願いを叶えてみて
愛されたら幸せになれるのか。
レッスンに集中しつつも、ふと考える。
あの犬、人から好かれて当然みたいな自己肯定高めだったな…とジニは感じた。
愛されるだけで、あんなに幸せそうになるものなのか。
「ジニ、飯行こ!」
「へ?俺?」
「お前以外誰がいるんや!」
とまぁ、事務所入り(仮)して初めて人にご飯に誘われて感動なんかしちゃったりして。
ヒョン以外とまともに口を利くなんてヘマをしないかドキドキしたけれど、細かい事は聞いてこないからなんとか乗り切る事ができた。
話の内容はほとんどわからなかったから、黙ってウンウンと頷いていたら休憩時間が終わって次のレッスンが始まった。
次のレッスンは歌。
その中でもラップというものに初めて挑戦した。
文字を読むのもやっとなので当然早口なんて出来なくて、殆ど人がしているのを見ているだけだった。
できてなければ、滑舌も悪いと先生から指摘されたから練習していかないと。
そう思ってやる気を出した途端、クラスの仲間から「大丈夫だよ、お前は顔でデビューできる」と言われて咄嗟のことで「そう…?」と返したんだけど、あれって褒められているようで馬鹿にされてるような?
顔が良いと褒められるのは好きだけど、なんか負の感情が入っていたような…
うん、そんな気がする。
「…ってな事があって…」
夜、家に帰ってからヒョンに話した。
「そりゃ、馬鹿にされてんな」
「やっぱり!」
ベリーを抱っこしながら核心に触れたチャンビンにさらに質問する。
「なんで!?ラップは出来てないのは確かだけど、初めてだったわけだし」
「ただの性格が悪いだけの奴だから。性格が良い人もいれば悪い人もいる。そんなん気にしてたら生きていけないぞ」
「…悔しい」
「結果出して見返しなー…あっベリー!」
チャンビンの顎をベロベロとなめ回すベリーを制しながら手の甲でヨダレを拭う。
「ヒョン…」
「なに?」
「それって楽しい?」
表情を歪めながらも楽しそうなヒョン。
そして同じく楽しそうなベリー…。
「楽しいっていうか、ヨダレがネトネトする」
ティッシュで顎の涎を拭きゴミ箱にペッと捨てたチャンビンがふとジニを見た。
「いいな…」
「え?」
唇を突き出してブーっと不満げな表情のままチャンビンに迫った。
「俺もやる」
ベリーを抱いたままのチャンビンが急な出来事に固まる。
ジニの両腕が肩に回されるとチャンビンの頬を舐めた。
「ふぁっ!?何やって…!?」
ニコっと笑ったジニ。
「ベリーの真似だよ」
ベリーみたいになりたい。
愛されて幸せになりたい。
その相手はヒョンがいいなって思ったんだ。
理由は1番俺を知る人だからって事だけど、たまにうんざり顔をしながらも最後まで面倒をみてくれるし、俺のやりたい事を尊重してくれるし、俺の存在を否定しないし。
なにより道に迷った時に迎えに来てくれてすごく安心できたし、なんかちょっとドキドキしたんだよね。
「あ…え?そりゃまぁ、困ってたら助けるだろ?」
思いのたけをヒョンに隠さず伝えたら、動揺しながらも俺を助けたのは当然の事だし気にするなと言った。
「俺、ヒョンに恋がしたい」
ヒョンって懐が深い。
多分みんなにそんな感じなんだろうってわかる。
表面上は穏やかな水面だけど、足を踏み入れたらズブズブにはまって抜け出せない沼みたいな人だと思う。
「恋!?」
ジニはわりと真面目な眼差しでチャンビンを見つめながらコクコクと頷いた。
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