君が好き



こんなに後を引くなんて…
かなーり、痛かったよ?
痛いけど、その瞬間だけで終われば痛みから解放されると思ってた。
でもそんなことは全然なくて数時間経過した今、スタジオの端っこで悶絶している。
腰の骨がズレてんじゃないかってくらいズキズキするし、ヒョンが入ってきた所もジンジンする。

あの時のヒョン、余裕がある男って感じだったのに、入ってきた途端豹変したもんな…
普段優しいし、落ち着いているのに最後は別人格だった。

思い出してほんのり赤くなる。 最初から最後まで痛みとの闘いだったけれど、時折見ていたヒョンの顔がセクシーだった。
自分に余裕があればずっと見ていられたんだけど泣いたり暴れたりで忙しかったもので…

「ヒョンジナー、大丈夫?」

「ヒョン」

心配して様子を見に来てくれたヒョンに気にせず練習に参加するよう促した。
心配してくれるのはありがたいけど、静かにしていたい。
少しの振動が響く…


とうとう最後まで練習に参加できずチャンビンに支えられながらゆっくりと立ち上がった。

どうしよう、今日までが納期なのに完成出来てない。
後先考えてからすれば良かった…

「おい」

「リ、リノ…ヒョン!」

マンネ組が捌けた後、スタジオから出ようとした時扉の前に腕を組みながら仁王立ちのリノ。

最近叱られた事とダンスの納期が間に合わなかった事もあり、ヒョンジンは身構えた。

やばい、また叱られる!

全部自分に非があるから唯々受け入れるしかないのだけど。

「湿布、塗り薬」

腕組みをしていたリノの左手にぶら下がっていたビニール袋をヒョンジンに差し出した。

「ありがとう、助かる」

代わりにチャンビンがリノから受け取った。

「ありがとう、ヒョン」

少し面食らったヒョンジンがリノに礼をするとリノが「はぁ…」とため息をついた。

「怒られると思ったろ」

「え…いや、まぁ…」

図星を指されてモゴモゴしているヒョンジン。

「俺を意地悪キャラだと思ってんのか」

「面倒見の良いお兄様だと思ってます」

ヒョンジンの返答に本当かよ、と言いたげなリノがヒョンジンの前に進み出ると正面からヒョンジンに抱き付き、両手でヒョンジンの尻をガバッと掴んだ。

「いっだああぁぁぁーー!!」

「俺の尻が!」

そしてチャンビンの絶叫。

「お前の尻じゃないだろ」

尻への衝撃で悲鳴を上げたヒョンジンがただでさえ痛いのに何をするんだと、リノを睨みつける。
ヒョンジンの尻を掴まれて怒るチャンビンとニッコリ笑顔のリノが隣で言い争いをしている。

俺の尻をヒョン達が「俺の、俺の」と所有権を争っている。
どんな状況だよ……

「元々俺はヒョンジナの尻を揉んでた」

「だとしても、もう俺と付き合ってるんだよ」

「ならちゃんと管理しないと。ヒョンジナの尻、壊さないでくれる?ちゃんとやる前にマッサージしろよ」

「仕方ないでしょ、思ったより…って…」


『ヒョンジナの尻、壊さないでくれる?ちゃんとやる前にマッサージ…』


ふと気になるフレーズにチャンビンは動きを止め、ヒョンジンは目を見開く。

ちょっと待て。

「リノヒョン…」

チャンビンはもしかして…と恐る恐る聞いた。

「やったんだろ?おめでとう」

ハッハッハと笑いながら拍手をするリノから目線を逸らしてバンチャンを探して「バラした!?」と言わんばかりの視線を送るチャンビン。
遠くの方で手と首をぶんぶんと振りながら「バラしてない!」と否定しているバンチャン。

ならなぜ!

再び視線をリノに戻す。

「チャニヒョンの曖昧な態度の理由がわからなかったし、聞いてもはぐらかすし。なんとなーく、総合判断したらそういう事かなって。言えないよな、やりました、なんて」

「くっ、リノヒョン、無駄に洞察力発揮しないでよ」

「生娘じゃあるまいし、恥ずかしがる必要もないだろ。な、ヒョンジナ」

「恥ずかしいっすわ…今すぐここから逃げたいくらいで」

腰と尻さえ無事ならとっくにこの場から去ってる。

「その場のムードもあったんだろうし、後先考えずに励んだ事は今更言ってもしょうがないから、早く体を治してくれや」

リノの目の奥が笑っていない満面の笑みでチャンビンとヒョンジンを交互を見る。

「は、はい……」

ガタブル震えているヒョンジン。
自宅に帰ってから「明日から仕事に行けないー!恥ずかしすぎる!」と散々駄々を捏ね始めたヒョンジンを宥めるのに疲れ果てたチャンビンだった。


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