願いを叶えてみて
獣害って知ってる?
仕事が終わって独り暮らしのアパートに帰り部屋の明かりをつけたらテーブルの上の食べかけのポテチの筒に獣が刺さっていたなんて事は?
「………」
縦に置かれた筒に尻と脚を出して逆さになりながらジタバタやってる生物に絶句する。
ポテチの筒に刺さってる…
これ、どうしよう…
逆さにハマってキュー!とかシャー!とか叫びながらジタバタしている生き物の筒は左右に揺れるものの縦に立ったまま。
ある意味バランス感覚が良いのか…
俺はどうしたら良いのかわからず黙ってスマホを取り出し電話をかけた。
「おつかれさまっす」
『チャンビナ、どした?飯の誘い?』
会社のバン・チャン先輩に助けを求めた。
「先輩、動物得意っすか?」
「………イタチ?」
「ネズミっすかね」
バン・チャン先輩が筒を遠巻きに筒を眺める。
第一発見の時から元気が無くなってきたのか足がピクピク痙攣している。
このまま力尽きてくれたら処理が簡単にできるのではないかという思いと、生きたまま外に逃がす方が良いのではないかという気持ちに挟まれる。
「コウモリなら捕まえた事あるんだけどなー」
「え…」
コウモリ?
あのコウモリを捕獲した事あんの?
「よっと」
バン・チャン先輩がポテチの筒を抑えて獣の両脚を握りスポーンと抜いた。
「ちょっ!危ないって!」
噛まれたり引っかかれたり、菌とか恐れないのこの人。
引き抜かれてバン・チャン先輩に逆さに釣られた獣はほぼ気絶状態でギリギリ意識を保っている感じだった。
「これ、どうしよう」
「先輩、抜いた後の事なにも考えて無かったんですか」
「うーん…」
前脚をバタつかせる獣の行き場が無く、緊急的にベランダに開放することにした。
韓国式のベランダはガラス窓を隔てて1つの部屋みたいな空間になっているから、植物を置いたり、キムチを保存したり、洗濯物を干したり…様々な用途がある。
今は捕獲した獣を隔離するのに使っているわけだが。
「これって、フェレットじゃない?」
バンチャンが窓際で左右にウロウロしている獣を指先で揶揄いながら言った。
「フェレット?」
真っ白な細長い体につぶらな瞳。
左目の下に黒子みたいに斑点がある。
「野生のイタチじゃなくて?」
「にしては毛並みがきれいすぎるし、逃げ出したペットなんじゃない?」
言われてみれば野性味がないかも。
厳しさが感じられない気がする。
こりゃ貼り紙でもして飼い主を探さなきゃな。
「こんなとこに来るということは、このアパートのどこかの部屋かな」
「掲示板にでも張り紙しときゃ、すぐに見つかるでしょ」
先輩もそう言ってるわけだし翌朝写真をプリントアウトして1階の掲示板に『フェレット 預かってます』と貼り付けておいた。
