君が好き
ヒョンジンはバチンと目が覚めた。
「………」
なんだ、もう朝か…だるいな…と思って、一瞬思考が停止した。
いつの間に帰ったっけ?
どうやって帰ったっけ?
ハニとご飯を食べていたところまでは覚えている。
どうやって会計したっけ…
あれ、財布出してないよな…
タクシー呼んだ記憶も無い…
ん?ヒョン! ヒョンとの約束どうしたっけ。
帰ったら話があるって言ってて…話してないよな?
ちょっとまって、シーツこんな色だっけ?
これ俺のベッドじゃなくない!?
覚醒してガバッと上半身を起こすと知らない部屋だった。
「…!!」
どこだここ!
部屋を見回して隣に眠っているであろう男の背中を見て絶句する。
まさか、俺、知らない人とワンナイトしちゃった!?
いくら酔っていたとはいえ、これはまずい。
謝り倒して許して貰うしかないんじゃ…
ヒョンジンは自分の服やズボンを確認した。
乱れてない、脱げてない…
なにも無かった可能性もある!?
と思いたい…。
とりあえず、起こす?
起こそう。
状況がわからない。
「あのー…」
背中を指先でトントンと叩いて反応をみる。
眠りが深いのか微動だにしないからもう一度声をかけてみる。
「あのー…すいません…」
「んーー…」
ようやく反応があってモゾモゾしてからヒョンジンの方に向いた男。
「リノヒョン!なんだリノヒョンか!良かった、やらかしたかと思った!」
一気に安堵したヒョンジンが大袈裟なほどに胸を撫で降ろす。
知らない人だったらどうしようかと思った。
「俺とやっちまったかも、って可能性は考えないのか」
「ないっしょ!ハニがいるんだから。あー吃驚した、焦ったわ」
ヒョンジンがそそくさと身支度を始める。
昨日のヒョンとの約束を破ってしまった。
スマホを確認すると『リノヒョンの所にいるならゆっくりしといで』とメッセージがあった。
「チャンビナには連絡しといたし。酔い潰れてるからそのまま寝かせます、って」
「ありがとー」
リノヒョンが連絡してくれたお陰で心配はかけてなさそうだ。
床に落ちていた靴下を拾って履く。
1秒でも早く帰ってヒョンの話を聞かねば。
「ヒョンジナ、今日はここから出勤しな」
「昨日ヒョンと約束してたんだよね、だから早く帰らないといけなくて」
「そうじゃなくてさ、なんていうのかな」
「なに?」
「チャンビナはやめとけ。ありゃ駄目だ」
「なにが?」
「他人の恋愛に口出すのも趣味が悪いって思うけどさ、よく考えろ。自分を泣かす奴と一緒にいる意味あるか?」
「泣かす?」
「覚えてない?昨日泣きながら寝落ちしたろ」
「…お、覚えてない」
「チャンビナと離れたいんだろ。大体お前の優先順位低すぎだろ。友達優先するとか普通に無理だろ。夜の事もだけどチャンビナの自己中が酷い」
「…ドタキャンはしばらくぶりに会う友達だしあと7年か8年か忘れたけど会えなくなるらしいし、毎日会える俺より会っとくべきかなって思うところもあったし…夜の事はしないって決めたし…」
「お前馬鹿だろ。それは我慢してるだけだろ。恋愛なんて片方が我慢してる関係なんておかしいだろ、対等であれよ。…チャンビナに泣かされてる事に気付けよ」
「…そういう事言うのはやめろよ。辛くなるだろ」
「そうだよ、お前、今辛いんだよ」
「……」
「ヒョンは今、激オコですわ」
「なんでヒョンが怒るんよ」
「逆にヒョンジナが怒らんのは何故よ」
「嫌な気分はするけど、しょうがないかなって思うとこもあるし…」
リノが盛大なため息をついた。
そしてムクリと起き上がってパンツ1枚でアグラをかいた。
「そこに座れ」
「えぇ……」
半ば強制的にフローリングに座る事になった。
何故か自主的に正座をしてしまった事に後悔した。
「嫌な事は嫌って言いなさい!ドタキャンは明らかにチャンビナが悪い。付き合ってから放置されっぱなしやないか。ちょっとは怒れ!ハニと闘ったあの日を忘れたか」
「あ…はぁ……でもさぁ…わざわざ俺に相談してくるって事は相当行きたかったって事だろ?断れないじゃん」
「そういうところよ、そこは空気読むなよ。暴れ狂っても良いところや。数少ないオフの中の旅行ぞ?ちょっとそこまで買い物デートと違うだろ?うちのハニだったら黙ってないし、俺だって納得できんわ」
何故が朝から説教された。
昨日リノヒョンにウザ絡みしちゃったかなー。
記憶が無いからわかんないんだけど。
リノヒョンからのお説教を終えてやっと部屋から出るとハニが白湯入りのマグを持って歩いていた。
「おはよ、二日酔い大丈夫?」
「んー、昨日の俺、酷かった?」
ハンは少し間を置いて…
「見えない道が見えるくらいには」
とニッコリ笑いながらシャツの首袖をずらして湿布が塗布された肩を見せた。
これは、やらかしちまったな…。
