23話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
雨が降っている。
ザアザアと雨音が響く。大きなその音は窓からの侵入者の物音すら隠した。
部屋の周辺は人払いをさせている。護衛も扉の外。この部屋には私と侵入者の2人だけだ。
「毎回言ってるけど正面から来なさいよ」
「なら護衛の奴ら退けろよ。アイツらがいたら部屋に入るまでに待たされんだろ」
「皇女だけでなく淑女の部屋にアポ無し来たらこちらの準備が出来るまで待ってるのが普通でしょうが」
「淑女ォ?……ハッ」
「死ね!!」
なんなの?私のこと馬鹿にでもしに来たの?このタイミングで?相変わらず空気が読めないにもほどがあるわよ。さっきの玉艶とのやり取りを見てなかったわけじゃないでしょうに。
この馬鹿――ジュダルはアル・サーメンの構成員のマギだ。私の行動はこの男からしたら敵対行為に他ならない。
「紅胤お前本気か?いくらお前が強くてもアル・サーメンが相手じゃ勝てねえぜ」
「…そうね。たとえ3割の構成員を奪っても戦力では完全に劣ってるわ。
だけど引けないの。私は"家族"と"煌帝国"の為にあるのだから、引いてしまっては私が私じゃなくなってしまう」
言葉にして改めて実感する。そうよ、私はもう後戻り出来ない。
私の発言で皇宮内に亀裂が入った。紅炎兄様を支持する者共よりは少数だけど、私がここ数年集めた臣下だって全体的に見たら決して少なくはない。今の状況ではいつ内乱が起こってもおかしくはないんだ。
「捨てればいいだろ。ンなもん全部」
「は…?なに、言ってるのよ」
「その大事なものを守る為に大事なものを殺すなら、今持ってる全部を捨てればいい」
「無理よ。私にはそんなこと出来ないわ」
いきなり何を言い出すのコイツは。そんな無責任なこと出来るわけないじゃない。私が皇宮に決定的な罅を作り出したんだから。
「お前の一番は家族なんだろ?何人もいる家族を全員守りきるなんざ無理だって自分でも気付いてんじゃねえか?
ならたった1人を選べばいい。そんで他の家族とこの国を捨てろよ」
「やめてよ。そんなこと言わないで。私は全部守るわ」
「無理だって」
「無理じゃない!!」
予想以上に大きな声が出た。図星だったからだ。
本当は知っている。全てを守りきることなんて出来ないことを。何かを見捨てなければならないことを。
1/2ページ