君が好き番外〜10億マンション編〜(終了)



忙しい日常が一瞬一段落した時にふと思った。

俺が兵役に行ったらヒョンジナはどうなるんだろうと。
表立ってステイの前ではノーコメントだけど仕事の合間や打ち合わせには必ず議題にあがるテーマの兵役。
タイムリミットがあるから、それまでに達成したい目標などを掲げて仕事をしている。


凝視していたパソコンの画面から視線を外して斜め上を見上げる。

俺が兵役に行くとしたら、ヒョンジナは笑顔で見送ってくれるのかな。
それとも泣いちゃうのかな。
悪い癖でポーカーフェイスしちゃうのかな。

26歳を越えたあたりから兵役について結構考えがちになった。
わりと近い将来の事だから、現実味が増してくるっていうか。
みんなしっかり勤めて帰ってくるものだから、なんとか俺も勤め上げられるとは思う。
現状ハードなスケジュールの中、なんとか生き抜いている精神と体力は強みな気がする。

ただ、唯一の気がかりはヒョンジナ。
一途な性格だから浮気の心配はしていない。
ただ内向的でいじいじと胸の中で色んな思いを抱え込むんだろうな、という意味での心配はある。

付き合っていくうちにパターンは見えてきた。
我慢する、凄く我慢して、最終的に大爆発タイプだ。
静かに病んで、なんなら深酒をして酩酊状態になる(被害者ハンちゃん)。

それも可愛いところだが、1人にさせるのは不安でしかない。
自分に課せられた兵役自体より、そっちが心配。

「……」


そうだ、広い家探そう。

なんとなく思いついた。
広い面積が欲しい。
兵役に行くメンバーが増える度にグループ活動は減り、個人活動が増えていく。
おそらくヒョンジナはモデル業メインになりそうだし、なんなら自分の自由な時間を確保する可能性は大いにある。
今よりかなり時間に余裕ができるはずだ。
そうなるときっと、絵を描きたくなる。
俺がいないたくさんの時間を使って絵を描いたらいい。

時間がたっぷりかかるような絵。

「………」

よし、俺の絵を描いてもらおう。
大きな大きなキャンバスに特大の俺を描いて貰おう。 名案。
スンミンの誕生日に描きあげたわりと大きめの壺の絵の制作時間を考えると約5、6倍の大きさが良い。
となると飾るデカい壁が必要になる。
賃貸では中々良い物件はないから購入が現実的だな。
その日からネットで良い壁がありそうな物件を見て、たまに内覧してようやく見つけた理想の物件。

10億、は正直躊躇したが事務所からの距離、セキュリティ、住環境は抜群に良いから仕方が無い。 なにより大きな広い壁が気に入った。

俺がいない間、ヒョンジナは俺を描く。
俺は休暇中にその絵の途中経過を見に行く。
ヒョンジナが描いた絵が完成した頃にヒョンジナが兵役へ行く。
そうしたら俺はヒョンジナが描いた絵を眺めながら待つ。

ヒョンジナの為みたいな話たけど、実のところ俺自身も安心できる拠り所が欲しいんだよな。

1枚の絵で互いが繋がれるのなら、悪くはない投資だと思うんだ。

まだ絵の話をしていないからヒョンジナは10億物件に引いていたけど。
あとなんかわからんところでも引いていた。

俺なりに考えた結果なんだけど、良い結果になるかな。

まぁ、そんな事を考えていたら勝手にマスコミが『将来に向けての投資』と報道してしまいヒョンジナには事後報告になったんだけどさ。


「ヒョン」

「おん?」

部屋のドアがノックされてヒョンジンがひょこっと顔を覗かせた。

「今大丈夫?」

「なに?」

俺の返事を聞いて部屋に入ってきたヒョンジンは喜々とやってきて、にっこりと笑いベッドの縁に腰掛けた。

「あのマンションの半額の5億を折半しようかと思ったんだけど、調べたら贈与税とか色々すんごい事になるからやめる事にしたのよ」

「おう、やめとけ、やめとけ」

「だから遠慮なくヒョンのマンションに転がり込むね」

「どうぞー」

そんな報告無くてもそうしてもらうつもりだ。

「だから家具とか家電の買い替え担当するね。一緒に選ぼう」

「ほう」

中々良い折衷案。
だがしかし…

「家具家電は半分づつ出そう。代わりにヒョンジナには絵を描いて欲しいんだよ」

「絵?いいよ、何描く?」

「俺を描いて。すごーく大きいの。それを新居に飾りたいんだよね」

ヒョンジンに描いてほしいサイズ感や雰囲気も伝えると、すぐにOKが出た。

特注のキャンパスが必要になるとか、実際の部屋のサイズ感に合わせたいからマンションを見に行きたいとか、家具家電の事への興味が多少薄れたようだ。


新居に向けてのワクワクし始めたヒョンジナ。
この姿が見たかったんだよね。
好きな子が楽しそうにしているのは計り知れない価値があると思う。

「今度、一緒にマンションに遊びに行こ」

「メジャー持っていかないと」

今回の投資は間違って無かったと確信できた時間だった。



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