君が好き



トイレから出るとすぐそこにリノヒョンが腕組みをして壁にもたれかかっていた。

「あ、ヒョン」

リノは体はそのままに眼球だけを動かしてヒョンジンを睨んだ。

「ちょっとこっち来い」

リノに手首を掴まれて引っ張られる。


戻ると思われた楽屋を過ぎ、そのまま地下駐車場に行って車に入るよう促される。

「ヒョン、まだ着替え終わってないんだけど」

「俺もや」

まだチマのリノは車のドアを閉める。

ただならないリノの様子に少しびびりながらも何事かを聞く。

「トイレ」

「トイレ?」

「発情すんのは勝手だが自宅内でしろ。誰が見てるか聞いてるかわからねぇだろ」

「え」

ば、ばれてる!

ヒョンジンは恥ずかしさに震えた。

聞かれてた!
どこから?
どんな風に聞こえてた?

「俺がいたからどうにかなったけど、あれ誰かにバレたらアイドル人生終わるからな?」

「う、うん」

大きい体を小さくして萎縮したヒョンジンにそれ以上は言わず車外に出ようとドアに手をかけた。

「ヒョン」

「ん?」

「相手は誰だか知って「チャンビナ」

言い切る前に即答されたヒョンジンは吃驚して見開いた目でリノを見た。

「チャンビナにも注意しとく。お前はお前で注意しろ」

「わかった…」

リノが車から出てきていった後、リノにあの行為がバレている事、なんだったらどこまで知られているのか気になりすぎて心臓がドキドキした。
男女の交際でも色々言われるのに、男同士だとどう思われるのか。
リノはどう思っているのか。
また他の人にも関係がバレているのか。
急に心配になってその場を動けなかった。
リノから言われるまではそこまで心配してなかったけれど実際にバレてしまうと不安しかない。

ヒョンジンは両手の指を絡ませてぎゅっと握る。
緊張のせいか手汗が凄い。
それから何分経ったかわからないけれどチャンビンが外から窓をノックして入ってきた。

「ヒョンジナー、大丈夫か?」

「ヒョン…」

「リノヒョンから叱られたわ。俺が悪かった気をつける」

「ヒョン…」

今にも泣き出しそうに涙をため込んで目が潤んだヒョンジンにチャンビンがぎょっとした。

「キツく言われたんか?」

「ちが…なんでヒョンは平気なん」

首を横に振ったヒョンジンがあっけらかんとしているチャンビンを不思議に思う。
関係がバレている事に不安はないのだろうか。
メンバーみんなも知ってるのだろうか。
事務所は把握しているのだろうか。
社長も知っているのだろうか。
何も気にならないのだろうか。

「平気っていうか…ヒョンジナと付き合ってる事を恥だとは思ってないからさ」

「ヒョンって…あんまり気にしない感じ?」

「今更?まぁいいじゃん、戻って着替えようぜ」

ヒョンジンの手を引いて車を降りる。
そこからは手を離してグループのメンバーとしての距離を保ちながら楽屋に戻る。

『ヒョンジナと付き合ってる事を恥だとは思ってないから』

チャンビンの言葉を何度も頭の中で繰り返して横顔を見る。
おおらかで肝が据わっている所にヒョンジンは自分には無い強さを持っているなと尊敬する。
もしも皆に、韓国中から嫌われたらヒョンと国外逃亡もできそうだな、と少し思った。


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