願いを叶えてみて
スンミンに案内されたとある半地下アパートの一室の前。
なにも変わったところは無い。
「これで手を打って貰えますか?」
スンミンが先頭になり皆壁をすり抜け部屋に入る。
よくある半地下の部屋は湿っぽく外からの光は入りにくいようだった。
「わー、湿気が凄いな。これじゃ健康に悪そう…」
ハンが眉間に皺を寄せてあちらこちらを見回した。
「ここはある意味地獄といいますか…」
メインの部屋を通り抜け、1番奥の部屋の壁を通り抜ける。
「くさっ!」
ハンが思わず鼻をつまむ。
見渡すと数十匹の小動物や犬や猫が狭い檻の中に閉じ込められていた。
必要最低限の餌と水を用意されてはいるが不衛生で、どの生き物達もゲッソリと痩せて生気の無い目をしていた。
「なんだここは…」
リノも眉間に皺を寄せて部屋中を見渡すと女性1人が黙々と何かの作業をしていた。
勿論こちらに気付いてはいない。
「ここはあのフェレットが逃げ出した施設です」
「え?人間に変えちゃったあのフェレット?」
ハンが目を大きく見開いた。
「見てもわかるように、動物にとっては最悪の環境。生きる為だけの最低限のスペースと食事で死ぬまで繁殖させられ金儲けの道具の一生を終わらせる場所」
ヨンボクはごくりと息を飲んだ。
「ここから逃げ出したあのフェレットは運が良かった。ここにいたら間違いなく…」
スンミンが何かを言い出そうとした時、鈍く何かが折れる音がした。
音の方を見ると女性の手には首が折られて絶命した猫がぐったりしていた。
「ああなっていた」
女性は慣れた手つきでビニール袋に遺体を入れると何も無かったかのように作業に戻った。
繁殖が出来なくなった生き物は容赦なく始末してしまう。
まともには生きて出られない。
「あの女の願いを叶えないか」
スンミンがヨンボクに向き直り言った。
「でも…こんな……」
今までに見たことが無い凄惨な状況に言葉を失ったのはヨンボクだけでは無かった。
リノもある程度慣れているとはいえ、現場を目撃して腸が煮えくり返るのを止められなかった。
「ただ僕から言える事は、あの女性がいなくなれば数十匹の命が救えるのは間違いないでしょうね…」
ジョンインが部屋中の檻を眺めながら言った。
「やる、これは終わらせる…終わらせなきゃ…」
ヨンボクがようやく決意をして課題に取り組む事にしたようだった。
それを安堵の表情で見守るジョンイン。
スンミンがリノとハンに外に出るように促す。
そしてヨンボクが課題に取り組むのを見守った。
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