかかっている。鬼が自ら腕を千切り逃げていく。お師様の腹には穴が、あいて…。
「あ、あああぁぁぁあぁぁあああああああ!!!!」
殺す、殺す、殺す殺す殺す!あの鬼だけは絶対に許さない。殺してやる!殺してやる!
泣きながら崩れ落ちた炭治郎にも目をくれず、鬼が逃げた森の中に飛び込もうとすると、なまえ、とお師様が私を呼んだ。
やめて、やめて、呼ばないで。そんな弱々しい声で私を呼ばないでよ!
「なまえ。おいで」
いやだ。その言葉に逆らえないことを知ってるクセに。
「良い子だ」
褒めないでよ。お師様が傷ついてるのに気付かなかった私なんて。
お師様が炭治郎に何か言っている。お師様が伊之助に、善逸に何か言っている。
お別れみたいなこと言わないで。私はまだ、お師様といたいのに。
「なまえ。次の炎柱は君がなってくれると嬉しい」
「なんで!!なんで、そんな…死ぬ、みたいなこと」
「…すまない」
「やだ、やだぁ…!おしさま、死なないで。笑って、いつもみたいに。たくさん名前をよんで。お師様。おしさま…」
声が震える。やめて、どこにも行かないで。
「………」
お師様の呼吸が少しずつ小さくなる。ああ、ダメだ。そんなの絶対に…!
お師様を死なせたくない。たとえ私がもうお師様といられなくなるとしても。
「……ごめんなさい。私、ずっと嘘ついてたんです。きっとお師様は怒ると思う。私が今からすることは酷いことなんだと思う。
でも私はお師様が死ぬより戦えなくなる方がいい。もう一緒にいられなくてもお師様が生きてくれるならそれだけでいい。
だから私は今から、私の為に自分勝手にお師様の命を弄びます」
自分の腕に食らいつく。喉を通る初めての人の肉の味。
近くにいたお師様の身体に血が飛び散る。
これで条件は整った。
――血鬼術 共鳴り――
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