願いを叶えてみて



ジニの必死の抵抗により1日延命ということにした。
ただの脱走なら元の場所に返す、もしくは外に放り出すつもりだった。
でもあんな話を聞いたら…

俺の横でもぞもぞしているジニ。
初めての布団を楽しんでいる模様。
あいにく来客用の布団はないし横になれるほどのソファも無い。
1つの布団でやり過ごすしかない。

「ジニや」

「うん?」

「やっぱ発情期のメスに迫られると興奮すんの?」

動物のオスの性ってやつ。
人間には発情期は無いからどうなのかなって。

「興奮はする。だからといって受け入れるってわけではないかな」

2人で小さくなって布団にくるまりながら向かい合って話すのが旅行みたいで新鮮な気分。

「フェレットにも美人、不細工ってあんの?」

「無いかな。性格が全て」

「性格いい子いたんじゃないの」

「経験豊富なキツイ性格のお姉さんしかいなかった…」

ジニが言うには繁殖用に飼われたらしく、ブリーダーの所に飼われたその日からずっとケージ暮らしで、適齢期になれば毎日のように発情期のメスのケージに放り込まれて生きた心地がしなかったらしい。
交尾に至らない事を飼い主にはなじられ、あの生活には戻りたくはないし、そもそも役立たずのフェレットを探しているとは思えないとのことだった。

だからね、ここに置いて?

とじっと見てきたから保留にした。
だってこんな話を聞いて放り出したら俺、鬼畜じゃん?



それからまもなく眠りについたジニ。
ここに置くとて、面倒すぎやしないか?
大体戸籍がない、当然保険もない、一般的な教養もない。
問題だらけで関わっちゃいけない種類の人じゃん。

でもさぁ、追い出したとしたらジニは一体どうなるんだろう。
そんな事をぐるぐる考えていたら朝になった。



ジニは太陽と共に目覚めるらしく早朝から一睡もできなかった俺はジニと向かい合って話した。

「とりあえず、とりあえずな。いったん受け入れる事にする」

「ほんと!?」

吉報に嬉しそうに身体を跳ねさせたジニ。

「ただし、人として生きていくにはそれなりに学ぶ事が多い。最低限の事から学べる?」

例えば挨拶はきちんとするとか、風呂での体の洗い方とか、まずは自宅内での所作を身に着けて貰いたい。
世話が焼け過ぎるのは先々俺が大変だ。
慣れてきたら外にも出していい。

「わかった!頑張る!」

目を輝かせたジニはやる気に満ち溢れていたが俺はというと不安しかなかった。
右も左もわからないやつと同居する事、2人で住むには適していない部屋である事、それに伴い細々としたものも足りない事。
そしてそれを揃える為の出費や食費、日用品の買い足し。
俺の給料でジニを賄えるのか。
夢も何もあったものじゃないが、生活の不安に襲われた。

まだ人を養える程貰ってないんだよなー。

流れ星に言ったらいいのか。
神様に言ったらいいのか。

家族みたいなのが欲しいと願ったけれど、これはなんか違うんだよなー、と頭を抱えた。


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