君が好き
人生で初めて男から告白された。
女子からは何度か告白された事はあるから、今までモテ人生だった事は否定しない。
好みの顔や気が合いそうな子とは付き合ったし、わりと早い段階であっちも卒業した。
そんな俺でもヒョンからの告白は吃驚した。
まったくの予想外の告白で頭が回らなかったし、パニックになって段々怖くなった。
漠然としすぎて説明ができないが、未知なる経験に心がついていかなかった。
しかもちょうどその日に新宿舎の部屋決めもあったし、部屋割りの内容に泡を吹いて倒れそうになった。
もうその日からヒョンとどう向き合えば良いのかわからずとにかく逃げた。
逃げて逃げて逃げているうちに、あっという間に2週間が経ちコンビニで時間を稼いだもののとうとうその時間はやってきた。
玄関前で事態に備えてパンチやキックの角度確認も念入りにした。
俺の1番の不安はヒョンに襲われないかということ。
俺も男だからそれなりに撃退できると思う。
けどトレーニングで隆々とした筋力を見ていると無理な気もしてきた。
俺はトレーニングはあまりしていない方だから自信が無くて部屋のドアの前で葛藤していたらヒョンが出てきて驚いた。
面倒見が良い同性の仲間から、俺に告白してきた好意を持っている男として意識してしまったら、2人きりの部屋に入ったら何がどうなるのか不安すぎてパニックになった。
玄関前でヒョンから中に入るよう説得されて拒否したけれど、永遠に続くんじゃないかと思うやり取りに諦めて中に入った。
玄関に入れてもヒョンが何もしないのは頭では理解しているけれど、気持ちがどうしても嫌だと足が動かなかった。
でも「告白は無かったことに。襲わない」と真剣に言われてやっと安心できた。
引越の荷物を部屋に運び入れ、収納に戻していく…。 なんかしっくりこないんだよな。
こっちがラーメン置き場であっちがお菓子置き場。夜食にこれは必須。
とするとここが服?
ちょ…待って、入らないんだけどそんな事ある?
服の量、引っ越す前から1枚だって変わらないのに何故!?
引き出しが締まらない!
「ヒョーン!ヒョーン!」
色々出してみて収集が収拾がつかなくなったからヒョンを招集した。
緊急的に服を床に置きっぱなしで寝てもいいかな、と思ったけど初日からそれもどうなのよ、と思ったから手伝って貰うことにした。
前は誰とは言わないがもっと散らかすメンバーがいたから便乗して気楽に床置きできてたんだけどね。
呼んでやってきたヒョンが俺の部屋の惨状を見て「なんで?」といった表情はしたが何も言わずに手伝ってくれた。
ヒョンが服を畳むと不思議だね。
収納にちゃんとスペースができて、なんなら余白までできるんだから。
「まだ服入るじゃん、買ってこようかなー」
「いや、やめとけ。自分で管理できないだろ。俺はお前のかあちゃんじゃないぞ」
「知ってる。俺のかあさん、俺に似て美人だし。あっ、俺がかあさんに似たんだっけ」
「………」
俺はかあさんみたいな美形と付き合って結婚するんだー。 将来的には可愛い子供が欲しいしね!
とそこまで言ってからヒョンを見たら… しまった!
凄く悲しそうな顔をしてズボンを畳んでた。
いくらなんでも無神経だった。
けれど謝るのも、それはそれで微妙かなと。
「これは?」
「それはベッドの脇に」
ダメ押しに使いかけの避妊具の箱が発掘された。
なにもこんな時に出て来なくても…。
ここに女を連れ込むな、と念押しをされた。
うーん、勿論ここに連れ込まないし、使うとしたらモーテル…。
モーテルも素人時代とは違ってハードル高いな…。
なんて考えていたら片付け完了。
「ありがとう、ヒョン!」
すっかり片づいて綺麗になった部屋に満足した俺はヒョンにお礼を伝えると、夜食にラーメンを食べることにした。
