君が好き
ヒョンジナと付き合ってわかった事がある。
①ツンデレ。
②手順大事。
③嫉妬を多少する。
この3点セットが標準装備。
① 自宅から出れば交際の一切を匂わせない。 SNSにもボロを出さない。
精々ファンサービス程度のもので、メンバーの前でも態度に出さない。
つまり、俺達が恋人らしく出来るのは自宅のみという、なんともアイドルのお手本のような状況だ。
メンバー同士で食事に行きましたーみたいな感じでデートも中々しようとしないから、そこは不満。
でも自宅に帰れば急に甘えてくるギャップはたまらない。
けど出先で何も無いのは寂しいから徐々に手懐けていこうと思う。
② 晴れて付き合う事になった日から、いまだ手つなぎ止まり。
大人なんだしもっと早く進みたい。
恋人つなぎまでは進んだが、チューしようとしたら止められる。
③ 外でいちゃいちゃしないけど、俺の行動はきっちり見ている。
ちょっと他の人とボディタッチが多いと横目でガン見していたり、遠くからこっちを見て寂しそうにしていたり。
…で自宅に帰ってきてから「あの時…」と詰められたりする事も。
現場で言えないぶん、帰ってから文句言ってる。
「まぁ、それはそれでアイドルならではの恋愛だし、手つなぎから進みが遅いのは初恋みたいで新鮮でもあるし、ちょっと面倒臭いところもまぁ、いっか」
「何?」
自宅でダラダラ、ソファーに転がりスマホゲームのヒョンジンとソファーを背にフローリングに座って動画視聴中のチャンビン。
「なんでもない」
「ふーん」
俺の独り言に気のない返事を返す。
「そういや、ヒョン」
「ん?」
「今日楽屋に挨拶に来てた新人いたじゃん」
「あぁ、他社の。それが?」
「『チャンビニオッパー、ファンです!大好きです!』だって」
「あー、そんな事言ってたな」
「良かったね」
「………」
そっとヒョンジナを覗き見ると相変わらずの姿勢でゲーム続行中だった。
勿論、無表情。
「ヒョンジナー」
俺はヒョンジナの手からスマホを取りあげ「ヒョンジナー、大好きです!」
とその新人の真似をしておどけてみせた。
別に怒ってはいないのだろうけど、美形が無表情で冗談だか皮肉だかわからない事を言うとちょっとびびる。
「スマホ返して」
ヒョンジンがケラケラ笑いながらチャンビンからスマホを返して貰おうと体を起こす。
「愛してまーす」
唇をとがらせて愛嬌したチャンビンからおかしそうに笑いながらスマホを取り返す。
ゲームを続行しようとするヒョンジンのスマホを再び取りあげフローリングに滑らせた。
「ヒョーン」
「ゲームばっかりじゃなくて遊ぼー」
「何して遊ぶんや」
ソファーから立ち上がってスマホの回収を試みようとしたヒョンジンを捕まえフローリングに座らせる。
「いちゃいちゃしよ、いちゃいちゃ」
「あっはっ、ひゃー」
ヒョンジンにチャンビンが抱きついて羽交い締めにする。
「ヒョンジナー!」
「あーっ!」
ぎゅーっと抱きしめるとヒョンジナが笑いながら叫ぶ。
勿論、肋骨が折れない程度に力加減はしてる。
いうてヒョンジナも頑丈だから折れる訳がないけど。
「そういやヒョンジナ、あのステージは良くなかった。腰、動かしすぎじゃね。誰を挑発しとるんだ」
「気にしすぎ、いつも通り真面目に真剣に仕事しただけ」
「けしからーん!」
ヒョンジナの体をコチョコチョすると大暴れで逃げ出そうとする。
そんなの俺の上腕二頭筋が許すはずも無い。
「あーっ!あーっ!ギブギブ!」
俺の腕をバンバン叩いて降参を主張している。
あー楽しい!幸せ!
ヒョンジナとこんな事できるなんて俺は前世でどんな徳を積んできたのか。
このままの勢いで…!
ヒョンジナの唇をを奪おうとしたらヒョンジナは秒で自分の唇を手で覆った。
やっぱり今日も駄目かぁ。
いつでもガードがかたいんだよな。
そんな頑なに守らなくても。
それに手つなぎから恋人繋ぎに発展して、交際の順序は守っているはず。
そろそろ…次の段階に行きたい!
ガッカリした俺の腕から抜け出したヒョンジナが俺をチラッと見てスマホを回収しに行った。
今日も失敗か…ぁ またの機会にトライだな!
スマホを回収して小走りにやってきて俺の所にスライディングで戻ってきて、ぶつかった衝撃で俺は「うっ!」となる。
勢いありすぎ!
抗議をしようかと思ったらヒョンジナの唇が俺の唇に重なっていた。
時間にして数秒、体感にして30秒くらい。
衝撃的で息ができなくなった。
俺がようやく意識を取り戻して始めた時にヒョンジナの唇が離れて、ばばばっと素早く立ち上がり自室のドアを開け…
「ヒョン、おやすみ!」
と満面の笑みで言った後、ばたーん!と締めてしまった。
さすがダンスラチャ…
動きが素早いこなし…
じゃなくて!
今ヒョンジナとキスしました!
しかもヒョンジナから!
ぶつかった訳じゃなくて、明らかにキスだった!
えーーーっ! ちょっと待って感動なんだけど!
「もっとしようよおぉぉーー!!」
あらためて正気の状態でもう1回お願いします!
不意打ち過ぎて堪能できてないんだけど!
