君が好き




「ハニやー」

「ん?」

仕事を終えて自室のベッドに転がってスマホを弄っていたらリノが部屋に入ってきて椅子に座った。

「会議前にヒョンジナとなに話してたの?」

「あぁー…」

相変わらずめざといなぁ。
あ、いい意味で。

そこにいないはずなのに色々把握されるんだよね。
盗聴器でも仕掛けられてるんかな、俺。

「ちょっとした世間話だよ」

内容が内容なだけにリノにも言い出せない。

「どんな?俺に知られちゃいけない話?」

「そんなこともないけど、出来れば言いたくない相談話」

やっぱりさ、相談って安易に人に話しちゃいけないと思うし…

でもさ、こういう時のリノは静かに真顔になるか笑ってるかなんだけど目の奥と放つオーラが怖いんだよね。
だから俺は必死にスマホを凝視して気づかないふりをしている。

目を合わせないように目の端にうつるリノを観察したら今日は笑ってるバージョンだった。

こっわ!
真顔の一段階前。

リノは凄く優しくて気遣いもできて、見た目もイケメンで最高なんだけど束縛が強すぎるのが癖なんだよな。
俺の事を何でも知っときたいらしく、納得いくまで追求してくる。

ヒョンジナはヒョンジナの悩みがあるけど、俺は俺でこれが悩みだよ。

「ふぅん…相談ね」

「そ、だからリノでも話せない。守秘義務ってあるじゃん」

最もな理由を言いながらリノに背を向けた。

「その相談は解決した?」

「まだだけど」

「またその相談にのるの?」

「まぁ、相談されれば?」

「熱心だね。そのくらい俺にも熱心になってくれれば嬉しいんだけど」

「は?」

リノの聞き捨てならない言葉に思わずリノに向き直ってしまった。
にっこり顔のリノに一切の感情の揺れが無いようでハンは少しびくついた。

「棘がある言い方だけど」

「棘があるように聞こえたならごめんね」

「俺がいつリノに熱心じゃなかった?」

「俺のお願いを聞かないくせに、他の相談に乗ってる暇があるってとこかな」

リノのお願い?
なんかあったっけ?

浮気厳禁。
浮気するなら事前報告。
気になる人が出来た時点で報告。
誰かと出かける時は報告。
泊まりも事前報告じゃないと許可しない。

どれも守ってるはず…

「ヒョンジナにはやましい気持ちはないよ」

「うん、知ってる。ヒョンジナにはチャンビナがいるしあり得ないよね?人として」

ダブルで浮気なんて出来ないよね?
なんて目で語ってくる。
もちろんそんなつもりは無い。
じゃあリノは何に引っかかっているんだろう。

「…リノのお願いって…なんだっけ?」

わからないものはわからないから、恐る恐る聞いた。
するとリノはにっこり笑顔の姿勢を崩さずに淡々と話し出した。

「玄関に出して良い靴の数は?リビングのテーブルの上は常に更地、物を放置しないで。使った食器は自分で洗おうね、たまにヒョンがしてあげてるけど最近非道くない?バスルームの掃除も当番守ってほしいな。忙しいのはお互い様なんだしね?」

「あっ、う、うん、ご、ごめん」

俺が完全に悪うございました。
確かに疲れたを言い訳に色々やらなさすぎた。

「人の相談に乗る暇があれば、ヒョンのお願いを優先して欲しいわけよ」

「ごめん!」

俺はベッドから飛び起きて部屋を出て玄関に向かった。
俺の靴はすでにシューズボックスに片付けられたらしく、玄関には何も置かれてなかった。
続いてリビングのテーブルに置いていた飲みかけのグラスは撤去済みだし、洗い終わったグラスは籠に置いてあった。

「おいぃぃ…」

シャワー下の排水溝もピッカピカだし何もすること無い。

「全部やっといたよ」

排水溝を覗くハンの後ろからリノがニコニコしながら見下ろす。

ハニを待つより自分でした方が早いしね。

って圧を感じる。

「ご、ごめん…ね?えへ…」

笑って許して貰うしかないよね?

「笑って済むなら警察いらんのや」

「きゃあぁぁぁ!!」

リノがハンを浴室から引っ張り出すとそのままリビングを通りリノの部屋に引きずり込もうとする。

「怖い怖い!ちょっと待って!」

「わかってるよね?」

「ひえぇぇぇ!!」

その後ハンがどうなったかは…本人達の知るところ。


32/45ページ
スキ