17話
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お師様、お師様、お師様。
あなたの為なら鬼を狩りましょう。あなたの為なら鬼にも成りましょう。
私の導。私の光。
お師様と話せないままそろそろ二月は経つだろうか。
声が聞きたい。その瞳に私を移して欲しい。褒めて、褒めて、名前を呼んで。
お師様を追いかけて鬼殺隊に入ったのに、お師様と離れ離れになるなら、別に鬼殺隊なんて入らなければよかった。そう思ってしまうのは決して誰にも悟られてはいけないことだ。
でもそれが私の本音だ。私はただ、長く家を空けるお師様と一緒に居たかっただけだったのに。
憂鬱だ。窮屈だ。
鬼殺隊は好き。ここに入って友達が出来た。尊敬する人が出来た。
だけど、お師様以上なんて誰もいない。
会いたい、会いたい。
暫く離れているからこんな良くないことばかり考える。早く任務を終わらせて、早くお師様に会いに行こう。
名前を呼んで、頭を撫でてもらって、ギューッと思い切り抱きつけば、こんな考えすぐに吹き飛ぶ。
ああ、早く早く、1日でも、1時間でも、1秒でも早く、会いたいなあ。
今日から馴染みの客を迎えに揚屋へと歩を進める。
こんな着飾ったところでお師様が見てないなら意味が無い。
ジャラジャラと頭に色々刺したって重いだけだ。
化粧だって白粉臭い。
着物も重いし、こんなのでは戦闘になったらどうしろって言うんだ。
不満、不満、不満ばかりだ。
漆で真っ黒に塗られた三枚歯の高下駄を履き、見物人が多くいる中を歩く。
外八文字という歩き方で考えた奴は馬鹿じゃねえのと言いたいくらい歩きにくい。本来なら習得に3年はかかるものらしい。つまりあの遣手婆はきっと頭がおかしいに違いない。
はらりと耳に掛けた髪が一束垂れる。
花魁は髪を全て結い上げるのが通常だ。しかし私の場合は髪結いの人曰く、西洋風だとかどうとかで一部を軽く結わえただけだ。私の後ろに続く遊女は通常の髪型だから、それが見物人には余計に物珍しく写っているのだろう。
葵屋は歴史の長い郭だって聞いてたのに型破りすぎだろ。特にあのババア。結局文句は全てあの遣手婆に行き着くのだから困ったものだ。
せめて日輪刀の刃が見たい。自分の物ながら脈を打つ気味の悪い刀ではあるが、あの鮮やかな赤はお師様を彷彿させる。そういえば花魁として潜入する為、宇髄に預けっぱなしだったな。
隊服も着てない。日輪刀も持ってない。クソ鴉も傍にいない。私はどうやって自分が鬼殺隊だと証明出来るのだろうか。
お師様がいないと自分の存在意義が希薄になる。その上鬼殺隊と証明するものも無いとなると、更にだ。
だからやっぱりこの結論になってしまう。ああ、早く帰りたい。
視界の端に一般人に紛れた宇髄が写った。
あ、やば。雑念が多すぎるな。今は任務中だ。集中しないと。
私の任務は目立つことだ。噂になること。明言はされてないけど、恐らくは囮が私の役割だ。
この花魁道中は人の注目を引くにまたとない機会。必ず成功させないと。
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