隣の伊達さん
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「そういえば、ナマエさんはどうしてここに?」
私がここにいることが気になっていたのだろう。光忠さんがそう聞いてきた。
「ベッドを買いに来たんです。今まで使っていたものは実家に置いてきてしまったので」
「越してきたばかりだから家具を揃えるのも一苦労なんだろうね」
「ええ。実は今日、冷蔵庫も買いに行かないといけなくて……」
「ええっ、それじゃあ、食事は今までいったいどうしていたんだい?」
とても小さい冷蔵庫があることを伝えると、よくそれで一ヶ月も頑張ったね、と言われた。
本当にその通りだと思う。食材を買っても保存しておけないので、一度で使い切るしかない訳だが、それも難しいし、仕事が忙しくそもそも料理なんてする隙が無かったので、ほとんどコンビニやスーパーのお総菜で済ませていた。なんて不健康なんだろう。ここ最近自炊を全くしていない。
「それは……、大変だったね。でもようやく仕事が落ち着いたんだろう? 本当に良かった。そうだ、僕らもこのあと電子レンジを買いに行くんだ。良かったら一緒に行かないかい?」
「私、電気屋さん苦手なので願ったり叶ったりです。ぜひ一緒に行かせてください」
そのためにも、早く私の買い物を済まさなければ。
光忠さんも、もう少し吟味してから買いたい、とのことだったので、一旦別れて寝具売り場へ向かう。
目的の、収納がついているベッドを探していたが、ふと目についたセミダブルのベッドを見て、収納よりも、寝心地や見た目を優先させようか、と心が揺らぐ。
シングルで良いと言ったな。あれは嘘だ。
無事に誘惑に負け、セミダブルのベッドを購入してしまった。睡眠のためなので後悔はしていない。幸いサイズが大きくなったところで、まだ家は物が少なくガラガラだし、住むのは私一人だ。
持って帰るのは無理なので宅配をお願いした。届くのは2日後だそうだ。
買い物が済んだので光忠さんを探す。
光忠さんはすぐに見つかった。どうやらもう買い物は済んでいたようで、照明のコーナーを見ていた。なんかこう……オーラがもう違います。電球の隣にいるだけなのに、映画のワンシーンのようなカッコよさを感じる。どういうことなんだ。
「光忠さん、お待たせしてすみません。無事に購入できました」
光忠さんはこちらを振り返って爽やかな笑みを見せた。
「いや、僕もついさっき終わったところだよ。これでお互いに快適な生活ができるね。それじゃあ、行こうか、と言いたい所なんだけど、実はあの二人がどこかに行ってしまってね。今呼び出したんだ。もう少し待ってくれるかい?」
「はい、もちろんです。……あの、失礼かもしれないんですけど、国永さんはどうやってテーブルの脚をダメにしたのか聞いてもいいですか…?」
ああそれはね、とまたもや遠い目をして話し始めた。
「あの人、いたずらとか、そういうの大好きなんだ。この間、電子レンジで黒い何かを温めていたんだけど、兄さんは取り出したそれを、ダイニングテーブルの近くで冷ましていおいて、もう1つ同じ物を電子レンジで生成していたんだ。でも突然その黒い物体が2つ同時に爆発してね。見事にダイニングテーブルも電子レンジもおじゃん、って訳さ」
「それで電子レンジですか……。何なんですかそのダークマター。光忠さんの方が事情が深刻でした……。お疲れ様です」
ふふふ、と疲れた目をして二人で笑っていると、光忠さんが「ああほら、元凶のご到着だ」と見た先に、国永さんと広光くんがいた。心なしか広光くんの顔が疲れている気がする。
「おっ、終わったのかい。それじゃあ次は、カワダに行こう。俺の新しい相棒を早く見つけないとな」
カワダとは、ここから一番近い、大手の家電用品店だ。
「あんたの相棒じゃない。……とっとと行くぞ。疲れてきた」
行くぞ、と言われているのに、何かを見つけたらしく出口とは違う方向に行ってしまう国永さん。追いかける広光さん。これでは何方が年上か分からない。
光忠さんがこそっと話しかけてきた。
「ナマエさん、ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
どうしたんですか、と聞くと
「うん、ちょっと話したいことがあってね。それで、もし大丈夫だったら、ナマエさんの車に乗せてくれないかな。カワダまででいいんだ」
といわれた。正直私の車、光忠さんから見たら走る犬小屋なんじゃないかと思うほど彼の車と違うんだけど、大丈夫だろうか。それを正直に伝えた。
「あははっ、なんだいそれ。そんなことないよ。大丈夫大丈夫。あっ、もしかして男が乗るのはイヤだったかい?」
爽やかスマイルと困り顔のコンボを決めながらそんなことを言われては、わたし程度のスペックではノーと言えなかった。……車の中に変な物置いてなかったよね? 大丈夫だよね?
光忠さんは私の車に載る旨を国永さんと広光さんに伝えに行った。
運転を任されたらしい国永さんは張り切っていたが、広光さんは顔が死んでいた。
光忠さんはその長身を折り畳むようにして助手席に座った。狭くてごめんない、という気持が大繁殖している。ごめんなさい。
「それじゃあ、お邪魔するね。よろしくお願いします」
「はい」
「いやあ、女性に運転してもらうなんて、何年ぶりだろう。ふふ、格好つかないなあ」
格好つかない、なんて言ってはいるが、光忠さんは普通に楽しそうだった。
車が走り始めて、しばらく他愛のない話が続いた。現実主義者だと思っていた光忠さんが「前世って信じるかい? 実はね、僕は信じてるんだ。夢があっていいよね」と言って来たときは、意外と夢とかロマンとか語る人なのか、と驚いた。
ちなみに私は前世や来世はそこまで信じていない。あったら面白いな、くらいの考えだ。
「あの、光忠さん。先程おっしゃっていた話とは何でしょう」
「ああ、それなんだけど、実はもう自分の中で解決しちゃったんだ。ごめんね。でも君とお喋りするの楽しいし、兄さんから逃げたかった、っていうのもあったかな」
国永さんを任された広光さんが不憫でならない。まあ、話が無いにせよ、光忠さんは話上手だし、私も彼とのお喋りは嫌いではない。果たして私の話が面白いかどうかはさておき、コミュ力がカンスト気味な彼の話しはとても面白い。見習いたいものである。
「そうですか?楽しいなら何よりなんですけど……。ふふ、この話広光さんが聞いたら怒りませんか?」
「うん、絶対怒られるね。ああ、そうだ。今日のお礼に、何かさせてよ。そうだなあ、今度家においで。一緒に夕飯でも食べよう。もちろん僕が作るよ」
「ええっ、それは、その、光忠さんのお料理は美味しんでしょうけど、良いんですか?私なんかがお邪魔して」
「うん、君がいいんだ。それに、兄さんも一度君とちゃんと話してみたい、っていってたからね。丁度いいんじゃないかな。お隣さんだし、これをきっかけにもっと仲良くなれればな、って思うんだ」
「……もしかして、そっちが本音ですか」
そう聞くと光忠さんはふふふ、と笑って誤魔化した。絶対国永さんの話し相手を増やすための作戦だ! ああ、でも光忠さんの料理は食べたい。アップルパイは最高だった。飲食店で働いているからといって、あそこまで美味しいものはそうそう作れない。国永さんだって、光忠さんの話ではとんでもない人だったが、もしかしたらそうでもないかもしれない。そうだ、前向きに行こう。
「でも、光忠さんのお料理は食べたいので、お邪魔させてもらってもいいですか? アップルパイ最高でしたし、期待できますね」
「そうかい? そう言ってもらえると料理人冥利に尽きるね。腕がなるよ。予定は後でLIMEするね。できれば今週中に、都合のいい日を教えてくれると助かるな」
分かりました、と応えたところでカワダの駐車場へ入った。光忠さんが少し残念そうにしているが、おそらく国永さんのことを考えているのだろう。まだ国永さんのことは良く知らないが、光忠さんから聞いた話ではかなり自由な人らしかったし。まったく個性の強過ぎるお隣さんである。
「ナマエさん、ありがとう。それじゃあ行こうか」
そう言う光忠さんに続き車を降りて、店内へ向かう。国永さんたちはもう到着していて、先に店に入っている、とのことだった。
無事に冷蔵庫の購入が終わったが、私はこのあと国永さんにお金を渡さなくてはいけなくなった。カツアゲとかそういったものでは断じてない。そこは安心してほしい。
私がここにいることが気になっていたのだろう。光忠さんがそう聞いてきた。
「ベッドを買いに来たんです。今まで使っていたものは実家に置いてきてしまったので」
「越してきたばかりだから家具を揃えるのも一苦労なんだろうね」
「ええ。実は今日、冷蔵庫も買いに行かないといけなくて……」
「ええっ、それじゃあ、食事は今までいったいどうしていたんだい?」
とても小さい冷蔵庫があることを伝えると、よくそれで一ヶ月も頑張ったね、と言われた。
本当にその通りだと思う。食材を買っても保存しておけないので、一度で使い切るしかない訳だが、それも難しいし、仕事が忙しくそもそも料理なんてする隙が無かったので、ほとんどコンビニやスーパーのお総菜で済ませていた。なんて不健康なんだろう。ここ最近自炊を全くしていない。
「それは……、大変だったね。でもようやく仕事が落ち着いたんだろう? 本当に良かった。そうだ、僕らもこのあと電子レンジを買いに行くんだ。良かったら一緒に行かないかい?」
「私、電気屋さん苦手なので願ったり叶ったりです。ぜひ一緒に行かせてください」
そのためにも、早く私の買い物を済まさなければ。
光忠さんも、もう少し吟味してから買いたい、とのことだったので、一旦別れて寝具売り場へ向かう。
目的の、収納がついているベッドを探していたが、ふと目についたセミダブルのベッドを見て、収納よりも、寝心地や見た目を優先させようか、と心が揺らぐ。
シングルで良いと言ったな。あれは嘘だ。
無事に誘惑に負け、セミダブルのベッドを購入してしまった。睡眠のためなので後悔はしていない。幸いサイズが大きくなったところで、まだ家は物が少なくガラガラだし、住むのは私一人だ。
持って帰るのは無理なので宅配をお願いした。届くのは2日後だそうだ。
買い物が済んだので光忠さんを探す。
光忠さんはすぐに見つかった。どうやらもう買い物は済んでいたようで、照明のコーナーを見ていた。なんかこう……オーラがもう違います。電球の隣にいるだけなのに、映画のワンシーンのようなカッコよさを感じる。どういうことなんだ。
「光忠さん、お待たせしてすみません。無事に購入できました」
光忠さんはこちらを振り返って爽やかな笑みを見せた。
「いや、僕もついさっき終わったところだよ。これでお互いに快適な生活ができるね。それじゃあ、行こうか、と言いたい所なんだけど、実はあの二人がどこかに行ってしまってね。今呼び出したんだ。もう少し待ってくれるかい?」
「はい、もちろんです。……あの、失礼かもしれないんですけど、国永さんはどうやってテーブルの脚をダメにしたのか聞いてもいいですか…?」
ああそれはね、とまたもや遠い目をして話し始めた。
「あの人、いたずらとか、そういうの大好きなんだ。この間、電子レンジで黒い何かを温めていたんだけど、兄さんは取り出したそれを、ダイニングテーブルの近くで冷ましていおいて、もう1つ同じ物を電子レンジで生成していたんだ。でも突然その黒い物体が2つ同時に爆発してね。見事にダイニングテーブルも電子レンジもおじゃん、って訳さ」
「それで電子レンジですか……。何なんですかそのダークマター。光忠さんの方が事情が深刻でした……。お疲れ様です」
ふふふ、と疲れた目をして二人で笑っていると、光忠さんが「ああほら、元凶のご到着だ」と見た先に、国永さんと広光くんがいた。心なしか広光くんの顔が疲れている気がする。
「おっ、終わったのかい。それじゃあ次は、カワダに行こう。俺の新しい相棒を早く見つけないとな」
カワダとは、ここから一番近い、大手の家電用品店だ。
「あんたの相棒じゃない。……とっとと行くぞ。疲れてきた」
行くぞ、と言われているのに、何かを見つけたらしく出口とは違う方向に行ってしまう国永さん。追いかける広光さん。これでは何方が年上か分からない。
光忠さんがこそっと話しかけてきた。
「ナマエさん、ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
どうしたんですか、と聞くと
「うん、ちょっと話したいことがあってね。それで、もし大丈夫だったら、ナマエさんの車に乗せてくれないかな。カワダまででいいんだ」
といわれた。正直私の車、光忠さんから見たら走る犬小屋なんじゃないかと思うほど彼の車と違うんだけど、大丈夫だろうか。それを正直に伝えた。
「あははっ、なんだいそれ。そんなことないよ。大丈夫大丈夫。あっ、もしかして男が乗るのはイヤだったかい?」
爽やかスマイルと困り顔のコンボを決めながらそんなことを言われては、わたし程度のスペックではノーと言えなかった。……車の中に変な物置いてなかったよね? 大丈夫だよね?
光忠さんは私の車に載る旨を国永さんと広光さんに伝えに行った。
運転を任されたらしい国永さんは張り切っていたが、広光さんは顔が死んでいた。
光忠さんはその長身を折り畳むようにして助手席に座った。狭くてごめんない、という気持が大繁殖している。ごめんなさい。
「それじゃあ、お邪魔するね。よろしくお願いします」
「はい」
「いやあ、女性に運転してもらうなんて、何年ぶりだろう。ふふ、格好つかないなあ」
格好つかない、なんて言ってはいるが、光忠さんは普通に楽しそうだった。
車が走り始めて、しばらく他愛のない話が続いた。現実主義者だと思っていた光忠さんが「前世って信じるかい? 実はね、僕は信じてるんだ。夢があっていいよね」と言って来たときは、意外と夢とかロマンとか語る人なのか、と驚いた。
ちなみに私は前世や来世はそこまで信じていない。あったら面白いな、くらいの考えだ。
「あの、光忠さん。先程おっしゃっていた話とは何でしょう」
「ああ、それなんだけど、実はもう自分の中で解決しちゃったんだ。ごめんね。でも君とお喋りするの楽しいし、兄さんから逃げたかった、っていうのもあったかな」
国永さんを任された広光さんが不憫でならない。まあ、話が無いにせよ、光忠さんは話上手だし、私も彼とのお喋りは嫌いではない。果たして私の話が面白いかどうかはさておき、コミュ力がカンスト気味な彼の話しはとても面白い。見習いたいものである。
「そうですか?楽しいなら何よりなんですけど……。ふふ、この話広光さんが聞いたら怒りませんか?」
「うん、絶対怒られるね。ああ、そうだ。今日のお礼に、何かさせてよ。そうだなあ、今度家においで。一緒に夕飯でも食べよう。もちろん僕が作るよ」
「ええっ、それは、その、光忠さんのお料理は美味しんでしょうけど、良いんですか?私なんかがお邪魔して」
「うん、君がいいんだ。それに、兄さんも一度君とちゃんと話してみたい、っていってたからね。丁度いいんじゃないかな。お隣さんだし、これをきっかけにもっと仲良くなれればな、って思うんだ」
「……もしかして、そっちが本音ですか」
そう聞くと光忠さんはふふふ、と笑って誤魔化した。絶対国永さんの話し相手を増やすための作戦だ! ああ、でも光忠さんの料理は食べたい。アップルパイは最高だった。飲食店で働いているからといって、あそこまで美味しいものはそうそう作れない。国永さんだって、光忠さんの話ではとんでもない人だったが、もしかしたらそうでもないかもしれない。そうだ、前向きに行こう。
「でも、光忠さんのお料理は食べたいので、お邪魔させてもらってもいいですか? アップルパイ最高でしたし、期待できますね」
「そうかい? そう言ってもらえると料理人冥利に尽きるね。腕がなるよ。予定は後でLIMEするね。できれば今週中に、都合のいい日を教えてくれると助かるな」
分かりました、と応えたところでカワダの駐車場へ入った。光忠さんが少し残念そうにしているが、おそらく国永さんのことを考えているのだろう。まだ国永さんのことは良く知らないが、光忠さんから聞いた話ではかなり自由な人らしかったし。まったく個性の強過ぎるお隣さんである。
「ナマエさん、ありがとう。それじゃあ行こうか」
そう言う光忠さんに続き車を降りて、店内へ向かう。国永さんたちはもう到着していて、先に店に入っている、とのことだった。
無事に冷蔵庫の購入が終わったが、私はこのあと国永さんにお金を渡さなくてはいけなくなった。カツアゲとかそういったものでは断じてない。そこは安心してほしい。