願いを叶えてみて



なんとか無事、事務所についた。
1人で遠出なんてどうなるかと思ったけどどうにかなるもんだな…。

「あ、おはよう、ジニ」

「おはようございます」

「今日からだよね、みんなの管理をしているキム・テジュンです。よろしく」

「よろしくお願いします」

オウム返しに答える。
昨日ヒョンからしっかり教えてもらった。
挨拶はしっかりと。
これさえできれば1週間はどうにかなる、と。

「ジニの練習スケジュールはこれ。確認しといて」

1枚の紙を渡されたら、文字がびっしり書かれていた。
文字は習ったとはいえ、あまりの文字数に冷や汗が流れる。
そして文字を学んだからといって語彙数が増えたわけではない。

「………」

暑くもないのに暑い。
やばい、何を書いてあるのかさっぱりわからない。
滝汗が流れそう…

「どした?」

「あの…えー…」

読めません。 言っていいのか、言っちゃいけないのか。

「あ、読めなかった?そういえば学校に通えないくらいの田舎の子だっけ」

「あっ、そうです、読めなくて…」

「表の見方たけど、この数字はコマ数ね。1コマ目がダンス、2コマ目が発生練習…」

全部説明して貰えて安心した。
焦った…

1コマ目はデジュンさんにスタジオまで連れて行ってもらって、2コマ目からはその辺りの人に聞いた。
とにかく全ての授業が初めてで緊張した。
なにより、こんなに人がいて誰とも話す事ができない雰囲気にビビった。
すでに仲が良いグループが出来上がっていてそこに入っていくのは勇気がいる。
興味がある事だから楽しかったけど、まわりと距離があるから孤独で都度頭にヒョンが浮かんではより孤独を感じた。
今はすぐそこにヒョンがいないんだよなーって。

1日目は全てをこなすのに必死すぎて朝からの記憶がもはや無い。
ヘトヘトになった状態で事務所を出たのは夕方16時。
他の人はまだ残っていたけど、自分は初日という事で早めに帰された。
多分俺の許容量が超えていたのを見抜かれていたんだと思う。

「また明日ね」

キム・テジュンさんが受付から手を降ってくれて俺も「ありがとうございました」と一礼して外に出た。



外に出たら火照った身体と頭が一気に冷却された気がした。
疲れた身体を引きずりバス停に向かう。
そして覚えた番号のバスに乗り揺られる。
体力をかなり消耗したけど、それ以上に気疲れした。
たくさんの人の中で活動したのは思った以上に気を使うし、わからない事だらけで精神すり減るし… でも身体を動かすのは楽しかったから、それは良かった。
なんて事を回想しながら意識はあっという間に薄れていった。


そして気がついたら知らない風景。
知らない街並みと知らない駅名。
すぐにパニックになった。
こんな時どうしたら良いのか聞きたいヒョンは隣にいない。
どうにかしなきゃと思った俺は凄く考えた。
今、自分に出来る事は何なのか考える。
一度降りて自宅に帰る為のバスを探して乗る。
誰かに帰り方を聞く。
震える指先で降車ボタンを押そうとしたら声をかけられた。

「こんばんは」

「…こんばんは」

「顔に悪い運気をまとっていますね。何かお困りの事でも?」

「!!」

今、凄く困ってる!
わかるの?この人凄い!

「その困り事はまわりの人のせいでみもあるし、自分のせいでもあるし…」

「えぇっ!」

人のせい…かはよくわからないけどバスの運転手に知らない所まで運ばれたわけで、寝てた自分のせいではあるのは確実だし…当たってる!

「ついてきてください」

「え、どこに?」

「助けてあげましょう」

助けてくれるのだったら…俺はついて行く事にした。
そしたら白い建物の中に連れて行かれてお祈りをした後、お金が必要らしいから500円を渡して帰ってきた。
なんたろう… よくわからないけど腑に落ちないこの感じ。
よく考えたら、あの人当たり前の事しか言ってなかったような…
現金を失った俺は、逆に冷静になれてスマホの存在を思い出した。
ヒョンに電話しよ。


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