11話
夢小説設定
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「なまえちゃん!!!」
名前を呼ばれたと同時に体に走る衝撃。眼前には肌色しか見えない。そして息も出来ない。
チラリと見えた桜色の髪からして、おそらく今私を窒息死に追い詰めているのは恋柱であり、一時期はお師様の継子として私と共に教えを乞うていた甘露寺蜜璃、その人だろう。
つーか別に誰でもいいんだよ。誰でもいいんだけど、殺される。マジで無理。息苦しいのにぎゅうぎゅうと首も絞められている。この人私を殺しに来たのかよ。便利なことに死なないけどさァ!
「…ぃ…つ、りさ……」
なんとか声を絞り出しながらガッツリとつ首に回された腕を弱々しくペチペチ叩く。
窒息しても蘇生するのはわかっていても苦しいことに変わりはないんだからな?
「きゃっ!ごめんなさい!」
こちらの抵抗に気付いた蜜璃さんが慌てて離れた。すぅー…はぁー…空気ってこんなに美味しかったんだね。
彼女、蜜璃さんは友達とは少し違うが、私の最も親しい女性と言ってもいい。私が鬼殺隊に入ってお互いの予定が合うことが少なくなってしまったものの、鬼という事実がバレる前までは週に一、二回くらいの頻度で文通は続いていた。
「で、どうしたんです?お師様ならお館様の所に挨拶に行ってて夕方まで帰らないと思いますが」
「あのね、今日はなまえちゃんに会いに来たの」
あー…やっぱそっか。いくら柱が多忙って言ってもお館様の屋敷にいた二ヶ月間、一度も訪ねては来なかったからそういうことなんだと諦めはつけてたんだけどなぁ。
「私の部屋に行きますか?
蜜璃さんが来るって知らなかったから大量の甘味は用意出来てないですけどね」
「今日はいいの!もう…!」
彼女が何を切り出すかわからない。こうやってふざけ合えるのも今だけかもしれない。そう考えると少し、寂しい。
「あれ?なまえちゃんの部屋はこっちでしょ?」
廊下を真っ直ぐ進んでいると蜜璃さんが以前の部屋の方向に続く分かれ道を指差す。
「ああ、今お師様の隣の部屋に移ったんですよ」
「え?え!?それって、キャー!なまえちゃんってば煉獄さんと恋仲になったの!?とっても素敵!!」
「いや違うけど」
「………えぇ、違うの?」
一人勝手に盛り上がっときながら勘違いを訂正するとすごい落胆したような顔をされた。
蜜璃さんがうるさいので経緯を話すと、そっかなるほど、と頷き納得したようだ。
なんで皆理由を聞いたら簡単に受け入れるかな。私未だにあの時のお師様の目がトラウマなんだけど。
「でもね、なまえちゃんに本当にいい人が出来たら一番は私に教えてね!」
「えぇ…蜜璃さんうるさくするだろうからなぁ…」
「!?」
「嘘ですよ。恋愛関係で誰かに相談するなら蜜璃さんしか思い付かないもん。
だから蜜璃さんも添い遂げる殿方だっけ?それが見つかったら教えてくださいね!助言とか出来るような経験は持ち合わせてないけど、蜜璃さんを幸せに出来る相手なのか見極めるから。もし蜜璃さんを傷付けるような輩だったらぶっ飛ばす!」
「〜〜〜、なまえちゃんが男の子だったら絶対に恋しちゃってた…」
「はいはい」
そんなくだらないことを話しているうちに自室に着いてしまった。まだイマイチ心の準備が出来てなかったけど仕方ないか。
ここまでの道のりで蜜璃さんは私が鬼であることに触れなかった。彼女が何を言うのかはわかっていない。消えない不安を抱えながらまだ慣れない自室の襖を閉めた。
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