君が好き番外〜10億マンション編〜(終了)
『StrayKids チャンビン、10億円のマンションを購入』
ソファーでごろごろしながら何気なくググっていたら見つけた記事。
え、ヒョン、マンション買ったんだ…
ヒョンジンは本人から聞かされる前に記事で知った事に多少のショックを覚えた。
だって同居人であり恋人でもある俺が一切知らないって、どゆこと!?
記事を読めば『将来への投資』らしく、それよりも10億のキャッシュで購入という実に羽振りの良さにガクブルした。
普通に考えて10億円出資なんて怖すぎる。
ヒョンは淡々とデカい買い物するもんなー、高級車とか。
かといって自分もデカい買い物をしていない訳では無いけれど、このマンションは規模がでかすぎる。
玄関の鍵が開く音が聞こえて振り向くとチャンビンがいつも通りのテンションで「ただいま」と言った。
「ヒョン、マンション買ったの本当?」
「あー…まぁ」
開口1番マンションの件をスマホの画面を見せながら聞いたヒョンジンに少し躊躇いながら軽く返事をした。
「いつの間に不動産行ってたの」
「合間合間に。もうそろそろ兵役も近くなってきたから、行ってる間は不動産に稼いで貰おうかな、と」
2年も働けないし。
「はー…そっか、そうだ」
忘れてはいけない韓国男性の義務。
どんな人気者も避けては通れない兵役がそろそろ見え始めているメンバーがいる。
そしてそれは自分も近いうちにやってくる。
「ヒョンジナが海外にアンバサダー業に行ってる間に色々見てたのよ」
「ずるい、俺にそんな時間無かった。いや、あったな…旅行行っちゃってたわ。今からでも遅くは無いか…」
投資を考え始めたヒョンジンの両肩をガシッと掴んだチャンビン。
ビクッと跳ねたヒョンジン。
「投資とかそんな事考えなくてもいいから。絵を描いといて」
「えーー……いやでも」
「金策は考えなくていいから。金策は俺がするからヒョンジナは芸術に生きてください」
「意外と俺、大丈夫よ?チャニヒョンの銀行口座開設に立ち合うくらいだし」
バンチャンに頼られるのはとても誇らしかった。
長く韓国に住んでいても母国は海外。
小難しい韓国語は苦手らしい。
「そういうことじゃなくて、芸術家は金を気にすると雑念入るから。ある程度自由人でいてください」
金の事は考えなくて良い。
そう頑なに止めるチャンビンに不納得な表情のヒョンジン。
「それに表向きには投資って体にしてあるけど、次に住む家っていうか…お前と」
「俺と?」
「…ほら、仕事は軌道に乗った、ある程度収入も確保できた、車も買った、恋人もできて同棲して指輪も贈ったら…次の段階としては……マイホームっていうか…」
「マイ…ホーム?投資目的じゃなくて?」
「投資の側面もあるけど、1番の目的はそこじゃないっていうか…お前と次住む持ち家っていうか…」
「引っ越すの?」
「それはそのうち気が向いた時でいいんだけどさ。…自分で選んだ家に好きな人と住むのは憧れるわけで」
「あー……それで10億も支払ったん?」
にしてもその金銭感覚は大丈夫なのか。
「景色も良いし、立地も良いし、部屋数も理想だし、警備も良いって聞くし。ヒョンジナと安心して暮らせる環境かなって思ったんだ」
「なるほど」
景色も立地も良いならそこそこの価格はするだろう。 警備も万全なら尚更のこと。
「俺の力で手に入れた家で一緒に住んで欲しい。俺名義の家でお前を愛でたいんだ」
「め、愛でる?」
俺は犬か猫か?
愛でるってどういう事だ。
がっつり働いて養われる気はゼロなんだが。
「俺の空間に囲いたいじゃん、ヒョンジナが俺の物って感じするし」
「ヒョン…思考が怖いんだけど」
ヒョンジンがごくりと息を飲む。
愛ゆえに、だよね。
愛ゆえにだろうけど狂気を感じます。
「兵役に行く前に確実にしたいんだよね!」
「う‥…うん」
嬉しい反面ちょっと怖い。
俺って自分で自分の愛が重いって自分で思ってた。
でも10億かけて住処まで準備するヒョンって…結構激重かも。
「…ていうヒョンのホラーな一面を垣間見てしまったっていうか」
営業先で宿泊するホテルの一室でハンとルームサービスをつまんでいたヒョンジン。
「10億円マンションの真実は怖ぇな」
ハンが炭酸を飲みながら身震いした。
かつてあんなにヒョンジンに放置プレイの数々をしてきた男がする事はよくわからん。
「嬉しいんよ、好きって気持ちは伝わってくるのは。ただ囲うとか愛でるっていうのがさ…」
なんていうかパトロンのオジサマ思考っていうかさ…
絵描きにはパトロンがお似合いってか?
相変わらずあの人は…恋愛不器用だな。
いつもその辺で相手を胸キュンさせるような気遣いと言動があるのに、何故それが恋愛になると発揮できないのか。
ハンは脳内で悪態をついた。
言い方に問題がある。
自分が地に足をついた場所と状態の中にヒョンジンを置いて、兵役に行っている間安心したいって事でしょ。
「大好きだから手放したくないですよ、って事でしょ」
変な意味は無いと思うから安心しな、とヒョンジンに言うと「やっぱ5億折半かな…」と律儀にやろうとしていた。
「やめとけ、税金が凄いことになるぞ。誕生日前にバレたサプライズだと思っときなよ。なかなか無いよー10億サプライズ」
「高級イヤリング無くした時よりプレッシャーだわ」 ヒョンジンがうーんと天井を仰いだ。
