君が好き



「チャンビニヒョン、ちょっといい?」

ハンは事務所に出勤してレコーディング室に向かった。
レコーディング室に来てみるとチャンビンが機材を触っていたから挨拶をして、ついでに話した。

「はやいとこ、ヒョンジナに謝っといた方がいいよ」

「え?なにを」

チャンビンが機材から目を離して隣の椅子に座ったハンを見た。

「仕事が忙しいのはわかる。なかなか業界人以外と交流がなくなるっていうのもわかる。正直俺も交友関係業界以上に広がっていかないし、かつての友達とも会えてないわけだし」

「あー、オフの日の件か」

「そぅ、でもそれだけじゃないじゃん。半休の日もヒョンジナ1人だったわけだし…そういう事もあると思うよ?でもいくらなんでも近々すぎてヒョンジナが気の毒でさー」

「その事については反省してる。だからヒョンジナとは話したいと思ってる」

「チャンビニヒョンって、友達としてはいいけど恋人にするには鈍感というか…意外だよねー。友達やってる時は気が利くのにさ」

「言うね」

「言うよ。釣った魚にちゃんと餌やんないと、ほらこれ見て!」

ハンが首袖をずらして肩の湿布を見せつける。

「昨日ヒョンジナが酔って暴れて肩いっちゃったのよ。面倒ちゃんとみてくれない?」

「なんかゴメン…」

酔って道が見えたヒョンジナを止める時に肘が当たった部分が翌朝になって腫れだ。
その時はちょと痛いかなって思ったんだけど翌日になったらズキズキして肩が上がらない。
本人に悪気はないし、殴りかかったわけではなく当たり所が悪かったってだけだけどさ。
いずれにしても早めに問題は解決した方がいいし、楽しい恋愛をした方が精神衛生上いいと思うんだよね。

「せっかく縁あってなんだからさ…」

「うん、心配かけてごめんな」

昨夜ヒョンジナが暴れていたなど知らなかった俺は反省した。
暴れるほどに思い悩んでいたとは…。


休憩に外の空気が吸いたくてレコーディング室から出て廊下を歩く。
外気を吸って気分転換を図ろうと非常階段を目指して歩いていたら、遠くにヒョンジナともう1人を見つけた。

練習生の女子か…。

少し距離があるから会話は聞こえなかった。
変な雰囲気では無さそうだから、そのまま通り過ぎようとした。

女子から手渡された封筒。
封筒?もしかして告白されてる?
ヒョンジナ、受け取って…楽しそうに笑ってる?

え、どんな状況?

凄く会話が弾んでる…ように見える。
そういや最近、こんなに楽しそうに異性といる事なんて無かったよな。
そりゃ俺と付き合う前はちょこちょこそういう事はあったけど…

もしかして、本気で俺から気持ちが離れつつある?

そう思うとただ見ているだけでは堪らずヒョンジナに声をかけた。

「ヒョンジナ!」

「ヒョン」

「探してた!レコーディング室に戻るぞ」

楽しそうにしていたヒョンジナの手首を握って引っ張り早足で歩いた。

「え?え?俺、まだ時間じゃないんだけど」

吃驚したヒョンジナが俺に引きずられるままにレコーディング室入った。
レコーディング室ではハンが作業中で、勢いよく入ってきた2人に驚いて入口を振り返った。

「ハニや、レコーディング順、変更になった?」

「なってないけど…」

何事だとヒョンジンとチャンビンを交互に見た。

「ブース借りるけど、音拾うなよ」

「オッケー、変な事だけはするなよー」

ハンに許可を取ってチャンビンはヒョンジンを連れてブースに入った。
音が遮断されてシン…とした雰囲気に緊張する。

「今夜は絶対に予定入れるな。話がある」

「うん、俺も話したいと思ってたんだよね」

そんなつもりはないけれど、何となく空気が張り詰める。
チャンビンはチャンビンで、ヒョンジンはヒョンジンで思うところがあるから仕方の無い事だろう。

「あと好きな人ができてもよそ見はしないで。俺達付き合ってるんだからさ…気になる人がいたとしてもできれば…今は俺の事だけ考えて」

「……」

よそ見はしないで?

ヒョンジンの頭にはてと疑問に思って少しの間ができた。
チャンビンがそれをどう受け取ったのか割と必死な表情だったからとりあえず頷いておいた。

「ヒョンジナ…」

「とりあえず、出よっか」

ヒョンジンが少し気まずそうに言った。
ブースが防音に優れているとはいえ、ガラス張りで丸見えだから外が気になるらしい。

ふとガラスを見れば脳天気な天使が… じゃなくてフィリックスが満面の笑みで手を振っていた。

ブースから出るとご機嫌なフィリックスが楽しそうに話し出した。

「なになに?ブースで2人きりとか胸キュン展開?壁ドンとかしちゃう感じ?」

わくわくしながら口元を抑えてウキウキしているフィリックス。

「…少女漫画読み過ぎ」

呆れた目つきのハンがスマホを弄りながらため息をついた。


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