君が好き



仕事を終えて自宅に帰りシャワーを済ませていつでも寝られるようにしてからリビングに向かった。
毎日会っていて、仕事も生活も一緒なのになんか緊張する。
横長のソファーに並んで体を傾けて向き合う。

「ごめん」

チャンビンがヒョンジンに頭を下げた。
謝罪から入ると思っていなかったヒョンジンは少し慌てた。

「ヒョン、顔あげて。急に謝られても」

「まずは旅行のドタキャンごめん。前日に俺の都合でキャンセルするなんて悪かった。ヒョンジナだったらって甘えてた」

「いや、ヒョンの気持ちもわかるし…友達と会いたいよな…」

そこまで言ってヒョンジンはふとリノから言われた事を思い出した。

『嫌な事は嫌と言いなさい!空気を読むな!』だっけな。
今は空気読むところじゃなくて、本音を話す時だよな。

「行っていいって言ったけど、本当は嫌だった。一緒に出掛けたかった」

「ごめん」

「でも俺も良くなかったよね。ちゃんと言えば良かったのに…そりゃ行くよね」

あの時俺が「行くな」と言えば行かなかったと思う。
許可を出したとはいえ、察してくれってどこかで期待していたかもしれない。

「だから俺の方こそ、拗ねてごめん」

ヒョンジンが頭を下げた。

「あと、旅行後の半休の日なんだけど、あの日はどうしても予約で取りに行かなきゃいけない物があって…キャンセルしたら次の日程調整が大変で優先させて貰った」

「予約入ってるなら仕方が無いよね…でもそんな事、全然言ってくれないしヒョンがどこで何をしているのか教えても貰えなかったから余計に悶々としたっていうか…」

「ごめん、言いたい気持ちはあったけどあの段階では言えなくて…この状況で今言うのも違うかなって思うんだけど今話すね」

「うん」

チャンビンが1度自室に戻って小さめのショップの紙袋を持って戻ってきた。

「あの日、これ取りに行ってて…」

チャンビンが袋から小箱を取り出して蓋を開けたらリングが2つ並んでいた。
もしかしてこれは…

「記念日に渡してサプライズしようと思って…言ったらサプライズにならないし」

「え…え?」

「郵送してもらう事もできたけど、現物は直に確認をしておきたいし…。そういうわけで言いたくても言えなかった」

「あ…あぁ…そっか…」

動揺して言葉が出なかった。
まさかペアリングとは…。
そういえばお揃いとか記念日とか考えてなかった…。

「これ見せてから言うっていうのも卑怯な感じがするけてど今言わせて」

「うん?」

「悪いところは直すから、別れないで下さい」

ソファーから降りて膝をついて深々と頭を下げたチャンビンに焦る。

なんでそうなる!?
別れるとか特に考えてないのに。

「ヒョン!なにしてんの!?顔あげて!」

慌ててソファーから降りてヒョンジンも膝をついてチャンビンに向かい合う。

「別れるとかまだ考えてなかったし、今日の話し合い次第ではって思ってた程度で…」

「話し合い次第では別れる可能性あるって事…?」

ビクッと肩を揺らしたチャンビンに「しまった!」と焦るヒョンジン。

「今のとこ大丈夫だから!」

「あの…今日事務所で話してた練習生とはどうなってる?随分楽しそうだったから心変わりしたんじゃないかと…」

「練習生?…あぁ、絵の具の子?そういう感じじゃないから。絵を描くのが趣味で話が弾んだだけで特にそういう感情はない」

「ほんとに?」

「うん。全然無い」

吃驚するくらい無い。
同じ趣味で話していて楽しいのに、そんな感情は湧き上がってこなかった。

「良かった…」

少しほっと息をついたチャンビン。
数日前からの負のフラグにヒョンジンと会話が弾む女子の出現。
今の今まで生き心地がしなかった。

「あの…そういう訳だからさ…指輪貰ってもいい?」

指輪を指さして尋ねたヒョンジンに嬉しくて声が弾んだ。

「貰ってくれる?」

安心して気持ちが緩んだチャンビンが少し涙目で震える声で言った。

「その指輪、欲しい」

良かった!
今日が別れの日になるかと覚悟してた!

チャンビンが指輪をヒョンジンの指に通す。

「ありがとう」

薬指におさまった指輪を目を輝かせながら見とれるヒョンジンもチャンビンの指に指輪をおさめた。


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