願いを叶えてみて
「電話をかける時はここをタップ」
「ここ…?」
風呂上がりのリラックスタイムにスマホの使い方を教える。
明日から外に1人で出るのだから、何かあればチャンビンに連絡をしなくてはいけない。
チャンビン、事務所の電話番号を登録して電話だけはかけられるように練習する。
「そうそう、ほら、俺のとこに電話かかってきた」
チャンビンのスマホの着信画面を見せてからチャンビンが通話ボタンを押す。
「もしもし」
「へぁっ」
「画面に耳あててみ」
「うん…」
「もしもし、ジニや」
「……!」
ジニが目を見開いて「凄い…!ヒョンの声がヒョンからもスマホからも聞こえる…」とマジマジとスマホを見た。
「切るときはここ…ちなみに取る時はここ」
ひと通りのスマホの使い方を説明し終わる。
ジニが疲れた表情を見せるけれどチャンビンが「続きましては…」と財布を取りだした。
「えーー!まだ何かあるの!?」
「お金の種類と使い方な。明日飲物買ったりで使うかもしれないから」
カードを持たせる方が早いし楽だけど、物の価値がわかってないジニに持たせるのはまだ怖すぎて渡せない。
もう少し買い物に慣れてからな。
「人間って覚える事多すぎ…」
繁華街で買い物が終わってから自宅に帰り、時計の見方を教えたが、これが意外と時間がかかった。
何故1日に時計が2周するのか、何故1時間は60分なのか。
説明しても何のこっちゃの状態で、それでも一生懸命覚えていて最後は時計から何かすくって頭に振りかけていた。
そんなんで覚えられるか!
確かに通常は何日もかけて覚えていくものだから、今日1日で時計、スマホ、お金の勉強は詰め込み過ぎた感じはある。
「ヒョン、休憩しよー」
「仕方がないな」
「ありがとう」
ジニが正面から抱きついてきた。
元ペットだしこの距離感なんだろうなって。
ゴールデンレトリバーが飛びついてきたり、猫が身体を擦り寄せてきたり、そんな感じかなぁ。
「ヒョン、大好きよ」
「ありがとねー」
ジニの頭をポンポンして抱っこしたままスマホをいじった。
ジニも疲れているが、それに付き合ってる俺も疲れている。
漫画でも読んでひと息つきたい。
「ヒョン」
ジニが思い切り力を入れて押してきたからフローリングに2人して倒れ込んだ。
上からジニが俺を覗き込んだ。
「他の子、まだ飼うつもり?」
「ん?なんの話や」
なんの話か、唐突やな。
「こないだ言ってたじゃん。俺が居なくなったら何か飼うって」
「あぁー…」
そういえばそんな事言った気がする。
あの時はジニが元の飼い主の元に帰る事前提だったからな。
今はジニだけで手一杯。
「俺がいるんだから他には飼わないよね?」
「うん、予定ない」
「俺がいなくなったら飼ってもいいけど、俺の前でそういう話しないでね。次のパートナーの話をされるのは悲しすぎる」
「うん、わかった」
妻が生きているのに後妻の話をするようなものか?
だとしたら失礼だったかな。
「ヒョンは2回目の飼い主だけど1番好きだからね」
「ありかとー」
2回目… 深い意味はないけど、なんだか1人目の彼氏より2人目の俺の方がいいって言われているような複雑な気分。
