君が好き



行きつけのカフェ、になるかは未定だけど気に入った。
席と席の間が離れていてゆっくりできるし開放的な気分になれた。
デートっぽいデートができる店って感じ。

隣のヒョンをチラッと見るとアイスアメリカーノを飲みながらスマホをいじっている。
俺も含め付き合う前からこんな感じだったけど、恋人とこんな所にいる時にそれはないんじゃないかと思う。
そりゃ付き合って半年経ったっていうならまだわかるんだけどさ…。

「ヒョン」

「ん?」

呼びかけると流石にスマホから視線を外して俺を見てくれた。

「3週間後に午前中が半休じゃん。どっか出かけない?そこ逃したらしばらく休み無いじゃん」

「あー……ごめん、その日は予定入れちゃってて無理かな。ほんとごめん」

「そっか…しょうがないね」

どんな予定が入っているのかあえては聞かない。
格好悪い気がして…なんとなく聞けなかった。
3週間後の唯一の半日オフに出掛ける事が出来ないとなると暫くはデートっぽい事が出来ないってことか。
なんかちょっとショック。
大事な用事かもしれないけど、俺の事を優先してくれないんだ。
モヤる…

モヤモヤしながらも、ようやくヒョンの意識が俺に向いたらしくスマホをテーブルに置いて楽しく会話できた。
さっき多少のショックを受けていたからか余計にヒョンと話すのが嬉しくて、ずーっとどうでも良い内容を長々と話していたと思う。
だって次はいつ行けるかわからないデート。
できるだけ長くここに留まりたい。
そんな願いも虚しく閉店の時間になって店を出ることになって寂しくなった。


翌日からはいつも通り忙しくて1日に何回ステージをこなしたのだろうか、SNS用の撮影をしただろうか。
1週間にどれだけ飛行機に乗っただろうか。
とにかく忙しくて白目をむきそうだった。
みんな疲れ果ててカメラが回らない所では気絶したように寝落ちしたり、虚ろな目で甘い物を食べて心を癒していた。

この時ばかりはスンミナからの健康パトロールは免除されていた。
パトロールをする気力も無かったのだと思う。


そんな中、事務所から朗報があった。
あと10日活動をしたら丸1日のオフをプレゼントしてもらえるとのことで、この感動的な知らせにみんな疲れ果てていたはずなのに色めきだった。
単純に入っていた仕事が飛んでリスケになっただけだけど、オフは嬉しい。
今後、どこかの日程に組み込まれるだけなんだけどね…

1日寝倒すとか、友達に会いに行くとかそれぞれが計画を立て始めた。

俺は… チラッとチャンビニヒョンを見る。
みんなと同じく嬉しそうにしてチャニヒョンと話していた。

たまには実家に顔を出すか、それともチャンビニヒョンをデートに誘うか。

その2択だったんだけど、やっぱりチャンビニヒョンと出掛けたいなって。
さすがに今出来たばかりのオフに予定は入っていないはずだから大丈夫なはず。

「ヒョーン」

呼ぶとチャニヒョンと話していたチャンビニヒョンの目線が俺に向いた。

「オフの日、どっか行こう」

「いいよ、どこ行こう」

チャンビニヒョンの快諾に嬉しくてチャニヒョンを押しのけてヒョンの横に滑り込んで座った。
オフは1日だからそんなに遠い所には行けない。
でも釜山なら往復5・6時間で移動できる。

「釜山は?海は?」

「いいじゃん。海行こう、なに食べようかなー、イエナー!釜山のお勧めの店はー?」

ヒョンが大声で叫ぶように話すから耳を塞いだ。
ほんと突然にデカい声を出すからびっくりする。

「ヒョン、地元を離れて何年経ってると思ってんの。浦島なんですわ、今。もう全然わかんない。タコと魚介食べときゃ間違いないでしょ。あー、あとトッポギはソウルより辛いし、ホットクもソウルと違うかな」

そりゃそうか、もうソウル生活が長いもんな。
でも釜山に行けば何を食べたら良いのかわかったから楽しみだな。


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