1話
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「今日から君はなまえだ!」
貴方に貰った名と、貴方からの教え。
それが私を構成するなにもかもだった。
―――――
「それではお師様、行ってきます!」
今日は最終選別の日。
これに合格すれば私はお師様の正式な継子になれる。気合を入れて行かなければ。
外を歩くと決して少なくない視線が私に集まる。
奇異な目で見られるのにももう慣れたものだ。周りと違うこの髪と瞳の色は余程目を引くらしい。
今も隣を歩く男の子がこちらをチラチラと見てくる。
藤襲山の階段を上ってるということは彼も鬼殺の剣士を目指しているのだろうか。にしても狐面かわいいな、私も欲しい。
結局何度か男の子が口を開こうとしていたけど階段を上り切るまでに彼の声を聞くことはなかった。
階段を結構上ると開けた場所に着き、二十人近くの刀を持った人達が既に待機している。
私達が到着してすぐ対称的な色をした女の子二人が最終選別開始の宣言をした。合格条件は七日間ここで生き抜くこと。夜さえ切り抜ければ難しいことではない。
彼女達の宣言でこの場から皆が散開する。私も行くか。
藤の花から離れれば血肉を求めた鬼が勝手に寄ってくる。落ち着いて確実に頸を斬る。
大丈夫、ちゃんとやれる。お師様の教え通りにやれば鬼を殺せる。
三体目の鬼を殺した時、感じた強い鬼の気配に人の悲鳴。逃げるべきか戦うべきか。……馬鹿なことを考えた。もしお師様がここにいたなら助けに行く。答えなんてそれだけだ。
鬼の気配を辿って駆けつければ、先程の男の子が鬼の頸に斬り落としたところだった。
おそらくこの山で一番強いであろう鬼。この子、すごい。そしてとても優しい子だ。崩れゆく鬼の最期を悼んでいる。
「その怪我、治療した方がいいよ」
「え、」
「包帯はある?」
「いや、あの」
「ある?」
「な、ない」
「わかった」
ビリリと羽織の袖を破き簡易的な包帯を作る。男の子はぎょっと驚いて止めようとしたが、既に破ってしまったのでもう遅い。
オロオロする彼の頭に強引に布を巻く。…しかしうまく巻けない。彼を地面に座らせ再び挑戦するが、やはり不格好だ。
そして気付いた。私、人に包帯巻いてあげたことねーな。
「自分でやろうか…?」
苦戦していることを察した男の子がそう申し出てくれた。居た堪れない気持ちになりながら無言で少しよれた布を差し出す。
彼が自分で頭の傷を治療している間に片腕だけ破れた羽織の残りも破り包帯を作った。まだ今日を抜いても六日もあるんだ。替えはあった方がいい。
「ありがとう。えっと…」
「なまえ。姓はない。君は?」
「俺は竈門炭治郎。羽織をダメにしてしまってごめん」
「いいよ、私が勝手にしたんだから。
それじゃあまり固まらない方がいいと思うし、もう行くよ。お互いに合格したらまた話してくれると嬉しい」
「! ああ、もちろんだ!」
「なら炭治郎、また七日後に」
そう言ってその場から走って離れる。二人でいると鬼に目を付けられる可能性も高い。炭治郎は怪我をしていたから無理をしない方がいい。
それにしてもこのやり取りってまるで友人みたいじゃない!?会って半日すら経ってない仲だけどまるで友人と待ち合わせしてるみたいじゃなかった!?私誰一人友達なんていないからよく知らないけど!
友人。友達…!炭治郎も合格してたら友達になってって言ってみようかなぁ。少し恥ずかしいけど合格した時は気分も高揚してるだろうしその勢いで言えるかもしれない。
浮かれながら襲ってきた鬼の頸を斬り落とす。
ダメダメ、集中しないと。無意識に上がってしまう口角に力を入れる。
ここに来たのは鬼殺隊に入るため!正式なお師様の継子になるため!集中しろ!
パシリと両頬を叩いて自分を戒める。
ああ、でも、七日後が楽しみだ。
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