37話
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「初めまして。煌帝国第九皇女、練紅胤と申します」
ほぅ、と思わず息を漏らし、私に見惚れる男共。最近なんか適当な扱いを受けたりしてたけど、私は絶世の美少女なのよ。当然の反応だわ。
「それで、どなたが私の婚約者様かしら?」
声を掛けると使節団の中から2人の青年が前へと出てくる。……ふたり?
「婚約者候補の1人であるルドルファス=マクミランと申します。父はレーム帝国では侯爵の爵位を賜っております」
「同じく婚約者候補のクルガー=リッチェスと申します。伯爵家嫡男です」
いや、いやいやいや。なんで2人もいんのよ。1人でも嫌だってのに2人って。
おい誰かあのこけし野郎呼んでこい。説明不足にも程があるぞ。
「…ようこそ煌帝国へ。長旅で疲れているでしょう。部屋を用意させたからゆっくり休むといいわぁ」
理解出来ない現状になんとか耐えて、形式上歓迎の意を示す。婚約者に対するたいどにしては素っ気ないかもしれないけど、当たり散らさなかっただけマシだと思うのよ。しかも候補ってなんなの。
「いえ私は紅胤姫に会う為だけに煌帝国まで来たので、よろしければ是非貴女と話す機会がいただきたく」
「僕もそれに同意致します」
帰れぇ…。誰も来いなんて一言も言ってないから。むしろ迷惑なのよ。
「…ではそのように。茶会の用意させるから少し失礼するわ」
拒否するわけにもいかず、笑みが引き攣ってしまいそうなのを何とか我慢して一度彼らから離れる。手にしていた扇がミシリと悲鳴を上げたのは仕方ないことだろう。
部屋の外に出て彼らの喧騒の声が聞こえない所まで歩くと、傍に仕えていた燕順が恐る恐る様子を窺ってくる。
「姫様、その、お加減は如何でしょうか…?」
「いいと、思うのぉ?」
力を入れすぎてついに扇が折れた。
「ひぃっ」
「お前は茶会の準備を進めなさい。私は、一度部屋に戻るわぁ。考えをまとめたいから」
そう言い捨てて燕順を置いて歩き出せば、燕青のみ追従する。ついでに天井裏にいたカーティスはレームの奴らの監視に行かせた。張遼だけで大丈夫だとは思うけど、一応ね。
それにしても面倒なことになったわ。兄様は何を考えて私に婚約させるつもりなのかしら。玉艶のババアが何も口出さないってのも余計不気味なのよねぇ。
でも今は自国の問題だけで厄介極まりないのにどうして他国との婚約なのよ…。
少し冷静に考えてみるか。相手がレームの貴族ってことは、つまり兄様はレームの力が欲しい、ということ?
レーム帝国にはマギに金属器、そしてファナリス。使えるカードがいくつも揃ってる。特にファナリスは1人2人なんかじゃない。
いずれ支配するとしても、レーム帝国に圧倒的に勝つには今はまだ少しばかり戦力不足は否めない。辛勝したところを他国に狙われるわけにいかない。
だから戦いを起こさないようにする同盟関係を必要としているということ…?婚姻は国家間の同盟にはもってこいだ。皇族と高い爵位の貴族との婚姻があれば同盟関係に異を唱える者は少ないだろう。
でも態々そんなことをしなくとも煌帝国から仕掛けなければレーム帝国がこちらに攻めてくる可能性は低い。なら婚約までして国交を結ぶ意味はない。
そう考えると休戦や同盟の為の婚約ってのはおかしいか。はぁ…ヒントがないってのは難しいわぁ。
一旦レーム帝国との戦争云々は抜きにして考え直すべきね。
私の意思も全く確認しないほどだから、兄様は早くその友好関係を築きたがっている。つまりレームの力が必要になる場面があるという可能性が高い。
マギは今は不在でもジュダルがいる。金属器はうちの国の所有数の方が多い。つまり欲しいのはファナリス?近々ファナリスを使えば有力な、私には知らされてない何かがあるってことかしら…。
うん、それが一番可能性高いかもしれないわね。
「姫様、準備が整いました」
ああ、もうか。今日に限ってはもっとゆっくりやったって良かったのに。仕方ない、絶対後から兄様を問い詰めてやるんだから。
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