君が好き



それから仕事中はヒョンジナとは仲良しアピールをした。…がやつが俺を避ける避ける。


「ヒョンは~」なんてカメラの前では何事も無かったかのように話すのに、カメラが止まった瞬間そそくさと逃げていってしまう。

俺がめげずに話しかけると「そうっすね!」と何に同意してるのか全く会話にならずぴゅーっと人気がある場所に去って行く。

…さすがに俺も傷つくぞ。

そんな感じであっと言う間に2週間が過ぎ、新宿舎への引越しの日がやってきた。

引越しは仕事中に業者が荷物をほぼ運び入れてくれていてあとは俺達が入居すれば完了なだけだ。

コンビニに用があるヒョンジナより先に俺は部屋に入り内部を見回した。
白を基調とした部屋に無造作に荷物が積まれている。
収納はある程度配置してくれているから業者に開けられたくない段ボールだけを開けていかなくてはいけない。

「今日からこの部屋か…ヒョンジナ散らかしそうだから収納が簡単な方がいいか…」

ぶつぶつ独り言をしつつ荷物を片していく。 男の荷物なんてほぼ無いようなものだからあっという間に終わった。

そのままのヒョンジナの荷物を見て時計を確認する。
近所のコンビニに行くと言ってからもう40分。…遅くないか?なにかあったかな?

俺は様子を見に靴を履いて玄関のドアを開けた。

「おおっ…なんだ今見に行こうかと思ってて。あとお前の荷物だけだぞ」

ドアを開けるとすぐそこにペットボトルを持ったままのヒョンジナが立っていた。
俺はドアを手で支えたまま靴を脱ぎ中に入ろうとしたがヒョンジナが微動だにしない。

「どした?」

「あー…スタジオ行ってこよっかな。まだ練習し足りないし」

先に寝ててヒョン、と去ろうとしたヒョンジナの腕を掴んだ。

「先に荷物片付けてからにしたら。あんまり遅くなると荷解きが面倒になるぞ」

怯えた顔してビクッと体を震わせたヒョンジナ。
俺と目を合わせないよう斜め下を凝縮していたヒョンジナの目から涙がポロリと落ちた。 急な涙に狼狽えた。

「え?どうした?痛かった?」

俺は慌てて掴んだ手を離した。
そんなに強く握ったつもりはないけど相手からすると痛いと感じる事もある。

「ヒョンと同じ部屋は嫌だ」

「……いったん中入ろ。何もしないから」

玄関先で話す内容では無いし誰かに聞かれても良くない話だ。

間違いなく俺が告白してからギクシャクしている件だ。
嫌がって拒否するヒョンジナを何度か手招きして何度目かの「本当に何もしないから」でようやく聞き入れて玄関の中には入ってくれた。

あくまでも玄関で靴を履いたまま立ち尽くしている。

いつでも外に逃げられるようにってか。

俺はヒョンジナと距離を置いてどかりと床に座った。

「あのさ…あの告白が嫌なら無かった事にするから。そんなに構えるなよ」

そんなに嫌ならはっきり断ってくれたらいいのに。

確かに最初に詰めてしまったのは悪かった。 でも2週間逃げ回ったあげく、同居拒否とは穏やかじゃ無いしマネージャーから言い渡されたけれど、みんなで話し合った課程も経ての事だ。

嫌なら嫌だと意思表示してれば違う部屋割りになった可能性があるはずだ。

「……こわくて。今まで通りにしたら気が付いたら付き合ってる感じになったり。同じ部屋だと襲われたらどうしようかと…」

ボソボソと話し出したヒョンジナが最後の方でくしゃりと顔を歪めて再び泣きそうになった。

確かに、身の危険を感じるってのもわかる。

「わかった。まず告白は無かった。そして俺はお前を襲わない。それで解決か?」

いくらなんでも節操無しに襲いやしない。
獣じゃあるまいし手篭めにするわけがない。

「だから早く自分の部屋で荷解きしてくんない?」

邪魔なんで。

そう言われるとヒョンジナは靴を脱いで段ボールをひょいと担いで何往復かして運び入れた。
襲われないとわかると単純なやつだな。

俺もリビングの整理をするためにのっそりと立ち上がった。
必要最低限の食器や小物を備え付けの棚にしまっていく。
こういうのは初日に済ませてしまわないと一生かたづかない気がする。


「ヒョーン、ヒョーン」

ヒョンジナの部屋から声がする。

「なに」

呼ばれて行ってみるとヒョンジナがとにかく段ボールから荷物を出した状態で「どこに何を入れたらいいと思う?」だと。

「前に入れてた通りに入れたら入るんじゃないの」

「そりゃそうなんだけど収納の配置が変わるとなんか違う気がして…」

「……」

よく見ると業者が衣類が入ったままの収納ケースを置いてくれたはずだが、そこからも衣類が飛び出ていた。

これは時間がかかるやつ…。

なんだかんだ付き合って今22:00。

「パンツ何段目よ」

「2段目。バスタオルの下の段」

「はいはい」

事実上振られたようなもののヒョンジナのパンツの収納しながらヒョンジナを見ると何事も無かったかのように服を畳んでいた。なんか汚いけど。

さっきまで泣くほど嫌がっていたのに。
切り替えが早いというか、単純というか。

「そういやさ、俺と同室は嫌だって言えば他の部屋に行けただろ?言えば良かったのに」

「んーだって、嫌な理由を言わないといけなくなるから。ヒョンと気まずい理由を言ってヒョンがみんなから避けられてしまったら嫌だなぁって思ったから。それにどの人とがいいって希望も無かったし」

俺の事、気遣ったんだ。
ほんといいやつなんだよな。
見た目が派手っていうか、迫力があるから意外なんだけど。

「ヒョンジナー、これはどこ」

「あっ、それはベッド脇に」

「お願いだから連れ込むなよ」

「ん?まぁね。ヒョンも使ってくれてもいいよ」

下着類の中に混ざっていた避妊具は今回からベッド横の収納に移動らしい。
ひと部屋貰えたから、もう隠す必要もなくなったしな。

ヒョンジナと付き合えない事がわかった夜、何故かヒョンジナのパンツや避妊具を収納して…なんだか切なくなってちょっと悲しくなった。


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