22話
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やっと魔の10日間が過ぎた。今日!ついにお師様に会える!
「胡蝶さん、お世話になりました!」
蝶屋敷の一室は完全に私の監禁場所となっていたが、胡蝶さんはちょいちょいお師様の怪我の現状であれば教えてくれていた。一方、小芭内は私が暴走すると困るとか言って一切お師様に関して話してくれなかった。まあ小芭内の言うことは間違ってはなかったけど。
ほぼ毎日脱走を企てていたのに蜜璃さんに小芭内という柱二人の強固な妨害をしてくるものだから結局約束の10日までお師様には会えなかった。
見送ってくれてる胡蝶さんや、アオイちゃん、きよちゃん、すみちゃん、なほちゃんに大きく手を振って別れる。
そういえば胡蝶さんの継子の栗花落カナヲさんとは同期なのに全然喋ったことないな。私あんま蝶屋敷で世話になる機会少ないし、今回は任務でいなかったみたいだし。今度会った時は話しかけてみようかなぁ。
蝶屋敷から出て眩しい陽射しに目が眩み、思わず手で陽射しを遮る。この数日間は部屋から出なかったから目がチカチカする。
「い"っ…!」
目を隠すように翳していた手に突然痛みが走った。慌てて確認するとまるで火傷したように赤くなっている。なんで急に…。こんな怪我するようなことは何も、………もしかして、太陽…?
一気に身の毛がよだつ。反射的に太陽から逃げるように日陰に隠れた。どうしよう…怪我が治らない…。この程度いつもならすぐなのにじわじわと少しずつしか治らない。
なんで、なんで?せっかくお師様に会えるのに、こんな…。陽光なんて今まで問題なかった。これじゃ、こんなんじゃ、半分の中途半端でもなくて本当に──鬼みたいじゃないか。
傷のある手の甲を袖で隠して日陰を伝い、何も無かったのように歩き出す。臭いものには蓋をして、見たくないものには目を瞑る。
大丈夫、大丈夫だ。本来の鬼であればこんな傷では済まない。蝶屋敷にある藤の花も問題なかった。だから私はまだ大丈夫。
帰る頃には陽光で灼かれたことも嘘のように傷は消え去り、日向に出ても問題なくなっていた。誰にもバレなかったのだけは幸いだ。
「お、し、さ、まーー!!」
煉獄家の庭で素振りをしていたお師様の背中に勢いをつけて飛びつく。その声に反応してお師様はくるりと振り返り、しっかりとうけとめてくれた。
「お師様、ただいま!」
「よく帰った!こうして会うのは久々な気がするな!」
「まともに話したのは1ヶ月以上前ですからね。私、お師様の継子なのに。お師様の継子なのに…!」
大事なことなので2度言った。お師様は怪我もあるし正直復帰はして欲しくないけど、離れ離れにされるのは話が別だ。
お師様が私が炎柱になるのを望んでるって言ってたから頑張っただけで、これが続くようなら御館様への直談判も辞さないぞ、私は。
「なまえ」
「はい?」
「この一月半で多くの任務をこなし、階級が丁になったと鴉から聞いた」
えっ、そうなの?
「君の頑張りを俺は誇らしく思う!」
誇らしい…?お師様が?私を?
その言葉を理解するのに少し時間がかかってしまったが、頭の中で反芻してやっと実感出来ると、ブワッと顔が熱を持つ。わ、わたしのことお師様が褒めて…!?どうしよ、今すっごい幸せかも…。
「是非任務でのことを聞かせてくれ。遊郭や遊郭や遊郭のことなど」
「お師様、全部遊郭しか言ってないですよ」
「うむ。宇髄との任務だったのだろう?俺以外の柱との任務がどのようなものだったかを聞いてみたくてな」
「私はもちろんお話したいんですけど…宇髄から極秘任務だって言われてて…」
「それなら問題ない!気にせず話してくれ」
お師様に聞かれたのなら秘密に出来るわけもないが、一応宇髄から極秘任務と言われたことを伝えておく。しかし笑顔のお師様はそれを一蹴した。そんなあっさりと…?
中でゆっくり話そう、と背を押されて屋敷の一室に誘導されてる間、お師様はずっと有無を言わさぬ笑みを浮かべたままだ。…深く突っ込まないでおこう。なんか、今は口を出してはいけない気がする、うん。
そうして全てを話し終えたのだが、何故かお師様からの反応がない。
「お師様?」
「…宇髄はまだ療養中だったな」
「え?あ、はい。蝶屋敷にいますよ。私が滞在してた間は暇な時とか話し相手になってくれましたし」
「なるほど、意識はハッキリしていると」
「そう、ですね…?」
「よし!見舞いに行ってこよう!見舞いの品はこれでいいな!」
突然!?待って、しかも今から!?そうと決まれば、とお師様は力強く襖を開け競歩で去って行った。あと見舞いの品と言って手に持っていたのは新しく支給された日輪刀だと思うんですが…。
何よりね、あの、私…宇髄に負けた…!!なんで私が帰ってきた時に宇髄の見舞いに言っちゃうんだ…。あの野郎、私からお師様との時間を奪いやがって、許さねぇ…。
お師様に置いていかれたことで、ぐずぐずと部屋の隅で臍を曲げていると、温かいお茶と豆大福がすっと差し出される。顔を上げれば、柔らかい笑みを浮かべる千寿郎が。天使かな?
千寿郎の優しさが酷く心に滲みるのを感じたのだった。
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