願いを叶えてみて



ジニが練習生(仮)。
なんだろう…明日から幼稚園に通う息子のようだ。

事務所からの帰り道、バスの定期を購入して自宅と事務所を何往復もした。
俺は仕事があるから自分で通える事が必須だ。
何往復かしているうちに1人で乗って降りる事がなんとかできるようになった。

「ヒョン、俺1人で乗れるかな…」

バスの座席に乗り、レッスンに通う為のカバンや衣類を買いに街に向かう。
1人で外に出歩くのもドキドキするけれど、バスに乗るのも心細いとジニが訴えてきた。
今日は練習で1人で乗り降りできたとはいえ、後から俺が見守っていた。
明日からは本当に1人だ。

「決まった番号のバスに乗る。時間の見方は追々教えるから今はバスが来るまでひたすら待って。乗らないと通えないし、俺会社あるからついていけないぞ」

「1人だと間違えそうで…」

「気持ちはわかるけど…出来ないなら家から出られないよ」

まだ時刻表が見れない、むしろ時計の見方から教えないといけないレベルだけどまた時間がある時に。
まだ暫く家から出さない方が良かったのかもしれないけど、家に置いといても持て余す。
かといって平日の日中は相手が出来ない。
だったら多少早くとも社会に溶け込ませた方が荒治療になるかなって。

事務所にはあらかじめ韓国の一般常識に弱い事を伝えてある。
複雑な環境で育った為、言葉や行動に多少おかしなところがあるけれど悪気はない事。
ソウルに来たばかりで人馴れしていないから無礼なところがあるかと思うけれど都度訂正していくので見捨てないでやって欲しい事。

脚色はしているけど…100%の嘘じゃないもの。
このくらい言わないと受け入れてくれないだろうから。

バスを降りて繁華街に出るとカバンやシューズ、タオルなど購入してスマホも手に入れた。
本日大出費、大丈夫か俺。
いや大丈夫、給料日まであと少し。

「帰ったらスマホの使い方教えるから」

「はーい」

世の中のお父さんとお母さんを尊敬した。
手のかかる人間相手にしながら働くなんて凄すぎる。
とりあえず保活(事務所入り)が1日で済んで安心した。

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