君が好き番外〜10億マンション編〜(終了)
「という事がありまして…」
多少狭いテントの中でハンとリノが語らっていた。
テントの設営場所は自宅のリビング。
四方の杭打ちはできないから多少ふわふわしているけれど、それはさほど気にならない。
部屋の明かりを消して、わざわざランタンで照らす。
「あー、なんか言ってた気するわ」
「なんだマンションの話、知ってたの」
「たまたま電話のやり取りしてるの聞いただけで、ちゃんとは聞いてないけど」
ホットコーヒーで暖を取りながらリノは目を閉じた。
「なんかさー、ヒョンジナも大概浮世離れしてる方だと思ってたけど、ビニヒョンもなかなかのねぇ…」
いくらなんでもあの金額は手元にあってもポンと出せないでしょ。
「実直なだけじゃないの?資産価値が上がればいいなーって希望的観測もあるだろうけどさ、好きな子を繋ぎ止めたいが為に大金はたくなんて潔くて清々しいと思うけど」
まぁ、俺だったら相談しながら購入を検討するけどね、とリノが言った。
「いやいや、相談なんかしないじゃん、あなた。このテント勝手に買ったよね?」
「テントだもん、だって」
「確かにテントでキャンプ、楽しそうだなーって言った記憶あるよ?絶対に言った記憶はある。でもなんで家の中に設営するの。自然豊かな場所でさぁ…サイズ感もわりと狭いし」
ハンがリノに文句を言ってやろうと少し横を向いただけで互いの肩が当たる。
窮屈なんだよ!このサイズ感! 思ってたんと、ちょっと違うのよ。
ハンが唇を少し尖らせる。
「ハニヤ、自然だろうが家の中だろうが、俺とテントにいる事が重要でしょ。俺は楽しいけどなー」
狭い秘密基地みたいな空間でワクワクする。
そう言ってハンの頬に軽くチュとキスをした。
「俺も楽しいけどさ」
突如のキスに少し動揺する。
「どこにいるかではなくて、誰といるかが重要なんだよ」
「ま、たしかに…そうだと思う」
「俺もさ、そろそろ兵役だけど…すぐにいじけてそっぽを向いてしまうハニを置いて行くのは心残りだな」
ハニが慌てて突き出した唇をへこました。
「俺がいない間、誰がハニのご機嫌取るのかな」
「う…」
「俺がいない間、辛い時は誰を頼るのかな」 「う…」
「俺がいない間、疲れた時に誰に甘えるのかな」
「うー…」
「俺がいない間、誰が泣いたハニを慰めるのな」
リノがハニを斜め下から覗き込んだ。
「ちょっと、やめてよ。想像しただけでなんかもう…」
今から泣いちゃいそう。
ハンが唇を真一文字に引き締める。
やばい、すでに泣きそう。
「…待ってる方も気持ち的に大変だけど、置いていく方もダメージデカいのよ」
心配で堪らないのに後ろ髪を引かれながらも行かなきゃならないんだから。
「だからさ、チャンビニの気持ちも分からなくもないっていうか。自分のテリトリー内の安心できる所にヒョンジナを置きたいっていう気持ちというか」
色々あったけど、結局はチャンビンはヒョンジンの事が大好きということで。
「だからハニも寂しくなったら、このテントで俺を感じてくれたら嬉しいと思うから、思い出をたくさん作ろう。家の中なら態々遠出しなくてもいつでもテントに行けるし」
リノヘラヘラしなが言った。
ハンがそんなリノを横からぎゅっとハグした。
「いつも言動がサイコパスなのに心はロマンチストなの結構好き」
「はは」
「いなくなるの想像したら寂しすぎたのでいっぱいぎゅーしてください」
「はいよー」
こっちはこっちで長期の留守番の為の思い出作りに精を出していたりする。
