願いを叶えてみて
ジニの俺に「恋したい」宣言に頭を悩ます。
そもそも恋とはいったい何なのか、それを理解しているのかジニは。
ジニが懐いてくれているのは嬉しい、世話人として。
肝心の俺はというとジニの事を同居人としての域を出ておらず、それ以上でもそれ以下でもない。
元フェレットを恋愛の対象としてみることは出来ないだろう。
男同士以前に異種族なわけだし…。
あぁでも今は異種族でもないのか。
有耶無耶にこの話は無かった事にした方が良いのか、あるいははっきり無理なものは無理だと言いきった方がいいのか。
出勤中、仕事の休憩中、考えないようにしても意識は完全にそこに持っていかれる。
ジニにどう伝えよう。
傷つかないように、慎重に、ショックを最小限に抑える伝え方は。
気づけば初対面の時から今までのジニの表情が思い出される。
驚いた顔、笑った顔、すねた顔、他にも色々思い出される。
「断り辛い…」
断ったらこっちが罪悪感を感じてしまいそうで。
っていうか、今の今まで気に留めていなかったけれど案外今のジニとの生活を楽しんでいるのではないかと今更ながら気づいた。
「好きとかじゃなくて、楽しいっちゃ楽しいんだよな…」
って事を頭の中でグルグル考えながら帰宅した。
帰るとジニとベリーが全力のお迎えで玄関先で押し倒されそうになった。
「ヒョン、聞いて!ラップがちょっと上手くなったって褒められた!」
「おう、良かったじゃん」
こっちはお前が原因で悩んでいるのに脳天気なもんだ。
鞄をテーブルの上に置いてネクタイに手をかける。
その時チャイムが鳴ったからインターフォンを確認するとチャニヒョンがいた。
「ヒョン、明日じゃなかったですか?」
玄関を開けて迎え入れるとさっそくベリーがチャニヒョンに飛びついた。
「早く用が終わったんだ、預かってくれてありがとう」
そう言ってお土産をチャンビンに差し出した。
「良かったのに、でもいただきます」
ありがたく受け取る。
バンチャンがベリーを抱っこしてキスをするとベリーが活き活きとした表情をみせた。
「じゃ、また明日」
バンチャンが玄関を出て扉が閉まるとジニがチャンビンの元にやってくる。
「俺もキスしたいな」
伺うような表情にチャンビンが決意する。
「ジニや、その事で話がある」
そう言ってジニをソファーに座らせ、自分も座った。
「ジニの気持ちは受け止める。だけどジニと恋は出来ない、ごめん」
茶化すこと無く真摯な態度でジニに正直なところを話した。
ジニが黙って俺の話を聞いて、そしてその表情がゆっくりと悲しそうになる。
傷つけようと思っていないのに、やっぱり全くの無傷なんて無理で申し訳無い。
「…ジニの事は大事な弟としてみているんだ。ジニが気に入らない訳じゃなくて、むしろ一緒に過ごすのは楽しく思っているし、これからも仲良くやっていけたらと思ってる」
俺の中では初対面の時の変質者から弟に印象が変わっていったのだから、かなりの進歩だと思う。
でも恋愛の対象としてはみれなくて。
だからといってどちらかに原因があるものではないし、自然の成り行きなのだから仕方がない。
「…わかった」
「ジニ、ごめんな」
意外とすんなり受け入れてくれて安心した。
てっきり「どうして?」「でも」とか質問攻めにしてくるのかと思った。
話が終わるといつもの日常に戻って夕飯を共にし、今日の出来事を改めて話した。
仲が悪いわけではないけれど初めて口喧嘩をした友達が出来た事や、少しづつでも人との繋がりが出来て、レッスンにやりがいを感じ始めて本気で取り組もうと思った事。
ジニから話を聞いて前向きに頑張っているんだなって感心したし、こっちまで嬉しくなった。
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