君が好き




玄関のベルが鳴った。

通販で買った新作プロテインが届いたかな。

チャンビンはウキウキしながら荷物を受け取った。

「あれ?ヒョンジナのか」

宛先を見て自分のものではなかったから少しがっかりした。
みんな通販をするのは良くある事だから、そのまま受け取ってヒョンジンの部屋に運んだ。

「届いたよ」

自室でネイルをしていたヒョンジンは「そこに置いといて」とベッドの上に視線を送った。
元々絵を趣味にしていたが最近は爪に絵を描くのにもハマっているらしい。
ネイルの道具でも届いたかな、と深くは考えなかった。

俺のプロテインはいつ届くのだろう…
荷物の追跡をしたら近場に配達員が来ているらしいから、もうそろそろ届くはずなんだけど。
仕事に出る前に受け取っておきたい。

「ヒョンジナー、あと20分で出るからな。爪完成させろよー」

なけなしの朝の時間にお互いゆっくり好きな事をする。
ストレス発散は大事だからな。
いくら好きな仕事を生業にしているとはいえ、全てが好きな仕事ではいし、人間関係も常に順調なわけでもない。
売れても売れなくても、それぞれ別のプレッシャーもあるし趣味のひとつでも無いと精神的にしんどくなる。
俺は自らの筋肉を鍛えるのが好きだし、ヒョンジナは絵を描くのが好きだし。
そこにお互い介入しないのも結構気に入ってる。


そんな事を思っている時にスマホに着信があった。

「リノヒョン?」

『やー、チャンビナ』

「どうした?」

『裸エプロンは好きか?』

「朝からなに言ってんだ、ヒョン。狂ったんか?」

『好きか嫌いか、どっちよ。俺は結構いける』

「好きも嫌いもねぇです。なんの確認」

急なリノからの変態電話に困惑しながら自室に戻る。

『ヒョンジナがそのうち裸エプロンでやって来るから、そん時は黙って抱けよ』

「はぁ?ちょっと意味がわからない」

『ヒョンジナがお前とやりたいんだってさ。あれからやってないんだろ』

「あっ、えっ?ヒョンジナが言った?」

『誘っても断られるって言ってたけど』

「あー……のばか、そういう事を他に話すとか…」

『そろそろいい加減にしないと、浮気されるぞ』

「ヒョンジナに限ってそんなわけ無いでしょ。それにそれって絶対にしなきゃいけないものでもないし」

『お前どっからその余裕が来んのよ。下手くそが…ヒョンジナの為にも技術向上させろよ』

「下手くそは酷くない?」

『冗談抜きでチャンビナとできないなら他で発散するのもありなんじゃないかって提案したら、ちょっと間があったけど』

「なんて事言うんだよ!」

『俺が言わなくても時間の問題だろ。何回も断られたヒョンジナの気持ちとかプライド考えた事ある?可哀想だろ』

「あんな痛がってるのにさせるのも可哀想だろ。絶対に必要な行為ではないし平和に過ごせたらそれで良いかなって俺は思ったんだ」

『ヒョンジナが望んでるのに?』

「それはまぁ…」

『ヒョンジナが可哀想って言いながら、自分が自信ないだけじゃないの?』

図星を指されたような、そんな気がした。
ヒョンジナが痛がったのも、泣いたのも紛れもない事実で、そんな風になったのは自分の技術の足りなさである事に蓋をしたかったのかも。

リノヒョンとの電話を終えて出勤の準備をしてヒョンジナに声をかける。

「そろそろ出るよ」

「うん」

斜めがけカバンを提げてズボンのポケットに手を突っこんで待機していたヒョンジン。

特になにか変わった様子も無さそうだけれども。

何度も拒否するのは…可哀想。
リノの言葉を思い出す。
そりゃそうだよな。


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