君が好き
「そんな寂しいの?」
不機嫌で呂律が少し怪しいヒョンジンが少し小さな声で話し出した。
「トトロのさぁ…」
「トトロがどした」
かみ合ってない会話に付き合うことにしたリノ。
「まっくろくろすけも3匹いてさ…」
「うん」
「真剣に悩んで買ったのよ」
「なにを?」
「エプロンよ、ヒョンがエプロンで誘惑したら良いって言ったのよー?あなたですよ、あ・な・た」
ヒョンジンがリノの胸にぐいぐい人差し指を押しつけながら言った。
「裸エプロンね、言ったね。それでどうしたの?」
「買うとこまでしたの、トトロの」
「トトロのエプロン買ったんだね」
「いつ使おうかなってトトロ見てたら、何してんのかなーって。俺、そこまでしてまでしなきゃいけない事?」
「そうだね、ごめんね。ヒョンジナのところがまさかそんな事になってるとは知らなかったから変なアドバイスしちゃったね」
「もういいのよ。そんでね、絵を描いたんよ」
「うん」
「そしたらどうでもいいやって思えたんだー、楽しくなっちゃって」
「そうなんだ」
「馬鹿みたいに思えてきて…馬鹿なんだけど。みんなして俺の事馬鹿って言うし、俺も俺が馬鹿だって知ってるんだよ」
自分の言葉にうんうん、と頷く。
「ヒョンジナは馬鹿じゃないよ、本物の馬鹿に馬鹿って言わないし」
「けっこうヒョンの事が好きでさ。ヒョンから付き合って欲しいって言われて悩んだけどさ、いい人だなーって…気が付いたら俺も好きになったけど…。ほらヒョンって良い奴じゃん。隣にいるだけで笑わしてくれるじゃん。凄く良い奴なはずのヒョンに避けられるって俺が原因じゃん」
今にも泣きそうになりながら一生懸命に話すヒョンジンを真剣な眼差しで見つめるリノ。
「…別に別れるとか言われてないし傍にいるだけでもいいかなって。そう思ったはずなのに1日に何度か寂しくなる…。俺、ヒョンに避けられるくらい……やっぱり俺じゃ満足できなかったんだよね?」
悲しそうな表情で俯いたと思うとフローリングにボタボタと大粒の涙をこぼした。
「辛かったね」
リノが正面からヒョンジンを抱きしめて背中をトントンと軽く叩きながら撫でる。
「それにさ、…こないだなんか旅行ドタキャンされて、すごい楽しみにしてたのに…ヒョンの友達の方が優先されるなんて…あとスマホばっか見てて一緒にいる意味あるって時もあって…って俺も?あれ?もう自分でもよくわかんなくて…俺、性格悪い?」
あいつ、色々やらかしてんなぁー… 夜の事情以外も問題だわ。
「相手にされないのわかってて傍にいるのが嫌だ…離れたい」
何かのたがが外れたのか、リノの肩が汚れるのも構わず泣き出したヒョンジンの背中をひたすら撫でる。
「わかった、今日はここにいていいから」
ヒョンジンが落ち着いて、そのまま寝落ちたのはどのくらい後か。
静かになったヒョンジンの様子を見て体勢を変えてリノは自室に連れていこうと担いで立ち上がった。
「ハニや、今日はイレギュラーでヒョンジナと寝る」
「うん、大丈夫?」
「なにもないから安心しとけ」
「いやそうじゃなくて」
シャワーから出て静かにリノとヒョンジンの様子を見守っていたハンに浮気を疑う気持は全く無い。
純粋にヒョンジンが心配になった。
「弟の面倒みるのは兄貴としては当然の事だからな。義務果たしてくるわ」
「素直に心配だから付き添います、って言えばいいのに」
行ってらっしゃいと手をヒラヒラと振ってリノとヒョンジンがリノの部屋に消えていくのを見送る。
なにぶん、ツンデレ気質だから人前で親切にする事にいちいち理由がいるらしい。
急に夜が暇になったハンはベッドに沈み込むとスマホで動画を見始める。
「今日は見るぞー!」
夜が長いぜ! とYouTubeを楽しんだそうだ。
