4話
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お師様とは私が住んでいた田舎の村で出会った。
その村には鬼の男と稀血である異人の女の夫婦がいた。旅人すら滅多に訪れない田舎で、村人も少なく閉鎖的だった。
そんな中で男は女を飼っていたらしい。他の鬼に比べて弱かった男は正常な鬼なら好まないような年寄りの多い田舎の村に身を寄せた。
そしてそこで稀血の女を見つけた。そんな村だったからこそ今まで鬼に目を付けられることがなかった。
稀血を食らえば大きな力が手に入る。だが男は一時の力よりも継続的な食事を優先した。村人を助けたかったら、そんなお決まりな脅しで女を手に入れた。周囲からは一応夫婦と認識されていたらしい。
死なないように食らい、回復させて、また食らう。少量で我慢すればまた美味しい食事にありつける、それが男の言い分だった。
そしてその内二人の家に赤子の住人が増えた。
その赤子は女の銀髪と黄緑色の瞳を継いでいることから女の子供であることは一目瞭然だった。そしてその女が不貞を働いていなければ父親は鬼なのだろう。
鬼と人がまぐわって子ができるなどあってはならないことだが、その子供は確かに鬼の血を継ぎ、人の腹から産まれた。それは事実だった。
そしてその子供が私だ。
父は私に興味がなかった。小さな子供を食べたところで大して腹の足しにはならないからだ。
母は兎に角私を恐れた。自分の腹から産まれた鬼の子を。
一人では移動すらままならない私を父も母も放置していたらしい、が生憎それは記憶にない。鬼の血のおかげか飲まず食わずでも死ぬことはなかったみたいだ。
私が産まれて数年が経ち父はとうとう我慢が出来ず母を食べてしまった。その後は村人を少しずつ。
記憶に強く残る光景は父が肉の塊を貪っているところだ。それが母だったのか村人だったのかは知らない。
自分の意思で移動するようになってまず外に出てみた。昼間の陽光が目に眩しく、開いた扉から差し込む日の光に怯えた父から酷く怒鳴られたのを覚えている。私が鬼の一面を持ちながら日の光を浴びれたのは母の人間としての一面も受け継いでいるからだと思う。
外に出て、動いたことでまず感じたのが空腹。しかし食べる物など用意出来るわけもなく、その辺に自生していた雑草を口に入れてみる。不味かったが初めての空腹に耐えられずいくらか食べてたらお腹は膨れた。
それからお師様と出会うまではずっと野草やキノコ類が主食だった。それ以外は何が食べる物なのかも判断出来なかったから。
そして齢十になる頃には村人は誰もいなくなっていた。食べる物がなくなった父はついに私に手を伸ばした。
油断、していたのだろう。飲まず食わずで生きれる以外は普通の人間と大差ない子供だったから。
殺されることを察知した私は抵抗して逆に父を殺した。昼間だったこともあり、日の光に父の身体を晒した。父が太陽を恐れていることは知っていたから、本能的に父に日光を浴びせれば殺せると理解していたから。
そうして私は誰もいない村に一人になった。
それから二年。
任務としてか、目的地への道としてか、お師様がこの村にやって来た。そして村の惨状を見て、まず食い散らかされ残った部分は白骨化してしまった村人を弔った。
その後、村を探索中に生き残りである私と出会った。産まれてから十二年、父や母の声を聞いていただけで誰かと話すことなどなく、言葉が不自由で思考も幼かった私に根気強く話し掛けてくれた。
現状を把握したお師様は私をその村から自分の屋敷に連れ帰った。
お師様は私の貰い手を探してくれたが、鬼に惨殺された村の生き残りで更には異人の子を喜んで引き取る家はなく、その上お師様以外に心を開かなかったので藤の花の家紋の家に行っても長くは続かなかった。
結局お師様が父親の槇寿郎様を説得して煉獄家に引き取られることとなった。
煉獄家に居候する中でお師様に稽古をつけてもらい、今に至るというわけだ。
余談だが私は槇寿郎様と仲が悪い。お師様や千寿郎へのキツイ当たりを何度か目撃した際に殴りかかって以降は、目を合わせる度に喧嘩に発展するほどだ。
本人に槇寿郎様、と呼んでいたのは初めだけで最近ではジジイ呼びになっている。
お師様はどちらの味方も出来ず困っているみたいだが、これに関しては私は絶対に譲る気はない。
私にとってのお師様は恩人であり、道標だ。
名を与えてくれ、生きていく常識を教えてくれ、鬼と戦う術をくれた。お師様がいなければ私はあの村でひっそりとその内死んでいたことだろう。
しかし私はお師様と出会ってから四年間、お師様も周りも騙し続けている。半分鬼の血が流れていることはお師様にすらも言っていない。
幸い、太陽の光で死ぬこともなく、藤の花に嫌悪感もなく、気配も限りなく人間であるおかげで誰にもバレてないみたいだ。
そして鬼舞辻無惨の呪いも私には作用していない。父は鬼舞辻から血を与えられた鬼で、私の鬼の血は父から受け継いだものだ。直接鬼舞辻の血が混ざったわけでないからか理由は定かではないが、呪いの対象外であることは確かだ。
これは決してバレてはいけない。もしも知られてしまえば、この幸せが崩れてしまうから。
だから、今日も私は貴方を騙します。
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