君が好き
すっかり絵に夢中になった俺は夜な夜な描いていた。
なんだったらチャンビニヒョンと予定していた釜山旅行がキャンセルになったオフの日も1日中部屋に隠ってた。
忙しすぎてしばらく封印していた反動で楽しくて仕方が無くて少し寝不足を感じながらも達成感があって充実した毎日を送っている。
申し訳ないけれどあれからヒョンには自分の部屋に戻って寝て貰ってる。
深夜まで明かりが付いているわけだし、ヒョンに迷惑かけてしまうわけだし。
「最近ご機嫌っすねー」
「肌つや輝いてるんじゃないすかー」
MV撮影の合間にダブルマンネに言われて頬を撫でる。
MVの撮影メイクだからばっちり決まっているというのもあるけど…イマイチ実感はないけれど皆が言うならそうなんだろう。
好きな趣味を時間の限りしているから肌に良い影響があるのかも知れない。
「ヒョンジナー?」
チャンビニヒョンが声をかけてきた。
なんか心なしか元気が無いような気がする。
「ヒョン、疲れてる?」
「疲れてないけど。今夜ご飯行かない?」
「夜?ハニと先約があるから今度でもいい?」
美味しい居酒屋があるらしく予約も取って貰っているからドタキャンはできない。
「色々話したい事があるんだけど帰ってきてからでも時間取れる?」
「わかった。22時くらいにはなると思うけどいい?」
「了解」
ついでにチャンビ二ヒョンと色々話しているうちに次のシーン撮影の合図があったから仕事に戻ることにした。
「お疲れー」
「かんぱーい」
「ヒョンジナ、羽目を外しすぎんなよ。運べないぞ、俺」
「わかってる、個室だからちょっとくらいいいじゃん」
久々の外食での飲酒で嬉しくなってしまったヒョンジンを窘めながらメニューを開くハン。
結局、釜山旅行キャンセルの日の夕食はチャンビンにカップラーメンを買ってきてもらって食べたからちゃんとした外食は久々だった。
外食に誘われていたものの、運動量が少なかったせいか食欲がわかなかったっていうのがあった。
アルコールが得意でないハンはサイダーを注文して、それぞれが気になる料理をオーダーした。
「ハンちゃん、その節はごめん。リノヒョンから色々聞いてさぁ、拷問みたくなったみたいじゃん」
「あー、リノから聞いたわ。ヒョンジナがすぐにゲロったって。大丈夫、あの人普段からあんなんだし口実だと思うから気にしないで」
ハンいわくリノは定期的に色々プレイを取り込むらしく今更らしい。
ハンもそれを彼氏の努力と捉えているらしいが、生来のビビりの為うっかり泣く事があるそうだ。
「で無事解決した?」
「解決…あぁー、解決っちゃ解決かな」
「うん?」
「俺も大人になったってことよ」
「解決した…って事だよね?なんかスッキリした感じになってるからさ」
あの少しどんよりしたような、負のオーラが今では明るい雰囲気に変わっているから念願果たせたように見える。
「うん、もう大丈夫だよ」
「ヒョンジナー!暴れないで!」
「あっばれてませんよー!あっ、あそこに道が!行ってみよー!」
「道!酔うと出現する幻の道、見えた!?行くな行くな!」
繁華街の道端で騒がしいヒョンジンを肩に担ぎながら必死にタクシーまで歩く。
自分より図体がでかいヒョンジンを抱えて歩くのは苦労するし、ありもしない道に向かって走っていきそうになるのを抑えるのに苦労する。
前もこんな事があったけれど、あの時は皆がいたし苦労が分散されたけど今は1人で支えるのに必死だ。
お願いだから、これ以上騒がないで!
いくら変装してもバレる。
酒を飲んで騒いだなんて事務所に知れたら厳重注意と禁酒を言い渡される。
や、俺は飲まないからいいけど他メンに恨まれる!
特にマンネが怖い!
やっとの事でタクシーにヒョンジンを詰め込んでハンも乗り込む。
「○○までお願いします」
運転手にヒョンジンの自宅を告げて一休みをしようかと思ったら今度は「帰りたくない」と駄々を捏ね始めた。
せっかく良い気分になったのに現実に戻りたくないとわんわん泣き始めたから困り果てたハンは頭を抱えた。
「すみません、行き先を変更してもいいですか?」
そう言うと運転手は気の毒そうな顔をして変更に対応してくれた。
